特集 2021年10月18日

テントを建てても打ち立てよう定礎ペグ

建物を建てた喜びに大きいも小さいもない。何を建てる時にだって定礎を設置してもいいのだ。テントだって建造物。そんなわけでテントを固定するための道具であるペグを定礎仕様にした。

父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。(動画インタビュー)

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街中のビルで見かけるあの定礎。ご存知の方も多いだろうが、あの定礎、工事の開始を記念して行われる「定礎式」で設置されるものである。

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おなじみ定礎

現在では石碑的な立体物ではなく、石板が埋め込まれることが多い。石板の奥には「定礎箱」なるものが埋め込まれており、なかには建物の図面や当時の新聞やお金、そして関係者の名簿などが収められている。

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定礎箱を開ける時に立ち会ってみたい

通常は立派なビルなどに設置されるものだが、もっと手軽に設置してもいいのではないだろうか。手軽に設置できる家といえばテント。テントには風にとばされないように地面に固定する「ペグ」という道具がある。そんなわけで……

 

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こちらの小さな定礎に……

 

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ペグをドッキング

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定礎ペグ


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いつ建ててもいい年月日

めちゃくちゃいいものができてしまった。この記事で伝えたいことは以上なのだが、ここで筆を置くものは石打ちの刑に処せられるそうなので作り方を紹介させていただきたい。

 

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定礎をペグにしよう

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定礎は3Dプリンターで作る

使うのは2万円くらいの光造形式3Dプリンター。紫外線で固まるレジン液を使うのだが、そのままだと強度に不安が残るので、ちょっとお高い「ABS-Like高速硬化高強度3Dプリントレジン」なるものを買った

 

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1kgで5000円くらい


定礎くらいのシンプルな形状であれば、Blenderという無料ソフトで一瞬で3Dデータができる!と思っていたのだが、イラストレーターのデータを取り込んだりなんだりする際にめちゃくちゃにつまづいた。結局同僚の茗荷くんに泣きついて何とかしてもらった。

 

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モデリングされた定礎

続いて定礎にドッキングするペグの直径をノギスで測る。定礎に8.17mmの穴をあければ、用意したペグがうまく刺さるはずだ。穴あけ加工はTINKERCADというこちらも無料アプリで行う。

 

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こちらは小学生の教材にもなっているらしく、とても使いやすい

 

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出力開始

せっかくなのでこの3Dプリンタで出力できる限界サイズにした。光造形式3Dプリンターは出力している最中に造形物が剥がれ落ち、レジン液が貯められたタンクの底にべちゃっとへばりつく……みたいなことがわりと起こる。果たしてうまくいくだろうか。

 

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こちらがレジンタンク

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恐る恐るスタートボタンを押す

 

今回の出力物は、中身がみっちみちに詰まっており体積もえげつない。みるみる減っていくお高いレジン。1kgで5000円のレジンを、今回300グラム以上使う。たった一度の印刷ミスで1500円が露と消える。絶対に失敗したくない。

 

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一時停止して出力物をチェック

めちゃくちゃレジンが減っていく。このまま放置するとレジンが足らなくなって印刷が失敗しそうな気配がすごい。出力をずっと見守ってレジンが減ってきたら追加するのが一番安全だろう。しかし、今の時刻は23時。印刷には6時半かかる。私はもう眠い。足らなくなるよりはマシかと規定以上にレジンをドボドボ追加。結果、レジンタンクの水面がみちみちに。容器からこぼれそうになるも、あと数ミリというところで難を逃れた。レジンが部屋に飛び散るのだけは避けたい。運が良かっただけだが本当によかった……!後は落下しないことを祈って寝る!おやすみなさい!

 

 

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印刷の結果は……?

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翌朝。うっすらと見えるあの黒い影は……!

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印刷できている……!?

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このクソデカ造形物が気合いでひっついているの凄くないですか

ぬらぬらと黒光する立体に「うわ〜まじか〜やった〜」と声を出して喜んでしまった。レジンの沼から精巧な立体物が出てくるさまは毎回本当に興奮する。特に今回は無茶な設定が一発で決まったので脳内で何かしらの物質がドバドバでた。

 

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洗浄液でよく洗い、日光に当てて完全硬化させる

 

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積層回数1000回越え

 

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指紋と並べると精度がよくわかる


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せっかくなので塗装しよう

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下地材を塗る

下地材で食いつきをよくした上にスプレーで黒を塗る。ここからちょっとひと工夫。ウェットティッシュをほぐしてスプレーの先にかざして塗装すると、ティッシュの繊維の形に自然とマスキングされ、大理石調の塗装ができるらしいのだ!

 

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ウェットティッシュをほぐして

 

 

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巻きつけて塗装!

 

鼻息荒く挑戦したが結果は失敗。ウェットティッシュと定礎の距離が近すぎたからだろうか。ウェットティッシュの繊維がへばりついて定礎に毛が生えてしまった。もっとスプレー缶との距離が必要だ。段ボールに穴を開けて先ほどのウェットティッシュを貼る。

 

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これで石彫に……

 

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あんまりなりませんでした


あと、上の写真だとわかりにくいのだが、塗っている最中に強風が吹き荒れ、定礎が数メートル吹っ飛び、コンクリート製の床に直撃して端っこが欠けた。

 

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「定礎―っ!」と叫んだ

 

自分の人生の中で定礎と叫ぶ日があるなんて思わなかった。人生何が起こるかわからないものである。気を取りなおして定礎の文字に白色を塗り込む。

 

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絵の具の下地材(ジェッソ)を塗った。完成したのがこちらになります

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定礎ペグです

 

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実際に使ってみよう

 

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まずはテントを立てる

 

テントは妻が抽選で当てていただいたものであり、我が家にキャンプの習慣はない。まともに外でテントを立てるのは初である。Youtubeで組み立て方を見ながらえっちらおっちら組み立てる。私も息子も人生初キャンプ。

 

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はしゃぐ子ら

子供のテンションも爆上がりで大変なことになっている。ぜひ記念に定礎を打ち立てたい。

 

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ペグを準備

 

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まずは普通のペグを打ち込む

 

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軽く定礎を突き刺してみる

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いい……!


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強度的にはどうか

 

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ガンガン叩いてみる


突き出たペグの金属部分を叩いているぶんにはまったく支障なく使える。さすが強度的にもお値段的のもお高いレジン。テントを建てただけなのだが、プロジェクトX的な巨大建造物を建てたような達成感があった。

 


定礎をペグで作って

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装飾系ペグの可能性

 

ペグを装飾するのは楽しい。ペグに皿を固定して盛り塩できるようにすれば魔除けになるだろうし、狛犬を2匹ならべてもかわいいだろう。青龍朱雀玄武白虎の四神を並べたら並のお化けなら退散するに違いない。

今回は手軽に定礎を設置できるペグを作ったわけだが、思っていた以上の達成感が出ることがわかった。あるゲームの開発者の方が「ゲームとは褒める機械である」と言っていたが、達成度のハードルを限界まで下げて、派手に褒め称えて楽しく生きていきたいものである。

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定礎を立てたあとのビールの旨さよ

 

 

 

 

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