鑓水(やりみず)へ

優先分譲地協力公園を過ぎると、この橋の向こうが鑓水(やりみず)という次の住区になっている。

多摩ニュータウン名物、橋から見る景色の左右で住区が違うやつである。

ここまでの行程はこう。赤い丸が現在地で、鑓水との境にやってきた。
鑓水は多摩ニュータウンのなかでもっとも西に位置する住区であり、その景色は2000年以降に作られたものである。
「2000年ころには、URは住宅を自分で作るのは終わりになりました。そこで土地だけ造成して道路をつくって、民間に土地を卸して売るという時代になっていきました」
つまり建物については不動産会社が作って売るということである。

たしかに、こんなふうな戸建て住宅が並ぶ景色が広がっている。これが鑓水の景色ということか。

このあたりの開発は小田急不動産などが多く手掛けているそうだ。
「URは2000年以降も賃貸はしていますが、住宅建設については役目を終えました。URは集合住宅をいかに建てるかを民間に示し、その後の需要は民間によって満たすことができるようになったためです」
作られなかったバス停

この神小沢西歩道橋からはおもしろい景色を見ることができる。

それがこれだ。車道が広がっていて、バス停のための場所(バスベイ)になっているように見えるが、実際にはバス停はない。
「バスベイは作られたものの、とくにバス路線は設定されなかったというものです」
つまり、バス停がないだけでなく、そもそもこの道をバスが走っていないのである。なんでそんな悲しいことが起きるのか。
振り返った反対側にもバスベイはあるが、当然バス停はない
「後から作るのは手間だから、先にバス停になりそうな部分はバスベイを設けておく、ということで作られたけど結局こなかったということですね」
このあたりは神奈中バスか京王バスの範囲になるが、どちらも儲けにならないと判断したのだろう。
鑓水公園
悲しいバスベイの先には、素敵な公園があるのだ。

鑓水公園という。この奥に見える坂道を登って振り返ると、こんな景色になっている。

すごい。
これは多摩ニュータウンじゃない。多摩だ。

展望台からの景色はこんな感じ。まったく展望できないが、山林だった当時の多摩ニュータウンの姿が見える。
南大沢を含むこのあたりの開発については、多摩ニュータウン前期の開発の反省を生かして「多摩ニュータウン西部地区開発大綱」という方針が作られた。そこには、
・自然の地形をできるだけ生かし、緑の多い快適な住環境を整備する
・公園、緑地を住区面積の30%以上確保する。このうち50%は自然のまま保存する
というようなことが書かれているのだ。グッジョブである。坂道を登るは大変だったが、その景色には本当に感動した。
都営鑓水第2団地
鑓水は民間の建売が多いという話だったが、都営の団地はある。しかもおしゃれなデザインのやつだ。
都営鑓水第2団地
「1990年代半ばに建てられた、バブルは過ぎているんだけど建築のデザインにはこだわるという意匠が残っている都営団地になります」

たしかにかっこいい。

参加者の方によると、この号棟を表す数字の部分が三角に組んである部分が都営団地の特徴なのだそうだ。
ふたたび南大沢へ戻ってくる

奥にある橋をくぐると、再び南大沢の住区である。現在地を確認しておこう。

現在は赤い丸のところ。再び南大沢に戻ってきた。

南大沢に入ったところに、うずまき公園という特徴的な公園がある。うずまきの中心はこんなふう。

おそらく夏場はこどもたちが水遊びできるようになっているのだろう。つまり児童のための公園である。
そして面白いのは、この近くに「児童公園」というバス停があるのである。

多摩ニュータウンでは「児童公園」「近隣公園」など、種類ごとにどんな公園をどれくらい整備するかが計画されている。
「うずまき公園の名前は決まっていないが、児童公園が作られることは決まっている段階でバス停が作られた、という順番になるということです」と山口さん。
ふたたびベルコリーヌへ

その先に見えているのは、冒頭に見たベルコリーヌ南大沢である。マスターアーキテクト方式によって、さっきとは調和が取れつつもすこし違うデザインになっている。
そしてこの景観がほぼこのままスタジオジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」の終盤で登場する。このアニメはまさに多摩ニュータウンが舞台となっていて、住む場所を追われた狸たちが主役の話だ。
「開発された多摩ニュータウンの景色として出てくるのがベルコリーヌ南大沢です。映画が公開されたのが1994年、ベルコリーヌが1990年前後なので、象徴として描かれた場所になります」

狸やイタチではなく人が住んでいるベルコリーヌ南大沢。
諏訪とは毛色の違う近隣センター
この景色の向かいにあるのが、諏訪でも見た近隣センターだ。住区のなかにあって買い物などができる商店街。

近隣センターはここを登った上にある。

登ったところには、しみじみした郵便局や床屋などももちろんあるのだが、この近隣センターの特徴はスーパーマーケットだ。

三徳のような少し高級なスーパーと、

オーケーストアのようなリーズナブルなスーパーが向かい合っている。そして、車で来ることが前提の近隣センターになっていて、駐車場が完備されているのだ。
駐車場もばっちり
住区という枠組みのなかで、近隣センターというものも継承されて南大沢でも続いている。
「初期の諏訪永山の近隣センターは、歩車分離によって歩いていくものになっていました。ここではむしろ歩車共存がうたわれた時代ですので、車でもアクセスできる大型店舗をメインで入れていくようになりました。それが生活の変化とともに設計の変化として現れています。」
前回の記事で訪れた諏訪の近隣センターが1970年ごろ、そしてこの南大沢が1990年ごろ。20年たてば当然設計も変わるということだ。
「もちろん商店はあります。花屋とかラーメン屋とか。でもメインはスーパーだということです」
そして駅前へ
ベルコリーヌを抜けてひたすら歩く。歩行者専用道がずっと続いているので、南大沢では一度も車道にでなかった。

そして再び駅前に戻ってきた。

イトーヨーカドーだ! かつてそごうと忠実屋がつぶれたところ。いまは街もこんなに立派になった。イトーヨーカドーも当面大丈夫そうだ。
南大沢の全行程
まとめ
ぼく自身つくばの団地で育ったので、ベルコリーヌ南大沢はほんとに団地なのかなというくらい、イメージとは違っていた。直方体の建物が南向きに並んでいるのではなく、しゃれた形の建物が街路に沿って並んでいた。時代ごとに団地も変わりすぎてる。
それと公園と緑が多いのに驚いた。記事では鑓水公園くらいしか紹介できなかったのが、道のまわりを含めて本当に景色が緑なのだ。多摩ニュータウン、西に行くほどいい環境なのかもしれない。バスが来ない道はあるけれど。
取材協力:
みんなで地理プラーザ!(地理プラ)
山口健太さん
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
この記事、実は三土さんとしては当初前回まででおしまいのつもりだったのですが、めちゃめちゃに好評だったので無理を言って続編を書いてもらいました。写真の再撮影にまで行ってもらってありがたい限りです。
しかしその甲斐あって、前世紀の記録という感じだった前回から現代まで多摩ニュータウンの歴史がつながりました。ぜひ改めて前回も再読してみてください。(石川)