特集 2019年8月16日

沖縄ではタピオカを天ぷらにしていた

たぶんインスタ映えはしない。ものすごい茶色だし。

今、巷でタピオカが空前のブームだ。タピオカドリンクを飲むために長蛇の列ができ、街にはタピオカ専門店があふれかえっている。ところでそんなタピオカ、沖縄では戦前から畑で育てられて食されていたのをご存じだろうか。とういわけで昔のレシピを元に沖縄のタピオカ料理を作りたい。

新潟出身。沖縄に来てそろそろ15年くらい経つのに泳げないため全然沖縄を満喫できていない気がする。最近の悩みは高血圧。

前の記事:沖縄の卒業式には独自の文化が息づいている


タピオカ第3次ブーム到来

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今タピオカがアツい…そんな風に書くとすでに恥ずかしいくらいのタピオカ旋風が日本に吹いている。タピオカブームの波は東京だけでなく、沖縄でもヒシヒシと感じることができる。普段行列をあまり作らない県民がタピオカドリンクのお店に長蛇の列を作ったり、コンビニでも割とよくタピオカドリンクを見かける。

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沖縄ファミリーマートではカフェラテなどに追いタピオカもできる

そんなタピオ化がとまらない日本だが、今回のブームは「第3次タピオカブーム」だそうで、最初は1992年頃のココナッツミルクに入った白いタピオカがブームに。そして第2次は2008年頃に黒いタピオカが入ったミルクティーが流行。そして今回の第3次タピオカブームに至るのだそうだ(沖縄では2000年くらいにすでにタピオカミルクティーのブームが起きており、専門店ができていた。)。

ではタピオカは何なのかといえばキャッサバという芋のデンプンを加工したもの。

そして実は沖縄ではキャッサバは「キーウム」と呼ばれ、明治期くらいから育てられていたらしい。戦時中も畑の隅っこにはだいたいキーウムが育てられていたそうで、そのデンプン(タピオカ)は貴重な食糧源として重宝されていたのだそうだ。そう。沖縄では第1次タピオカブームの前に第0次タピオカブームがあったのだ(たぶん)。

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今は作物としてキャッサバを作る人はあまりいないようだが、沖縄でタピオカが利用されてきた名残はスーパーなどで今も普通にタピオカ粉が販売されているところからも見る事ができる。

では、そんなタピオカを沖縄県民はどのように利用してきたのだろうか。

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用意したのは沖縄タイムス社が1979年に発行した『おばあさんが伝える味』という本。この本は多くのおばあさんから昔ながらのレシピを聞き取りまとめた本で、今もなお食べられている郷土料理から、蛸を藁でひたすら揉み込むだけの料理「ウンナダコ」や豆腐を4、5日陰干しして発酵したものを焼くという「ルクジュー」など今ではほぼ廃れてしまった料理まで幅広いラインナップが揃っている。

この本でタピオカ料理を探してみると以下の料理が見つかった。

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タピオカの天ぷら、カステラ、フチャギ(主に十五夜に食べられる餅に小豆をまぶしたもの)、ようかんである。どれも興味深いのだが、とりあえず実現可能そうなタピオカ天ぷらを作ってみることにした。

 

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タピオカの天ぷらをつくる

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「タピオカの天ぷら」と字面だけ見ると冗談みたいな料理だが、材料は上のとおり。タピオカ粉、芋、砂糖のみ。書籍のレシピではタピオカ750グラム、芋1500グラム、砂糖500グラムと書かれていたのだが、どう考えてもものすごい量ができそうなので、4分の1くらいの量を計算して材料を用意した。

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とりあえずざっくりと分量を計測。タピオカ粉は片栗粉と見分けがつかない。沖縄では同じように芋から取ったデンプン「ウムクジ」が同じように料理として使われているのだが、タピオカ粉はウムクジよりも粘り気が強く、白い良質のデンプンが取れたのでちょっと質が上のデンプンとして扱われていたらしい。

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レシピでは蒸かした芋を使っているのだが、面倒臭いので焼き芋で代用。沖縄は芋を常食としてきた名残で、通年焼き芋が購入できる(夏に石焼き芋の車が走っているのは違和感しかないのだが)。皮をとってほぐした焼き芋と砂糖をタピオカ粉に混ぜ合わせる。

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レシピでは「水をいれて耳たぶくらいの固さにまとめるように」と書かれていたのだが、焼き芋が水っぽかったのか水を特にいれずとも耳たぶくらいにまとまった。

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これを適当な大きさにまとめる。

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あとは熱した油でまとめたものを揚げれば「タピオカの天ぷら」の完成である。いかがだろうか。多分タピオカドリンクのタピオカよりもはるかに簡単にできる気がする。

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さて、できあがった「タピオカの天ぷら」。タピオカドリンクと比べてインスタ映えする要素は全くないが、素朴なおやつ感はすごい。

 

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タピオカを天ぷらにするとうまいのか

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タピオカの天ぷらはどんな味なのか。さっそく食べてみたい所なのだが、ひとつだけ引っかかる点があった。沖縄には「ウムクジ天ぷら」という料理がある。これはウムクジ=さつま芋のデンプンをまとめて油で揚げた料理で、今も県内スーパーなどで販売されている。そう。実はタピオカ天ぷらはデンプンの種類は違えどもほぼウムクジ天ぷらと同じレシピなのだ。

というわけで、比較のために近くのスーパーでウムクジ天ぷらも買ってきた。写真右の紫色のやつである。

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まずはウムクジ天ぷらから。ウムクジ天ぷらを食べたことが無い人に味を伝えるのが割と難しいのだが、中華料理屋で出てくるあんこの入った胡麻団子を想像してほしい。あれにすごく近い味だと思う。スーパーで購入したものには中に餅っぽいものが入っていてかなり弾力がある。そして甘い。

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ウムクジ天ぷらの味を頭の隅に残しつつ、いよいよタピオカの天ぷらを食べてみる。

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まず出てきた感想は「甘い」だった。脳天がとろけそうなくらい甘い。レシピの分量からそんなに逸脱はしていないと思うので、こんなものなのかもしれないがレシピを間違ったのではないかと一瞬思った。用意した焼き芋がかなり甘いものだったのでそのあたりが影響しているのかもしれない。食感は外がカリカリ、中は驚くほどもっちりとしていた。ちょっとクセになるもっちり感で、第4次タピオカブームが来るならば流行るのはタピオカ天ぷらなんじゃないのか、と思わせる味だった。

今ではタピオカ粉を使った料理は沖縄でもあまりお目にかかることがない。しかしタピオカブームの今こそタピオカ料理はもっと沖縄で作られてもいいんじゃないだろうか。


他のレシピも気になる

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冷えたら結構カチカチになった。熱いうちがやっぱりうまい

というわけで、沖縄に作られていたタピオカ料理を本を元に再現してみた。他にあった「キーウム羊かん」あたりも「子供たちのために小豆の代わりに干しぶどうを入れている」と書かれていたり、かなりぶっとんだ内容だったので折を見てチャレンジしてみたい。そしてタピオカ疲れでタピオカドリンクに飽きた皆さんはぜひタピオカ天ぷらに挑戦してみて頂きたい。さつま芋のデンプンを使ったウムクジ天ぷらは県内で割と手に入るので沖縄にいらした際はウムクジ天ぷらもぜひ。

 

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