好きな食べ物、うどん
好きな食べ物を分からないように料理に混ぜる。その「好きな食べ物」として私が最初に思いついたのはうどんだった。
ちかごろ千葉県産という珍しい乾麺を最近たくさんいただいたのだが、これがやたらに美味しくてすっかりうどんファンになってしまったのだ。
これを分からないように巧妙に何かに混ぜよう。
ニンジンが嫌いな人は、たとえすり下ろして入れても敏感に察するらしい。私は大好きなこのうどんを察することができるだろうか。
ライター住さんはニンジンが本気で苦手ということで知人間では有名だが、こっそりカレーに入れられ気づかずに食べた後入っていることを聞いたとき「怒った」そうだ。
食べたことを気づかないのに怒る。なんとなく、気持ちは分かる。
逆に考えると、好きな食べ物を気づかずに食べた場合は食べたことに気づかないのにやっぱりちょっと嬉しくなるのだろうか。
何に混ぜるか
何を混ぜるかは決まった。次は何に混ぜるか、だ。ニンジンだったらカレーやハンバーグの種に混ぜるのだろう。でも うどんは。
明らかに美味しくなくなるようなところには混ぜたくない。カレーにニンジンぐらいの自然さが欲しい。
そうだ
木は森の中に隠せ。炭水化物は炭水化物の中にに隠したらいいんじゃないか。
うどんの釜玉(釜揚げうどんに生卵を落として醤油で食べるあれ)が「うどん版玉子かけご飯」といわれるとおり、両者はかなり近い存在だ。
早速細かく切って混ぜてみた。
美味しいです
うどんは麺である。細長いことが身上だ。切ることで
“うどんというか小麦粉を水で練った美味しいもの”
になっちゃったらどうしよう。罪悪感と不安がよぎりながら混ぜたのだったが、食べたら美味しかった。
そう、美味しかったのだ、ただの白飯よりも! うどんの塩気が白飯に対してふりかけのような役割を果たしている。おおー。
さすが、好きな食べ物だ。混ぜた食べ物全体に相乗効果を及ぼすことが分かった。
では、もっともっと うどんが混ざっていることが分からないようにしたらどうだろう。
おお、まるで気づかないぞ
さきほどのうどん混ぜご飯に今度は納豆をかけてみた。食べてみる。
…(食べ中)…。
やりました! 全くうどんの味、食感を感じません! というのも、私に限ったことかもしれないが納豆かけご飯といとどうしてもかきこんでしまう。美味しすぎて好きすぎて、焦ってどんどん食べてしまうのだ。
うどんが入っていると気づく暇がなかった。
そういえば、うどんが入ってたんだよなあ。後で思い出すと……。変な気がした。なんだ、うどん入りご飯て。
わかったこと:
・好きなものをこっそり混ぜると、美味しさが増すことがある
・が、気づかずに食べると後で知ってなんだか変な気がする
甘い物はどうよ
続いてスイーツだったらどうだろう。
大好きなゆであずきを別のスイーツに混ぜてみることにした。
ココアクッキーにこっそりあんこを混ぜる
あんこを混ぜても分かりにくく、かつ味的に問題なさそうということで目をつけたのはココアクッキーだ。茶色はあんこの色を隠してくれるし、ココア単体では甘くないので混ぜても甘くなりすぎない。
クッキーの甘味担当という感じで分量も控えめに生地にあんこを混ぜてみた。
隠し味になってしまった
困った。すごく美味しいのだ。ココアの苦味にほのかに丸くほっこりした甘み。やや匂いの点でココアを小豆が邪魔してしまったか。
しかしなんだ、これじゃあ こっそり入れてほくそ笑むはずの あんこが“隠し味”みたいじゃないか。うっかり新しいお菓子開発みたいになってしまった。
わかったこと:
・なかなか完全に味を消して混ぜるのはむずかしい
・美味しくなってしまい、隠し味みたいだ
好きなものは、美味しい
「好きな食べ物をこっそり混ぜて食べる」とどうなるか。それが分かったというよりは「単純に何かを何かに混ぜた結果どうなるか」ということばかりが結果として残った。
せめて分かったのは、好きな食べ物は大抵美味しく食べられるといういことだ。うどんも、あんこも、好きだからどこに入っていても美味しく感じる。
それにしても嫌いなものをこっそり食べさせられるよりはなんて幸せなんだろう。
知らない間に自分のために誰かがお祭りを用意してくれたみたい、そうだ、サプライズパーティーみたいなのかもしれないです。