特集 2019年3月21日

斜にかまえる、かまえないを1分ごとに切り替えるとどうなるか

むかしからなんでも斜にかまえるクセがある。

行列を見ては「よく並ぶねえ」と思い、流行りの曲を聞いては「これが流行ってんのね」と少しうがった目で見てしまうのだ。

そこでふと「斜にかまえる」「かまえない」を意識的に切り替えるとどういう感情になるのか気になった。実験してみます。

1990年沖縄生まれ。営業日のお昼休みに(ほぼ)毎日更新する「今日の休憩」というブログを運営しています。

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やり方

簡単にやり方を説明すると

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①何かモノなどを目の前に置く

 

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②それに対し、1分間は斜にかまえ、もう1分間は斜にかまえずに感想を言う。これだけだ。

ちなみに「斜にかまえる」を辞書で調べると、「物事に正対しないで、皮肉やからかいなどの目で見ること」とある。

わかりやすく言えば、1分間は皮肉めいた目で見て、1分間は素直に感想を言ったり肯定してみたりする実験である。

ひとりじゃ心もとないので、今回は後輩と一緒にやることにした。

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後輩の郡司さん(左)と山宮さん(右)。二人とも斜にかまえがちな性格を自覚しているそうだ。

とりあえず流行っているタピオカを例としてやってみる。
 

タピオカミルクティ
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二人ともあまり飲んだことがないという。「流行ってるよね」「どこ行っても並んでる」とかまえ気味だ。

まずはこの調子で「1分間タピオカについて存分に斜にかまえる1分間」をやってみてもらおう。スタート!

 

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「えー、はいはいはい。なるほどね。まあ味はおいしいね」

 

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「うーん?まあ飲めないことはない。でもタピオカいらなくない?こっちは喉を潤したいのに……」

 

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こちらから指定してるとはいえ、めちゃくちゃ上から目線で感想を言ってくるので笑ってしまった。すごく口うるさい二人組が目の前にいる。

「あんなこぞって飲むほどではないよねえ」とアクセル全開のかまえを見せている。これはこれですごい技術だ。

と言ってるうちに、すぐに1分が経過した。

二人とも「まあこんなもんか」という表情だ。

次は「斜にかまえない」1分間である。

この流れから素直に褒めたり感想を言えるのだろうか。はじめ! 

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「…さっき言えなかったんだけど……実は甘党なので味めちゃくちゃ好きなんですよ」「わかる、今まで恥ずかしくて言えなかった」

 

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「思えばタピオカが吸いやすいように太いストローになっているの、本当に優しい」「たくさん食べられて嬉しい」

 

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「ちょっと待って!パッケージも色がかわいいだけじゃないことに気がついてしまった」

 

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「サボテンがあしらわれてる!」「えーーっほんとだ!全然気づかなかった!かわいくしすぎない工夫か〜」

 

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「どんな会社か調べたらロサンゼルスにも店があってセレブとかにも人気らしい」「え!海外にもゆかりのあるやつだったんだ!」

ここで1分終了である。どうだっただろうか。

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「斜にかまえている時には見えない情報が突然見えた…」「怖い…」とすごくへこんでしまった。何が起きているのだろう。

「斜にかまえる1分」と「斜にかまえない1分」ではモノの見え方がまったく違うと話している。私も体験してみたい。

何気ないモノでもやってみる

タピオカはあからさますぎたので、今度は普段なにも思わないアイテムでもやってみることにした。

 

 

MONO消しゴム
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MONO消しゴムだ。

さっきは斜にかまえることからスタートしたが、今回はかまえないから始めてみることにした。では開始!
 

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「色合いがシンプルで本当に素晴らしいよね「名品」「しかもMONOは特に消しやすい」

 

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「あとよく見たらカバーの四隅にくぼみがあって、消しゴムがちぎれないようになってるんですよ」「すごいな本当に」「企業努力だ」

 

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「いやー改めて見ると本当いい消しゴム」「小学校からお世話にしかなってないなーありがたい」

ここで1分終了だ。

あまりに隙のないたたずまいに「この消しゴムについてはさすがに斜にかまえるところない」と意見が一致した。

素晴らしい製品である。

でもルールなので、続いては「MONOについて斜にかまえる1分間」をやってみよう。スタート!

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「えー?斜にかまえてみると……海外はピンクとか黄色とかあるのに白ってシンプルすぎだよね」

 

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「どうせ使いきれないんだよなー。このサイズでも」

 

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「あとこれだけ科学が進化したのにまだこの消し方?変わらなすぎ」「変化がないよ変化が」「地球にも優しくないよね」

本当に驚いた。斜にかまえず見た時には見えなかった欠点(なのかもわからない)がいきなり見えてくるのだ。

あんなに「素晴らしい製品だ」と思っていたのに、いまでは「進化しない昔のもの」にすら見える。消しゴムは変化しなくていいのに!

