特集 2020年5月8日

ソーシャルディスタンスを表す図はどう描かれているか

新型コロナの流行で、最近急に出てきて一気に広まった概念「ソーシャルディスタンス」。
感染予防のため他人と距離をあけましょう、というものだ。

急に出てきた概念なので、トイレのマークみたいな、決まった図がない。どんなふうに図示されているか、街中の張り紙から調べてみた。

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。(動画インタビュー)

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いろいろなソーシャルディスタンス

事例を集めるために街中を歩き回って……ができないのが昨今の辛いところである。

そのかわり、GW中に、デイリーポータルZをはげます会、それからTwitterを通じて、読者のみなさまに写真を送っていただいた。(ありがとうございました!)

ソーシャルディスタンスがどんな絵で表現されているか、さっそく見てみよう。
※各写真のカッコ書きは写真提供者です。

単純に空ける系

一番シンプル。単に人と人とのあいだが開いている絵だ。

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単純に人どうしの距離が開いている(写:@ikuyeyoja
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紙の両端に人物を寄せるとより効果的(写:@honey8232

しかしながらこのパターン、単に「人が二人いるだけ」の絵にも見えてしまうので、文字での補足が不可欠である。
それを回避するために、みんないろんな工夫を凝らしている。

計測系

たとえば、ものさし的な道具の絵を描くことで、距離の概念を表現しているパターン。

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メジャーの絵を使って距離を表現しているパターン(写:向井さん)
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こちらも定規を使って直接的に距離を表現している(写:ライター高瀬さん)

「ディスタンス」というのは距離のことなので、これらはもっとも言葉の意味を忠実に図にしたもの、といえるかもしれない。

目安系

ものさしほど直接的ではないものの、目安になる物を使って距離を表現するパターン。

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階段やエスカレーターは、段があるので、具体的に距離を指定できる(写:@hk_blaco

 

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手を広げられるくらい離れてね、というメッセージ。(そして全体で「北」の字になっている!)(写:黒川さん)

学校の体育で準備体操をするとき、両手を広げて間隔を測っていたのを思い出した。
義務教育はすでにソーシャルディスタンスを予言していたのである!(なんだってー)


あいだに何かある系

人と人とのあいだに何かをはさんだ絵だ。

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いらすとやは、間にいる人を消すことで「疎」を表現(写:@GeneDiver1228

これは、普通なら2人分のスペースにいまは一人ですよ、という引き算のニュアンスを感じるのだけど

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人ではなく「間」を入れて間隔を表す場合も(写:編集部 古賀さん)

こちらは、2人のあいだにいつもより余分に「間」をいれてくださいね、という足し算のニュアンスを感じる。

絵としては似ているけど、実は解釈が分かれているようでおもしろい。

対比する系

t015.jpg
密集している絵と対比させることで、間隔の広さを表現(写:@angeniomakase

OKのほう、よく見ると足元に矢印と「2m」の文字が書かれているのだけど、それがなかったとしてもこういう対比であれば一目瞭然。

それから、さっき「単純に空ける系」のところで紹介したこちらも、

t013.jpg

ふだんこういう張り紙では2人の人物はもっと近くに配置されることが多いと思う。
そういう感覚があるからこそ、「あれ、妙に離れてるな……」という感じで、距離に意識的になる。

その点で、この張り紙も「対比する系」カテゴリに入れても良さそうだ。

仕切りを入れる系

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壁のような点線を書くことで、へだたりを表現している(写:バーバラ・ アスカさん)
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これも仕切りを入れることで、へだたりを表現(写:@La_glycine

実際にはこのような仕切りは存在しないわけだが、心理的には「距離をあける」と「壁を作る」はかなり近い感覚である。そんなフィーリングに基づいた表現だ。

字で書く系

これは本記事の前半部のオチです。

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もはや図でもなんでもないのだが、いさぎよさにあふれている(写:@shioto_se
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記号化された絵

世の中には記号的なイラスト表現があふれている。

たとえば男女が並んで立っている絵はトイレを表すし、人が扉に走っている絵は非常口を表す。地図上にフォークとナイフが並んでいる絵があれば、それは飲食店のマークだろう。
こういう記号化された絵はピクトグラムと呼ばれるけれども、これらは人々が「こういう絵がかいてあったらこういう意味ですよ」という共通認識を持っているからこそ、メッセージとして伝わっている。

