特集 2026年10月20日

台湾のビルの屋上でデカい廟に出くわした~林姓宗廟~

「林さん」による「林さん」のための廟

私以外、だれもいません。さあお堂の中に入ってみましょう。

ゆっくり入ってみると、
台湾でいかつい人気を誇る女神・媽祖(まそ)をまつった「聖母殿」が・・・!

ゴージャスな装飾!屋上にあるからといって、地上の大きな廟と比べて何ら遜色はありません。しっかりとしたお供え物もあります。

なんと中庭もあります。

台北駅周辺の地上だと、こんなに広い廟はなかなか無い…!中庭の先にある別のお堂エリアに行くと、

ご位牌がたくさん安置されていました

このご位牌、なんと全て「林さん」のもの。ここ「林姓宗廟」は、台湾の「林氏」の先祖をおまつりする廟だそうです。

林姓宗廟再建プロジェクトの中心メンバーの名前を見てください。下の方に書いてあります!全員「林さん」です!

中華系の文化には、父方の血縁でつながる同じ苗字のグループ、「宗族」があります。

宗族のなかには、自分たちの先祖をまつる宗廟(祖廟・祠堂ともいう)を建てることもあるのだそう。

この「林姓宗廟」は、「林」という苗字の宗族が作った宗廟。すなわち、台湾全土の「林さん」による「林さん」のための廟なのです・・・!

当デイリーポータルZの編集長は林さんです。デイリーで書かせてもらってるライターとしては否応なしにテンション上がります。

台湾五大豪族に数えられる「板橋林家」と、台湾全土の林さんが資金をあつめて作ったのがはじまりだそうです。

日本だと、先祖代々のお墓があるお寺「菩提寺(ぼだいじ)」があったりしますが、ここまで「同じ苗字グループだけ!」でまとまってる施設は早々ないイメージです・・・!

この絵の2人は「伝説の林さん」だそう

 左は殷の時代に、めちゃくちゃな政治をする紂王をいさめて殺された「比干」、右は比干の息子で周王朝に仕えた「林堅」。2人は林氏の始祖とされています。いや、三千年前の林さん・・・!?

そういえば、さっき紹介した女神・媽祖(まそ)は、もともと「林默」という名前だったという伝説があります。苗字が「林」!なるほど、だからまつってたんや!

宗族は、はっきりと血縁関係がたどれる人たちだけじゃなくて、「このあたりに住む私たち、めっちゃすごい祖先たちの子孫だよね」を合言葉に、特定の地域に住む同じ苗字の人がまとまるケースがあります。かなり柔軟です。

宗族はだいぶ前のコミュニティの在り方のようですが、台北駅の近くでそれを感じられるとは・・・旅行ってアツい・・・!!

赤い紙の掛け軸に、金色で書かれているのはもちろん「林」。林への愛があふれている。
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強めの親孝行スピリット

林姓宗廟は林家の廟ということもあって、「家族に尽くしていこうぜ・・・!」というメッセージにあふれています。

「忠孝伝家」という立派な扁額が(「親や家族に尽くして代々の家を継ぐ」みたいな意味)

親孝行エピソードの絵も描かれてあります。

さっき通った中庭に描かれている絵をよく見ると、​​​
夏の時代、家臣が謀反が起こして王が殺されるも、王子である少康が母親の言いつけどおり逆臣を討って夏王朝​​を再興する「中興報親」のエピソードです。

こういうのは「がんばったんやなあ」と素直に思えますが、中にはギョッとするような親孝行も。

自分が70歳になっても、カラフルな服で幼児のような演技をして親を楽しませた老萊子のエピソード「彩衣戯親」・・・!
宋時代の英雄・岳飛が、母親から背中に「尽忠報国」って刺青を入れてもらうエピソード!(「家に尽くすのも国に尽くすのも大体同じ」という考え方での親孝行)

中華系の親孝行故事はインパクト大でドキドキしてしまいますね・・・!(ほかにも気になる方は『二十四孝』という親孝行エピソードまとめがおススメです)

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純「林」でないと反応は得られなかった

たまたまGoogleマップで見てたどりついた場所ですが、なんかもう知らないこと浴びまくりでテンションあがりました。

「記事で紹介したい…!」と決心。

許可取りのために事務室へ。

事務作業をしていたおじさんに「すみません、日本のライターなのですが、こちらの廟の写真付きの紹介記事でネットにアップしていいですか?」と尋ねると、「いいよ」と即答をいただきました。すこぶる早さ。

その際、私の本名が書かれた名刺もお渡ししました。一応、私の本名の苗字には「林」の文字が入っているのですが、おじさんは完全なノーリアクションでした。やはり純「林」でないといけなかったようです。

エレベーターで地上に降りると、ビルの入口に「林氏実業大楼(林実業ビル)」と書かれてある。

林姓宗廟は元々台北城内にあったらしいのですが、日本統治時代に大稲埕のこの場所に移動。

その後「ここに林氏のビルを建てて、屋上に廟を移そう 」という計画が立ち、民国67年(1978年)にビルが、つづいて民国70年(1981年)に宗廟が竣工したらしいです。

ビルを引きで見ると、屋上に思いっきり廟が見える…!

現在の林氏実業大楼(林実業ビル)には、チェーン店のホテルやギラギラのサウナ施設「天龍三温暖」がテナントで入っております。昔は証券会社やスーパーもあったようです。結構なんでもありで心惹かれました。

参考文献
・森本一彦・平井晶子・落合恵美子 編『リーディングス アジアの家族と親密圏 第1巻 家族イデオロギー 』(2022年、有斐閣)
・林金郎『神靈台灣·第一本親近神明的小百科(暢銷紀念版)』(2018年、柿子文化事業有限公司)
・瀬川昌久『中国人の村落と宗教』(1991年、弘文社)
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編集部からのみどころ
家族観とか道徳観とかが全然違うの、面白いですよね。海外のこういう場所を珍スポット扱いで終わらせないで、内側のところまでちゃんと読み取って興味深さを見いだせるのは唐沢さんならではだと思います。

最後の名刺のエピソード笑いました。

 

こういう、ちょっと共通点あった!と思って喜んで近づいたら全然響かないこと、ありますよね…(石川)

 

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まだいるレジェンド林
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実はこの記事を書くのにめちゃくちゃ時間がかかっているというお話

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