レトロニュースものの寝落ち度は、アルコールで言えばビールレベル
レトロニュースもの
まずは裏モノ睡眠BGMの入門編ともいえるのが昭和のニュース映画。
ニュースといっても事件や事故などの物騒なものではなく、消えゆくリヤカーとか、力道山ごっごは危ないからやめろとだのというような昔のほっこりニュースがベターだ。
あまりにもどうでもいい、自分に全く関係のないニュースをニュース映画特有の、機械的なナレーションに耳を傾けていると、いつのまにか寝落ちしてしまうのである。
子役もの
次に紹介するのは子役もの。子供むけのこれらの作品は、子供を寝かしつけるときに絵本を読み聞かせるように、観ているうちに大人もたわいもなく眠ってしまうのである。
その中からまずは、児童文学の「長くつ下のピッピ」の実写版映画を紹介しよう。世界一強い女の子ピッピと、隣に住む同年代の兄妹とのはちゃめちゃだがハッピーな物語。主人公のピッピの吹き替えを岸田今日子が担当しているのが最高。
岸田今日子の声は睡眠導入にピッタリなのだ。
つづいては、ひとに話すとだいたいエマニエル坊やの話をしていると勘違いされて困ってしまうことで有名なシチュエーションコメディ「アーノルド坊やは人気者」。
「アーノルド坊やって、このとき50歳くらいなんだよね?」
とか根も葉もないデマを言われることでもおなじみ。
「50歳な訳ないだろ!」「冗談顔だけにしろよ!」
とアーノルドの決め台詞のひとつも言いたくなる。
懐かしく、ノスタルジーの中で眠りに落ちることができる。
子役ものの寝落ち度は、アルコールで言えば焼酎レベル。
紀行もの
つづいては、旅。紀行もののご紹介。
石坂浩二のナレーションと、喜多郎の音楽で最後まで観ていられるものはおらず、放映当時から観ながら眠ってしまうものが続出。
高視聴率番組だが、後半部分を観た者はいないとまことしやかにささやかれている。ささやいているのは俺だが。
おなじくNHK作品から新日本紀行。古い日本の風景を、ちょうどいい粗さの画質で見せてくれる作品たち。
オープニングテーマであくび連発!
中でも「浪華芸人横丁」という、昔、大阪の下町にあった70人以上の芸人が集まって住む町の風景がお勧め。往年の漫才師「平和ラッパ・日佐丸」の平和ラッパが散髪にくる風景などを観ながら眠ろう!
紀行ものの寝落ち度は、アルコールで言えばウイスキーレベル。
日本アニメ創成期もの
日本のアートアニメ作品たち。これがもう睡眠導入にはヤバいくらいの効力を発揮する。
そんでとにかく可愛い。
その中から今回は大藤信朗監督作品、「村祭」をご紹介。
とにかく最高!何も言わずにまずは観てみて!
日本アニメ創成期ものの寝落ち度は、アルコールで言えばウォッカレベル。
名刹もの
お寺の建築や仏像の説明を聞かされて目がギンギンになるものもいない。むしろ眠くなる一方。そこで発見したのがお寺もの映像たち。
名刹もののナレーションはひときわ静かである。決して生島ヒロシが採用されるようなことがないところもいい。
ナレーションが少ないのがいいということは既に述べたが、中でもとびきりのナレーションとBGMが少ないのが「NHK特集 永平寺」。
朝の4:30に「振鈴」という鈴をもって、走りながら修行僧たちに起床を告げる音を聞いて「ああ、修行僧たちはもう起床の時間か。でも俺はまだ起きなくてもいいもんね」と心が落ち着いて眠りにつくのである。
つづいては、「極める~日本の美と心~」だ。
「極める」は、奈良岡朋子のナレーションがとても穏やかで、安堵の境地に達するのである。
名刹ものの寝落ち度は、笑点メンバーでいえば小遊三レベル。
語り芸もの
語り芸といっても落語で眠れるうちはまだまだである。落語は意味がわかり、かつ面白く聴いていて笑ってしまうからである。しかし、私が紹介したいのは聴いても意味がわからないため、聴いているうちに訳の分からないことを考え、いつのまにやら夢の世界にはいっていくものである。
琵琶法師はなにも昔話の世界だけのものではない。平成までご存命であられた琵琶法師、山鹿良之氏のたっぷり3時間あまりの収録時間で「今日は昼寝しちゃったし、眠るのに時間がかかりそうだな」というときにも頼りになる作品。
お次は今でも大人気の漫才の原型、萬歳である。面白くはない。というか、そもそも何を言っているのかわからん。しかし、お祝いの芸であるのでなんだかおめでたいことを言っているのはわかり、多幸感の中で眠りに落ちることができる。
語り芸ものの寝落ち度は、好きな科目を聞かれて道徳と答える人レベル。
小沢昭一もの
私のアイドル、小沢昭一ものである。
矢沢永吉がE.YAZAWAなら、小沢昭一はS.OZAWAと言いたくなる。
S.OZAWAタオルがあったら買う!2,500円までなら。
小沢昭一といえば、ご存知「小沢昭一の小沢昭一的こころ」。
小沢さんは、近所の話の分かる爺さんといった感じで、聴いていると彼の包容力につつまれるようにして寝落ちできる。
そんな最高な小沢昭一のナレーションと、語り芸もののハイブリットがドキュメント音源「日本の放浪芸」シリーズである。小沢昭一氏が、昭和40年代に、すでに滅びつつあった主に路上で行われる語り芸、僧侶による説教、大道芸などなどを自らの足でテープレコーダー片手に集めた音源集。小沢昭一のナビゲート音声付き。
シリーズ合計CD19枚!安心の19時間!
とはいえ、聴いているうちにかならず眠ってしまうので、私はこのCDを1枚目ですら最後まで聞き通したことはないですが。
小沢昭一ものの寝落ち度は、金八シリーズでいえば仙八先生レベル。
時間がかかる体温計
最後にご紹介するのがコチラ。
裏モノ睡眠BGMの王者、時間のかかる体温計である。
脇に挟んで10分である。
なにがって、温度を計るのにかかる時間がである。
今どき瞬時に測れるものが多いなかで、この時間がかかるところが嬉しい。
脇に体温系を挟んで、測り終えたあとに小さな音で「…ピピピ…」となる。
この時間とアラーム音が裏モノ睡眠BGM界では最強。
眠るまで何度も体温計を脇に挟んで測る。
横になりながら目を閉じてまだか、まだかと思っているうちに寝落ちする。
時間のかかる体温計の寝落ち度は、なるほど・ザ・ワールドのレポーターでいえば、ひょうきん由美レベル。
退屈は素敵だ
言ってみれば今回ご紹介したものたちは退屈なものばかりである。
しかし、これらを聞きながら目をつぶっていると、寝ているのか起きているのか判然としない状態になって、無意識に足がビクンビクン動くのが分かってとても気持ちがいい。
そういった意味で、退屈は素敵なのだ。