せっかく速記を勉強したので、書くだけではなく身の回りのいろんなものを、速記文字で読んでみることにした。
速記を学ぶと、身の回りのあらゆるものが速記に見えてくるようになる。優雅なアスキーアートも書けるし、世界がぐんと広がる気がする。最近新しい趣味が欲しいなと思っている人は始めようよ!いまこそ速記!
最近マンガで「速記文字」のことを知った。
とにかく速く書くためだけに作られた暗号みたいなぐねぐねの文字で、少し前までは資格として重宝されていたものの、レコーダーのおかげでいまや絶滅寸前らしい。
ここで知ったのもなにかのご縁。絶滅寸前の速記を救うため、いちから勉強してみることにした。
まずはこちらを見て欲しい。
すね毛が散らばっているようにしか見えないかもしれないが、これはれっきとした日本語だ。名前を速記文字という。
速記はとにかく速く書くための文字で、いまのようにレコーダーが普及していなかった頃に議事録などを書くのに使われていた。
いまでは速記の学校を探すのも一苦労だが、かつては人気の資格だったらしい。そんな速記を、独学で勉強してみることにした。
まずは名前を書いてみよう。
どう見てもすね毛にしか見えないし、「なぜ私はすね毛を丁寧に書いているのだろう」という気持ちになってくるが、気にせずどんどん練習しよう。
ある程度書いて五十音を覚えたら、今度は速記の本領である「音声を聞いてそれを文字にする」という書き取りの練習をやってみよう。
なにを書き取るか悩んだが、どうせなら有名な話がいいだろうと、中島敦『山月記』の書き取りをすることにした。
速記がどうのこうのというより、山月記が書き取りの教材としてハードすぎた。
いきなり「隴西(ろうせい)の李徴(りちょう)は博学才穎(はくがくさいえい)」なんて言われても初心者の速記ではまったく対応できない。だいたい博学才穎という言葉自体、山月記以外で聞いたことがない。
もう少し、いやかなりハードルを下げようと思い、今度は名作「おおきなかぶ」を書き取りすることにした。
これでもう一度、書き取りにチャレンジする。
まず五十音がうろ覚えなので、思い出すのに微妙に時間がかかってしまう。速記の手練れなら「文字をつなげて書くことでさらにスピードアップする」という技があるのだが、その域まで達していない私では「まあ普段よりはちょっと速いかもしれないな?」ぐらいのスピードしか出せない。
速記、なかなか難しい。さすがかつての人気資格というべきか、素人がちょっと勉強しただけではなかなか書き取りまでスルスルやるのは難しいようだ。
このまま独学で練習をしていると、私が書き取りができるのは半世紀先になってしまう。
ここは思い切って文明の利器を使うしかない。
まさにマリー・アントワネット的発想。手書きの速記ができないならば、パソコンで打ち込めばいいのである。ここは文明の利器に頼って速記をささっとマスターしよう。
文明の利器に頼ってみると、『おおきなかぶ』も......
まったく歯が立たなかった『山月記』も...
打ち込みながら「これはライターとして普段やってるインタビューの文字起こしと同じ作業では?」と思えてきたが、それ以上は考えないことにした。
せっかく文明の利器で速記をマスターしたので、もっと速記で遊んでみたい。
速記を練習し始めたとき、一番グッときたのが「速記文字画」だ。
せっかく速記をマスターしたなら、この優雅な遊びもやってみたい。さきほどの速記フォントを使って「デイリーポータルゼット」を速記文字画を書いてみよう。
この文字をもとにあれこれ文字を組み合わせよう。
「ていりほたるせつと」の速記文字画を作ってみたら、まあまあ腹の立つ顔ができた。速記を学ぶと、腹の立つ顔をささっと描くことができるらしい。
速記を学ぶと、身の回りのあらゆるものが速記に見えてくるようになる。優雅なアスキーアートも書けるし、世界がぐんと広がる気がする。最近新しい趣味が欲しいなと思っている人は始めようよ!いまこそ速記!
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