たとえば、

k.jpg
トイレのマーク

トイレを表すなら便器を描いた方が直感的だと思うのだが、みんなが「これはトイレのマークだ」という共通認識を持っているからこれが使われている。

f.gif
保存アイコンはフロッピー


フロッピーディスクの実物を知らない世代でも、このアイコンが「保存」をあらわすということは分かる。共通認識をもっているから。

言い換えれば、こういう記号は「ずっと使われているので、人々がその表現に慣れている」という状態にあるのだ。

じゃあ、こういう共通認識がない概念がいきなり出てきたら、どういう表現がされるのだろうか。興味深いテーマだが、なかなか実際に観測する機会はない。
そこへ本当にいきなり出てきたのが、「ソーシャルディスタンス」という概念だ。これを表す図の共通認識を、人類はまだ持っていないはず。まだ記号としての形が定まっていないのではないかと思ったのだ。

固まりつつあるソーシャルディスタンス

結果、あつめてみると上記のようにいろいろな試行錯誤が見られた。これはすごくおもしろかった。

しかし、である。上に紹介したパターンは実は、ひとにぎりの「例外」でしかない。

ほんとうは、すでにソーシャルディスタンスを表すピクトグラムはすでに完成して、人類の共通認識に組み込まれていたのだ。その伝播の速さときたら、件のウィルスの比ではない。

圧倒的多数を占めていたその表現は、これだ。

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矢印!(写:ライターSatoruさん)

二人の人を描き、そのあいだに外向きの両矢印を入れる。これは日本でも海外のいろんな国でも共通して使われているようだ。人類が獲得したソーシャルディスタンスのピクトグラムの標準形である、といっても問題ないだろう。

いろいろな矢印

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これもスタンダードなパターン(写:ライター井口さん)
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手書きでも登場する(写:いしかわさん)
f010.jpg
人が増える場合も(写:いしかわさん)
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3Dだ(写:@freak575
t025.jpg
マスク着用の図と兼ねることも可能である(写:@sazanami85
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状況によって人形の形も変わる(写:@La_glycine
t039.jpg
人間でない場合も…(写:@buono_konkiti

最後のは「マスクもしろよ」という気になってしまう。口が開いているからだろう。有事におけるゆるキャラ起用の難しさである。

ソーシャルディスタンスの距離

それからけっこう多いのが、矢印と一緒に具体的な距離が書かれているパターンだ。

t038.jpg
「1メートル以上」と書いてある(写:@hinatainu

いろいろ見ていて思ったのだが、この距離が、張り紙によってけっこう違う。

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これも1m(写:@ukiukibcn
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1.5m(写:ライターSatoruさん)
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6フィート(約1.8メートル)(写:じめ丼さん)
t028.jpg
2m以上(写:@6dMj2L8vXKumEsO
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距離ではなく「ベンチの両端」というわかりやすい基準も(写:ライターいまいずみさん)

店内なのか公園か、など条件が違うので一概にどれが正しいとかいう話でもないと思うが、思いのほかばらついているなと思った。

さらに興味深かったのは、日本/海外問わずメートル表記のものはわりと距離がバラバラなのに対して、フィート表記のものはすべて6フィートだった点だ。

気になってちょっと調べてみたのだが、結論としては、単にフィートを使っているのが米国くらいだから、というオチだった。CDC(米疾病対策センター)がソーシャルディスタンスの距離を6フィートと定めているのだ。なるほどー。


まだ定まっていないことのおもしろさ

結果的には世界標準と思われる表現が見つかってしまったわけだが、それでもまだ残っている手さぐり状態の表現がたくさん見つかったのは良かった。こういう未成熟な状態での試行錯誤こそ、「人の営み」という感じでとてもいじらしく、そして面白いと思うのだ。

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6フィートの目安を表した看板がよかった。デイノニクスの全長と同じかーなるほどー(写:Tamiさん)

 

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【日時】2020/6/7 (日) 20:00または21:00から(調整中)
【出場方法】こちらからご登録ください→ 参加登録フォーム
イベントの様子はYoutube Liveで配信予定です。

正式な告知ページは近日公開予定です!デイリーポータルZをまめにチェックしていただくか、Facebookグループ にご参加いただくと通知が来ます。

オンラインじゃないいつものヘボコンの開催はまだ未定ですが、秋くらいにできたらやりたいと思っています。

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