趣味を大事に
子どものころからプールでよく見るあのタイマーが、ひとつの会社を救った存在だったとは知らなかった。グルグル回り続ける針は、会社という名の時計の針も進めていたのだ。
そしてなにより「働いてばかりいないで趣味を大事にしよう……」と思わされた取材でした。

取材協力:ツカサドルフィン株式会社
会社が軌道に乗ったあとも、ツカサ電工はスポーツタイマーを作り続けた。なんせ会社の救世主だ。会長の水泳への思い入れも強い。そこに入社したのが橋本さんである。
「電工」だけど、スポーツタイマーだけでなく、水泳用品もどんどん手がけるようになったのである。そのひとつがこちら。
橋本さん 東京アクアティクスセンターや横浜国際プールなど、国内の大きなプールにはほぼうちのレーンロープが入ってます。日本水泳連盟公認品で、国内主要大会でも数多く実績があるんです。
レーンロープ独特の、背中にゴリゴリ当てたら凝りがほぐれそうな形にはちゃんと意味がある。これ、波を消す働きがあるのだ。
中川さん 競技レベルが上がれば波が高くなりますし、ちょっとの波がタイムに影響します。できるだけいい環境で選手に泳いでもらうには、欠かせない存在なんですよ。
橋本さん 太いロープのほうが波を消す効果が高いんです。今は競技用のものだと直径15cmですね。テレビでちらっと映ると「うちのだ」ってわかります(笑)
確かにトップ選手のバタフライなんていったら、めっちゃ波が立つだろう。大事な機能である。
ちなみに、レーンロープはパーツ(フロート)ごとにバラ売りもしている。壊れたときの交換用かなと思ったら、競技の際は「何メートルまで何色」とレイアウトが決まっているのだとか。
さて、そんなレーンロープの話を聞いている間に、我々の視界の奥でずっと動いているものがあった。
橋本さん プールの清掃ロボットですね。営業が終わったあとにプールに入れて、人がいないあいだに掃除してくれるんです。床だけを掃除するものや、壁を登ってキレイにするものもありますよ。
今やツカサドルフィンでは、ビート板やベンチ、監視台、床に敷くマット、脱衣所のロッカーに至るまで、プールで目にするものはほぼ取り扱っている。やっぱり売れる時期って夏なんでしょうか?
橋本さん もう少し前、年度末から6月くらいによく売れますね。7月8月になると競技が始まるので、会場まで行って設置やメンテナンスなども行ってます。今年は世界水泳選手権が福岡でありましたし、インターハイが札幌、国体が鹿児島であるので、結構全国あちこち行くんですよ。
世界水泳選手権、テレ朝でB'zのウルトラソウル(ハイ!)が流れていたあれである。そういえば今年もよく聞いたっけ。
ちなみに、前回福岡で世界水泳があったのは21年前の2001年。「そのときもやってましたね(笑)」と橋本さんは笑う。人に歴史あり。
ここまでお話を聞いてきたけども、ここは展示会の会場である。そこには「参考出品」として、開発中の製品も展示されていた。
「デジタルサイネージタイマー」である。
駅とかでよく見かける縦長のモニターに、あの文字盤が入っている。未来のスポーツタイマーはこうなるのか……!
デジタルサイネージにしちゃえば、デジタルもアナログもいっぺんに表示できるし、一番下に出ている文字も変えられる。なんならバナー広告も出せちゃう。表現の自由度が一気に高くなる。
橋本さん 画面が光っているので離れていても見えやすいんですが、それなりに大きさも必要なので、あとはコストとの兼ね合いですね。今回の展示では結構いい反応もいただけているので、商品化に向けてさらに進化していけたらと思います。
子どものころからプールでよく見るあのタイマーが、ひとつの会社を救った存在だったとは知らなかった。グルグル回り続ける針は、会社という名の時計の針も進めていたのだ。
そしてなにより「働いてばかりいないで趣味を大事にしよう……」と思わされた取材でした。
取材協力:ツカサドルフィン株式会社
![]() |
||
<もどる | ▽デイリーポータルZトップへ | |
![]() |
||
![]() |
▲デイリーポータルZトップへ | ![]() |