特集 2020年9月11日

すぐ隣にある謎、首都高速を案内してもらう

首都高は隣にある異界だ。すぐそばにあるのに車を持ってないと絶対に行くことができない。

高速バスでたまに乗ると、こんどは自分がどこにいるのかさっぱり分からない。下道と世界が違いすぎるし、ジャンクションとかいう謎の分岐がいっぱいあって怖い。ふだんから車に乗る人に案内してもらいました。


車に乗らないぼくにとって、首都高速はたまに上のほうにあって街を分断する謎の施設だ。たとえば池袋は、駅からみて首都高より手前と奥で街が別れていると感じる。

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上野や秋葉原も、首都高の手前と奥では世界が違う。一方、六本木では街の中心に首都高がある。

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六本木のクラブで踊らない人生でいいのか」より 

鉄道で移動するぼくにとって、首都高はそういうふうに東京のいろんな街に断片的に出現する謎の施設だ。

車に乗る人に案内してもらう

そこで車を持つ知り合いに首都高の案内をお願いした。コストコは会員じゃないと入れないという話があるが、首都高も同じだ。

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磯部さん(左)と、えぬさん(右)

編集者の磯部さんと、道路に詳しいえぬさんだ。二人で道路に関する本を出したりもしている。快く案内を引き受けてくれた。

 

首都高は範囲が広い。今回は真ん中の輪っかの部分、都心環状線だけを案内してもらうことにした。具体的にはこんなルートになっている。

 

皇居を囲む、まさに東京の中心だ。いったいどんなことになっているんだろうか。

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磯部さんが運転してくれました

 

謎その1: まず首都高の入口が謎

車は新宿から出発した。ここからが問題なのだが、鉄道の入口である駅と違って、首都高速の入口がどこにあるかは、あまり知られてないんじゃないだろうか。

話を大きくしてごめんなさい。ぼくは知りませんでした。

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しばらく行くと都庁の裏を曲がったあたりに「有料道路」と赤く書かれた看板があった。こんなところにあったのか。

磯部さん「赤で書いてあるのは珍しいですよねー」
えぬさん「ここまで強調してあるのはあんまりないですね」

(以下、敬称略)

二人は平然としているが、ぼくにとってはすでに異界の入口だ。どきどきする。

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坂を登り始める。首都高速の入口だ。

磯部「この先が料金所です。ETC専用と現金を払うレーンに分かれてます。」

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磯部「ETCと現金は料金が違います。ETCのほうが安いです」
えぬ「現金だと結構しますよね!」

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合 流 注 意

磯部「合流が結構厳しいんですよ。見通しがすごく悪い」

すでに知らない世界だ。向こうによく見えない車線があって、そこと合流するということか。こわい。

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この短区間で合流する

どきどきしながら本線を振り返るが、とくに車は来ておらず無事合流できた。しかしここからが首都高の謎の始まりだ。

謎その2: どこにいるのか分からない

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たまに首都高を走っていて感動するのは、自分がどこにいるのかさっぱり分からないことだ。それが新鮮で楽しい。

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遠くに高い建物が見えてると、ぼんやりとどこらへんなのかが分かる。たとえばここは代々木かな? と思う。しかしそのぼんやり加減が、下の道を歩いているときの比じゃない。

下の道には住所を書いた看板などがしょっちゅうある。それは便利なのだが、いまいる場所が強制的に分かってしまうということでもある。それに比べて、この景色の匿名さはどうだ。

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道路と、建物の上のほうと、空しか見えない。どこにいるか分からないってすばらしい。

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謎その3: 都心環状線にどうやって入る?

いよいよ車は都心環状線に入る。

 

あらためて都心環状線の地図をみると、こんなふうだ。車は新宿線という路線を進んでおり、ここから三宅坂ジャンクションというところで都心環状線に合流する。もう分からない。

 

このへんだ。青が新宿線との合流部分。赤が都心環状線。

鉄道で考えると、西から中央線でやってきて、新宿駅で都心環状線である山手線に乗り換える、みたいなことだろうか。

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奥が三宅坂ジャンクションの入口のトンネル。左側の黒いビルはヤフーとかが入ってるビルだ。と自分で書いててもぜんぜんピンとこない。こんなところにトンネルあったっけ。

えぬ「昔ここ渋滞ポイントだったんだけどねー 笑」
磯部「ねー! 三宅坂はね」

仲良しなので聞いていて楽しい。

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中に入っていくと、ここが三宅坂ジャンクションの合流部だ。つまり、左側が都心環状線。ここに新宿線が右から合流していく。

