シンプルなクレープが月餅さんの手に
しばらくして月餅さんの注文したシュガーバタークレープが出来上がってきた。
月餅さんが発した第一声、なんだったと思いますか。
正解は「薄っす!!」でした。
いつも食べてる盛り盛りのクレープではなく、一番シンプルなシュガーバターをお願いしたのだ、そりゃあそうなるだろう。
それでもみごと注文できたじゃないですか。もしかしたらおかずクレープみたいに食べてみたらものすごい美味しいパターンかもよ。
途中まで悲しい顔でシンプルクレープを頬張っていた月餅さんだったが、食べ終えた時には笑顔が戻っていた。よかった、どうしようかと思ってました。どうです?美味しかったですか。
月餅さんいわく、このクレープには最後の三角のところに本質が詰まっているのだとか。要するに熱で溶けたシュガーバターが最後の三角部分に溜まっていたんだろう。救いがあってよかったね!とみんなで拍手をした。
それでどうでしょう月餅さん、満足いきましたか?
月餅「はい。でも念のためにもう一店行ってもいいですか」
え?
月餅「美味しかったんですが、この美味しさが正解なのかどうか、確かめたいんです」
わかりました、こうなったら徹底的に行こうじゃないですか。
ナチュラルクレープ上野店
月餅さんが次に選んだのはナチュラルクレープというお店。なんでも生地にこだわりのあるお店らしく、シュガーバターは食べたことがないが、他はすばらしく美味しいのだとか。
シンプルなクレープは生地が命。クリームやアイスでごまかせない分、お店によって美味しさに差が出る、はず。月餅さんはクレープ屋さん始めた方がいいと思う。
こちらのクレープ屋さんでは、生地を溶くのに牛乳か豆乳かを選ぶことができた。
月餅さんの注文したシンプルクレープを作る横で別のスタッフさんがイチゴを洗って拭いていた。それを見た月餅さんが「サービスで私のクレープに入れてくれるのかもしれないです」と言っていた。
最初に行ったクレープ屋さんでの葛藤を過去のものとした月餅さん、今回はいっさい迷わずにシンプルクレープを注文していた。かっこいいぞ月餅さん、憧れるぞ月餅さん。
シンプルクレープを受け取った月餅さんは、その薄さをも完全に理解した顔だった。悟りを開いたのかもしれない。
シンプルクレープは驚きの薄さだったが、月餅さんがいいというんだからいいんだろう。どうですか、もうクリーム盛り盛りのクレープに未練はないですか。
今回は一口目から笑顔だ。クリームへの未練を完全に断ち切った人の顔である。
シンプルはかっこいい
シンプルなクレープは生地の美味しさこそが重要なのだが、加えてバターとシュガーのバランスなんかも大切になってくるのだという。さらにここのクレープはてんさい糖というなんだかわからんが美味しそうな砂糖を使っているらしく、つまりは大人の美味しさなのだろう。
こういう絶妙なバランスの上に成り立つ美味しさを追い求めるという点で、月餅さんの言うようにシンプルなクレープを注文する人にはカッコよさがついて回るということなのかもしれない。
美味しいものにはこだわりたい、という人生の大きな目的みたいなものを教えてもらった一日でした。