特集 2023年9月18日

天使が吹いてる長いラッパを吹きたい。できないから代わりにシャボン玉を吹く

楽器といえば河原

京都市民なので楽器の練習といえばまずは河原でやるものというイメージが焼きついている。

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ラッパには赤い負い紐をつけた。
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家にあった鍋にシャボン液を注ぐ。いっきに生活感が出る。
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シャボシャボと液に浸して、
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いざ!

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あれ、出ないよ?

おかしい。ラッパの口と同じ大きさのシャボン玉がプククッと出てくるはずなのに。何度繰り返してもシャボン液がぼたぼたと惨めに滴り落ちるだけなのだ。

埒が開かないので液に浸した直後のラッパの口を見てみたところ、そもそも膜が張ってすらいないことが判明した。

どうやら輪っかとシャボン液さえ用意すれば簡単にシャボン玉ができるという目論見は安直すぎたようだった。何度やっても、一瞬たりとも膜ができないのだからお手上げである。

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膜が張ってすらいない。

シャボン液で手をベトベトにしながら、私は大昔に読んだ子供向け科学雑誌のことを思い出していた。その雑誌には愉快な科学おじさん的な人物(西洋人だったと思う。仮に名前をピエールとしよう)の受け持つコーナーがあり、ある号ではピエールは大きなシャボン玉の作り方を紹介していた。

彼は大量のシャボン液を入れたビニールプールとフラフープを使って自分の身長より大きなシャボン玉を作り、その秘技の仕組みを惜しげもなく読者に解説していたと記憶している。なのに、当時の私はシャボン玉にもピエールにも興味がなかったため、ろくに読まずにとばしてしまったのだ。

ろくに読みもしなかった雑誌の内容を覚えている子供の記憶力はすごいが、どうせすごいのなら肝心の作り方をきちんと読んで覚えておいてもらいたいものだ。

もし今ここにピエールが通りかかるような奇跡が起きたら、私は昔の無礼を謝って教えを乞うにちがいない。ああ、ピエール!

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一通り現実逃避してから振り向くと、もちろんピエールはおらず、代わりにまこっちゃんが日傘をさして取り残されたように立っていた。表情から焦れ始めているのがわかった。

彼にしてみれば日曜日に炎天下の河川敷にわざわざ呼び出された上、ハリボテのラッパにシャボン液をつけようとする様子を延々見せられているわけである。

まずい。さっさとなんとかしなければ。

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改造することに

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最寄りの百均へ。

大きなシャボン玉を作ることは諦めることに。

この場でラッパを改造するための材料を調達しに行く。

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夏なのでシャボン玉コーナーも充実していた。
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これでなんとかする。
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無理やりねじ込んで隙間をティッシュで塞ぎ、テープで固定した。
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試しに一吹き。出た!小さいけど。

 

組み立てて試す。

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出た!
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出ましたよ!
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背景が濃い色だとわかりやすい。細かいのがたくさん出る、これはこれでいいかもしれない。
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両手で持って吹いたり
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慣れてきたら片手で上を向けて吹いてみたり。

堂々と立って斜め上空に向けて吹くもの、というファンファーレラッパのイメージを真似して吹いてみたところ、シャボン液が口もとに逆流してきてえずいてしまった。

ともあれ、ラッパからシャボン玉がぱらぱらと出ている様子はなかなかに愉快ではないか。吹いている本人からはよく見えないのが玉に瑕だが。

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疲れた。肺活量が低い。

ところでこのシャボン玉ラッパ、吹き込む力が弱いときちんとシャボン玉にならず、ボトル洗剤の断末魔みたいな泡が出口からブクブクと垂れてくることが判明した。

綺麗に吹くには肺活量が必要なのだ。そして、普段吹くという動作をすることが少ないためあっという間に肺が悲鳴をあげ始めた。

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試しにまこっちゃんにも吹いてみてもらったところ、「けっこう難しいですね」と言って苦しんでいた。

ラッパの演奏はとても重労働で、奏者は腹筋などの筋トレを欠かさないと聞く。つまり吹くのが大変なところまでコピーしてしまったようだ。

「愉快」を生み出すには筋力が必要なのだと実感したのだった。

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ロートとしても使えるラッパ。本物のラッパでやると怒られそうだがシャボン玉ラッパはこんなこともできちゃうのだ。

大きいシャボン玉を作るには工夫が必要

思っていた形から軌道修正したが、目的は達成された。そして、ラッパやシャボン玉と同じくらい、ピエールのことがなかなか頭から離れなかった。

彼はなんとアドバイスしていたのか。そもそもあやふやな記憶の中にだけいる彼が本当に実在したのかすら確証がない。

しかし彼の存否と関係なく読者には覚えておいてもらいたいのだ。でかい輪っかと普通のシャボン液だけではでかいシャボン玉はできないということを。

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子供連れが話しかけてきたので顛末を話して聞かせた。わたしが第2のピエールだ。
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