デジタルリマスター 2023年4月7日

雪かきをスポーツ化・国際雪ハネ選手権に参戦!(デジタルリマスター)

スタート! 

スタートの合図と同時に、20m先にある雪入りの箱に突進。先に掘るのは僕と平本さんだ。

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見事な雪しぶきをあげる平本さん(右)と、腰つきがおぼつかない僕(左)

箱に乗った瞬間、感じるのは雪の硬さ。踏み込んだとたんズボッとはまるかと思いきや、ふつうに上に乗れてしまう。そしてスコップを差し込み、持ち上げ…重い!みんなあんなに高々と跳ね上げていた雪だが、僕は持ち上げてスライドさせて箱の外に落とす、それで精一杯だ。

無心で掘る。スコップ3振りくらいですでに腕が痛いわけだが、なかったことにして掘る。この競技、腕力じゃない。気合いだ。(とその時は思ったのだが、今考えたら気合いじゃなくて腕力だ。) 

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だめだめ、交代交代!

掘り進めるにつれて、平本さん側の雪面と僕側の雪面で明らかに高低差ができてくる。平本さんはやっぱり慣れてる。そのときは「慣れてるな」と考える余裕はなかったのだが、「平本さんのほう、ひくくなった!」とは思った。ちょうどその頃には僕の腕にも限界がきて、箱から転げ落ちそうになりながら降りて、大北君にバトンタッチ。待機スペースに戻ってもしばらく息ができない。アップアップと浅く空気を吸い込むばかりだ。

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もうだめ!無理!

「楽しくやろう」の目標に忠実に、最初の間こそ「石川!」「平本!」と声を掛け合っていたメンバーだが、一度スコップを振ってしまうと体力的にも肺活量的にもそんな余裕はなく、必死の形相での戦いとなった。

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躍動する青ジャージ

その後も何度も交代を繰り返しながら、そのたびになけなしの体力を振り絞って雪をハネていく。もう正直、このあたりのことはあまり覚えていない。それだけ必死だったというのもあるだろうが、それよりも脳に酸素が回ってなかったにちがいない。

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大北&荻原さん。飛び散る雪しぶき
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交代直後、倒れ込む荻原さん
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平本さんの目にライター陣のようすはどう写っているのか

4分半もすると他のチームはおおかたゴール。そして平本さんの奮闘もむなしく、デイリーチームは箱の底まで達することなく、制限時間の6分を迎えようとしていた。 

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7分越えました

結局時間切れか…。悔しくないわけではない。でも、できるだけのことはやったんだ、悔いはない。充実感。そして少しだけ、この雪の重み、腕の痛みが名残惜しいような気もする。そんな感傷的な気持ちになりながらも、がむしゃらにスコップを振り続ける。すると、ふいに実況席から声が聞こえた。

「えー、今日はせっかく東京から来ていただいたので、特別に6分といわずに最後まで続けてください」

えーっ!もう終わると思ったのに!頭の中ではすでに「6分がんばったらゴール」とルールがすり替えられていたところだ。この瞬間、目前に迫っていたゴールはずいぶん遠くに行ってしまった。

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まわりに人が集まってきた
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やっぱり「諦めずにがんばれ」って状況に

開始7分もすぎると、まわりにたくさん人が集まっていて、みんなで声をかけてくれる。他チームを見ている林さんが恥ずかしがっていた、「どう見ても負けてるのに、『最後まであきらめないで』」っていう、まるっきりあのままのムードだ。しかし、いまはもはやそんなことで恥ずかしがるほどの感情の機微もない。むしろ気力だけで動いているところにこんなふうに応援されると「答えなきゃ!」と言う気にもなってくるものだ。

箱の中の雪もだいぶ浅くなり、いよいよ底板をあげる。

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せーの!(パンチラ)

見てる人も一丸で、声をそろえる。

  みんな「せーの!」

あがらない。

  みんな「せーの!」

重すぎる。これ無理だ。でもまわりもすっかりテンションがあがっていて、かけ声にもどんどん力が入っていく

  みんな「せーの!」

  「声の問題じゃねえだろ!」

大北が大声でつっこみ、笑いが起こる。
いちど板を置いてからさらにスコップで掘り、板の上の雪を減らして再挑戦。

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板があがった!!旗をゲット!
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そして今、ゴール!(フラフラすぎて内股)

 

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試合終了後も息は戻らず

ゴールイン後、マイクを向けて感想をきかれるも、息が上がっていて言葉が出ず。競技終了後も20分くらいは息が戻らず、ずっとハアハア言いながら雪祭り会場をうろうろしていた。無酸素運動恐るべし、だ。

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予選終了時点の順位表

その後の大会もなかなか波乱含みで、準決勝で地元チームはすべて敗退、最後は佐呂間町の大工さんチームと旭山動物園の飼育係チームで決勝戦、大工さんチームの勝利となった。

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優勝は「大工のスーさん’08」チーム(佐呂間町)

寒さを楽しむという発想

結局、28位に2分近い差をつけての29位。つまりダントツの最下位だ。タイムは7:54:24で、それだけあれば1位のチームが3回雪ハネできる。目も当てられない、といった感じだ。しかしこの結果に悔いはない。というかこの数字は悔いとかそういう土俵に上がれてない。僕がいえるのは、「あー、楽しかった。」ただそれだけだ。そう、すごく楽しかったのだ。

雪ハネに限らず、北海道の冬のイベントの根底にあるのは「寒いのを楽しんでいこう」という、寒さに対する前向きなスタンスだ。寒さ=不快、という発想しかなかった僕にはかなりカルチャーショックだった。と同時に、そのポジティブな発想とバイタリティーあふれる姿は、ぜひ自分も見習いたいと思った。

国際雪ハネ選手権も来年は第10回だそうで、また違った趣向の企画も用意していきたいとのこと。腕に覚えのある方は、ぜひ参加してみてください。個人的には「豪雪の地・新潟からやってきた最強雪かき軍団」なんてのがいると盛り上がると思います。

国際雪ハネ選手権のホームページはこちら
 

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賞品を手に、ばんざーい!(参加賞)
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