かまえた時、かまえない時、どちらが自分の本心なのかもわからなくなってきた。スタートの設定によってこんなに自分の感想が変わることに軽く引いた。

参加者全員が「なんだこの感覚は」「自分が怖い!」と言う。

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外に出てフリースタイル切り替えをしてみる

モノだけでなく外でも1分切り替え体験をして見ることにした。

 

マンホール

 

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マンホールでやってみる。いたって普通だ。

 

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「さすがにこれはかまえても、かまえなくても何も思わない自信がある」という。私もそう思った。

では1分「斜にかまえない」からスタートしてみよう。 

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「ん…?みてここ!」

 

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「なんだこの番号は!」「本当に初めて気づいた」

 

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「調べたらマンホールの識別番号らしい」

 

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「フタを見ただけで下に何が流れてるかわかるんだって」「うそでしょ天才じゃん知らなかった…」

 

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「というかこの加工技術すごくないですか」「こんな厚い金属をデザインのために加工するとか粋すぎ」

〜終了〜
 

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「マンホールすごすぎて言葉がでない」「これはすごい、何でもできるぞ」

タピオカの時と同様、斜にかまえずに見ると気がつく範囲が広くなり、追加で調べる傾向があることがわかってきた。

だいたいそこで新しい発見があり「うわー!知らなかった!」が出てくる。

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「マンホールでさえこんなに知らないことがあるの本当に怖い」「なにしてたんだ今まで!と思いすぎて笑える」

と、いろんな感情が混じってきたところで次は「マンホールについて斜にかまえる1分」である。はじめよう。

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「えーまず」

 

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「凹凸ありすぎじゃない?」「これは掃除しにくいわ」「タバコの吸い殻とかも挟まっちゃうと思う」

 

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「あ!本当にタバコの吸い殻だ!」
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「ほーら言った通りだ!!!」「ベビーカーとかもガタガタしちゃうってこれは」

 

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「あと色が地味だよね。海外ならカラフルにしてくる」

〜終了〜

 

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「もう自分が何なのかわからない」「2分でここまで意見を変えられるなんて恐ろしい」

「斜にかまえる」だけでここまで自分が悪いことに気がつくことが怖くなってきた。

でも、よくよく考えると悪い指摘も間違ってはいないこともある。「カラフルにすべき」は言いがかりだが、ベビーカーはガタガタするだろうし、掃除がしにくいのは事実だ!

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「斜にかまえる」「かまえない」で写真撮影もしてみる

モノに対してはうまくいったが、動作に対してはどうだろうと考えた。その中で出たのが「仲間と肩を組んで写真を撮影する」だ。

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「本当に人生で避けてきた撮影方法だ」「仲良いアピールのようでいやだ」という。とても苦手らしい。
仲間と肩を組んで
写真を撮影する

まずは斜にかまえつつ、肩を組んで撮影してみよう。 

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ぎこちなさがすごい。もう前も見られなくなっている。肩を組む資格がない。

「これに関しては斜にかまえることしかできない」
「そもそも苦手だ」どんどん自信がなくなっていく。

でもこれまで数々の「切りかえ」に成功してきた我々だ。

ではここから1分間、斜にかまえず肩を組んで撮影してみよう。 

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ウォー!!肩を組んだぞー!

「いきなり一体感出た!!!」「めちゃくちゃ楽しそうに写れてるよ!!」と自信が湧いてきた。

すごい、心の持ちようだけで写真撮影はこんなに面白くなる。さっきのどんよりした気持ちがうそみたいだ。

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「思い出の写真感」すごい。こんなに躍動感ある友達との写真ははじめてだ。腹をくくって楽しそうにすると面白い。

一連の実験をへて、私たちは「とりあえずなんでもかまえたり、かまえなかったりを切りかえるだけで新しい発見があるので得した気分になる」という結論に達した。

あと普段「斜にかまえるだけ」ということが恥ずかしくなった。

今後は「かまえないタイム」「逆にかまえるタイム」も導入していきたい。

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「もうアロマとかなんでもいいから切り替えやりたい!」「もうなんでもいけるぞ」と最後は謎の自信がついていた。

謎の知識がふえる実験

斜にかまえる切り替えを繰り返していたら、なんでも褒めたり逆に微妙な点に気づいたりする状態が続いた。脳が謎の進化を遂げた感があった。みなさんもぜひたのしく切り替え散歩してみてください。
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普段は絶対見逃す服屋の前で「へぇーすごい」という図。
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