デジタルリマスター 2022年7月10日

不安な気持ちになる階段巡り(デジタルリマスター)

不安な気持ち

階段にはどこか気持ちを揺さぶる要素がある。

階段を上った先には何があるのか?という小さな未知への不安と期待が入り交じるからなのか、足腰への肉体的負荷を強要するからなのか、詳しいことはわからないが、あのサスペンス映画の巨匠・ヒッチコック監督は、しばしばこれを効果的に演出に使っていた。

そのあたりを、長崎にたくさんあるすごい階段を使って、独自に検証してみたいと思う。

2006年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

長崎より九州のローカルネタを中心にリポートしてます。1971年生まれ。茨城県つくば市出身。2001年より長崎在住。ベルマークを捨てると罵声を浴びせられるという大変厳しい家庭環境で暮らしています。

前の記事:小さい人、あらわる。(デジタルリマスター)

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イントロダクション

サスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督は、
しばしば緊張感を盛り上げる場面で“階段”を使った。

例えば、「断崖」という映画の中に、こんなシーンがある。

・体の具合が良くない妻のために夫がミルクを運んでくる。
・が、妻は夫に対して
「ひょっとして夫は自分を殺そうとしてるんじゃないか?」
という疑惑を抱いており、
・夫が運んできたミルクに毒が入ってるように見えてしまう。

このシーンを、ヒッチコック監督はどう演出したかというと、

・コップの中に豆電球を仕込み、
・不気味に白く浮き上がるミルクを持った夫が
・階段を上ってくる

というふうに撮った。

つまり、こんな感じだ。

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妻のためにミルクを運ぶ夫

まずは普通に、体調の悪い妻のためにミルクを運ぶ夫の図、である。人相の善し悪しはともかくとして、「早く元気になってほしい」という思いを込めてミルクを運んでいる感じが、まぁまぁ出ていると思う。

ところが同じことを階段を上りながらやってみると…

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同じく、妻のためにミルクを運ぶ夫

これが階段の効果だ。

夫は本当に信頼できる人なのかしら?
あのミルクには毒が入ってるんじゃないかしら?
と疑念を抱く妻の心が、よく表現されているように思う。

長崎の気になる階段たちを見に

さて、上の写真はとりあえず、ということで家の前の階段で撮ったものだが、長崎は坂の町だけあって数多くの階段がある。
その中から、“より見るものを不安にさせる階段”を見つけに、出かけたいと思う。

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気になる階段ファイル:その1

さて、最初に見る「気になる階段」はこちら。

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これ

竹林の横にある階段。
なぜだかわからないが、なんとなく不思議な感じがしないだろうか?
これが前々から気になっていた。

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どこか不思議な感じがする階段

よく見るとエッジ部分がすごい。どうなってるんだろう?
用が無かったので今まで遠くから見るばかりだったが、ここにこれから行ってみたいと思う。

近くに行くまでに一苦労

およそここ通っていいのかな?という感じのところを無理矢理進み、ようやく階段のふもとまで辿り着いた。

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予想以上に荒んでいた階段

登っていくと、なんだか荒みっぷりがすごい。
「不安にさせる」という意味では、いきなり直球が来た感じ。

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絡まる草、壁にはヒビ
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登りつめた先にあったものは…

やがて一番上まで着いた。
しかしそれにしても妙な感じの階段だなぁ、と思いながら
端に立って見下ろしてみると…。

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ひゅい~
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危険な階段

この階段、普通は付いてるであろう手すりの類が、一切付いてなかったのだ。だから遠くから見てもなんだか変な感じがしたのか!

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これは危険だ…
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と思ったら行き止まり。

よく見たら、その上は封鎖されていた。
つまりこれは、使用禁止の階段だった。

(どおりで、登り口を見つけるのにも苦労したわけだ。)

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下から見上げた図。エッジがすごいな。
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勢い余って落ちちゃうよ。

ミルクはどう見えるのか?

さて、というわけで
かなり私の気持ちを不安にさせてくれた階段だったが、
例のミルクを運ぶ場面をここでやってみたら、一体どれくらいそれは毒入りっぽく見えるのか?

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妻のためにミルクを運ぶ夫

一体この夫婦はどこに住んでるのだ?
という疑問が沸かなくもない。

あと、夫というより、召使いだ。
ものすごい「かかあ天下」な家にも見える。

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「風邪の具合はどうだい?」
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「これを飲んで早く元気になっておくれ」

しかし、さすがは危険な階段だ。
じっと見てるうちに、だんだん毒入りミルクに見えてくる。

これがヒッチコックがしばし用いた階段効果である。

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そして牛乳を飲む
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ぷっは~
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気になる階段ファイル:その2

次に見るのは、私が車で横を通るたびに、いつも気になっていた階段。

こんなやつだ。

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車で走ってると横に見える
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この階段

このちょっと遺跡みたいにも見える階段。
これがずっと気になっていたのだが、やっぱり用がなくて今まで実際に行ったことがなかった。今度はこれに行ってみよう。

階段かどうかすら疑わしい

下まで行って見上げたら、こんなだった

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階段?

階段、というよりは「コンクリートで固められたボコボコ」という感じだが、広い意味でこういうのを階段と呼ぶのだろう。

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で、登る

傾斜はかなり急。
革靴だったこともあり、足元がすべり股間に余計な力が入る。

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横から見た図
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こういうアングルで見ると階段に見えない

丸みを帯びた流線型のフォルムは、車などのデザインとしては秀逸だが、階段のフォルムとしては大いに疑問を感じるところである。

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ふう

ミルクはどう見えるのか?

というわけで私を不安にさせるに充分だったこの階段。
ここでもまた、ミルクの見え方がどのように変化するのか
検証してみよう。

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妻のためにミルクを運ぶ夫
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えっさ、ほいさ
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おつかれさま~

戦後だ。戦後の写真っぽい。
が、ここでもやはり、じっと見てるうちにだんだん毒入りミルクではないか?という不気味さがじわじわとこみ上げてくる。
そう、これが階段効果だ。

階段は急な上に、写真を撮るために何度も行ったり来たりしてたら、すっかりヘトヘトになってしまった。翌日はすごい筋肉痛になった。

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ふぅ~
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気になる階段ファイル:その3 ~地獄の階段~

次に向った気になる階段は、「地獄」の名が付いた階段。調べてみると、「地獄坂」と呼ばれる坂は長崎だけでもあちこちにあることがわかった。遠い存在だと思いきや意外に身近だった地獄。その中から、「相生地獄坂(あいおいじごくざか)」と呼ばれるところに行ってみることにした。

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「地獄」と名の付く坂
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出だしはわりと普通の階段っぽいな

「地獄」と呼ばれるからには、やはり地獄に違いない。
ここを登ってみよう。

これが階段地獄だ

そこには、ご覧の通りの急階段が延々と続いていた。

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スティープ、かつロング
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でもなんだか
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美しさも垣間見える

たしかにきつい階段ではあるが、
長崎ではこれくらいの階段はあちらこちらで見られるため、特別ここだけが地獄という感じはしなかった。
ということはつまり、長崎が全体的に地獄なのか?…という考えも一瞬よぎるが、あまり深く考え込まないことにしよう。

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振り返ればこんな眺めが

階段を登り切ったところには、しゃれた感じの洋館と、上からの景色を眺めるのにちょうどいいベンチがあった。

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登りきった先には、居留地時代を思い起こさせる洋館が(南山手レストハウス)
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それとベンチ (大浦展望公園)

ミルクはどう見えるのか?

さてここでも例によって、運ばれるミルクがどう変化するのか検証してみよう。

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妻のためにミルクを運ぶ夫
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地獄の底から這い上がってきた
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妻のために

だんだん自分が何をしてるのか、わからなくなってきた。
なぜ私はこうしてミルクを運んでいるのか?

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そして飲む
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気になる階段ファイル:その4 ~最後は天国~

最後は天国である。
地獄を見た次は、天国を見てみたい。

そのあまりの“あんまりっぷり”に、一部の人々から「天国への階段」とか称されている階段である。

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「おや? 一見普通の坂に見えるが」
と思われるとかたも多いと思うが、よく見ると…

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我が目を疑った

よく見ると、家と家との隙間に階段があるのだ。
それも果てしなく上に上昇している。
最初これが階段だとわかった時は我が目を疑った。

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天国への階段

細い、そして長い。そしてわけわからん。

なぜこうなっていて、一体どこに向って伸びているのか?
さまざまなクエスチョンマークを抱えながら、私はおそるおそる階段を登って行った。

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生涯見た中で最も急

階段の幅が狭いせいからか、見る者に強烈なインパクトを与える天国への階段。おとな一人分、すれ違いできないくらいの幅。それが果てしなく真っ直ぐ上に伸びている。

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おとな一人分ほどの幅

民家を抜けると、さらにその先は山の頂上へ向って伸びていた。あくまでも真っ直ぐ。幅は若干狭くなって。

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山頂へ向っていく
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こんな幅になる
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ふい~。

気付くと、いつの間にか登山になっていた。
足元が狭くて、客観的に自分の立ち位置を確認できないが、横の景色から推測すると、相当高い位置をかなりの角度で登っていることがわかる。

山って普通、こんな風に直線では登らんだろう。

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遠くを見て、自分の状況を推測する
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無限に続く

やがてすごい急角度な段を経た後、ゆるかな傾斜になった。頂上付近に着いたようだ。

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ここの段差が一番凄い
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いよいよ山っぽい

頂上には何が…?!

やがて前方に小屋のようなものが見えてきた。
一体何があるのか?

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ゴールが見えてきた
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がーん

そこにあったのは「立入禁止」という札と金網だった。水道局の施設ということは、どうも貯水施設のようだ。高い位置から落差を利用して水を配っているんではなかろうか。

ミルクはどう見えるのか?

では最後に再び、普通のミルクがどのように変化して見えるのか、確認してみたい。階段が階段だけに、かなりの階段効果が見込めそうだ。

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「風邪の具合はどうだい?」
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「 ほら、ミルクを持ってきたよ。」
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毒!これはもう毒!
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