えぬ「これがまた右側から合流するっていう、普通ないパターンなんですよね」

確かに高速道路はパーキングエリアにしたって左側から合流するものだ。右側はふつう追い越し車線だし。

ところで、こんなに道路の天井がアミアミになってるところがあるのかいなと思う。探したらここだった。

 

近くにあるのは憲政記念館のようだ。こんなところあったのか、と思うような場所を都心環状線は走っていく。

謎その4: 霞ヶ関の出口は二車線ある

三宅坂をすぎるとすぐ霞ヶ関だ。地理的に近いのは分かるのだが、どうつながってるのかいまいちぴんとこない。地下鉄の感覚と似ているかもしれない。

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えぬ「霞ヶ関の出口は、二車線で出るようになってないかな?」
磯部「あ、二車線ですね」

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たしかに二車線分ある。ふつう出口は一車線しかない。

えぬ「これはお偉いさんが来た時に警備用の車が並走できるようになんです」
磯部、三土「おーーー」

未知の世界の謎が少しづつ明らかになっていく。

謎その5: たまに二階建てになる

霞ヶ関を出たらまたすぐ谷町ジャンクションという場所に出た。六本木のあたりらしい。谷町というのは旧町名のようだ。風情があっていい。

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えぬ「ここは上下二階建てになってて、いま内回りなので二階部分です」
えぬ「外回りは一階部分になります。いま見えてますね」

たしかに奥に一階が見えている。横に場所が取れなかったということだろうか。内回りというのは山手線と同じで、反時計回りの向きだ。やはり都心環状線は鉄道でいうと山手線でいいのかもしれない。ジャンクションが乗り換え駅だ。

このあと親切に外回りも通ってくれたのだが、そのときの一階部分のようすがこれ。

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かっこいいい!

謎その6:東京タワーが見えたり見えなかったりする

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えぬ「このさき古川の上を行きます」

古川というのは渋谷川の下流の名前だ。東京タワーが見える一瞬だけ、自分がどこにいるのか何となく分かる。

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でもすぐ見えなくなる。

このあたり、東京タワーが見えたり見えなかったりするのはなんでかなと思っていたんだけど、理由がわかった。川がくねくね曲がっているから、首都高も同じように曲がって、それで視線が変わるからだ。

 

上のほうに東京タワーがある。地図を左から右に進むと、窓の左側に見える→見えない→見える、になって印象に残っているんだなと思った。

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謎その7:首都高の上に3階があることだってある

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えぬ「東京モノレールの下をくぐりまーす」

間もなく浜崎橋ジャンクションというところだ。たまに交通情報で名前を聞くところ。ここはJRの線路を超え、モノレールの下をくぐるというところだ。かっこいい。

首都高は街の二階にあたると思っているが、こうやってその上を三階が通っていることもある。

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「ゆりかもめをくぐりまーす」とえぬさん
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これは浜松町のあたりだ。竹下桟橋のあたりから浜松町の駅のほうまで伸びる、スカイウォークという歩行者用デッキだ。

なんと歩道橋が三階にあるとは。こんどはそのスカイウォークを歩いてみたい。利用は来年からとかだそうだ。

謎のその8: 川底を走る

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磯部「ここから川の中に入っていきまーす」
えぬ「昔の運河、楓(かえで)川だっけな」

ここから先は川を埋め立てて道にしたところを走る。と、一口にいうけど、すごいことしたなと思う。

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えぬ「川の中なので橋がかかっているんです」

これは采女(うねめ)橋。川を超えるための橋だったのが、道路を超える橋に転用されている。

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磯部「だからこういう邪魔な橋脚があるんです」

あー! たしかにこれ、同じ方向の車線とのあいだに作られた橋脚だ。そんなのふつうない。つまり道路の都合じゃなくて川の都合で作られた橋だからだ。

だから首都高のこのへんてたまにバスで通ると妙な、窮屈な感じだったんだ。なるほどおおお。いい話だ。

謎その9: 首都高のパーキングエリア

長くなったので、そろそろおしまいにして休憩しよう。

首都高にもパーキングエリア(以下PA)があるということは知っている。ただ、下からは全然見えないのでどこにあるのか謎だった。

ということで、代々木PAというところを案内していただいた。

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奥にあるのが代々木PA
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この建物!

こんな建物があって、車に乗る人はそれを知っていて、外からはほとんど分からないのだ。秘密の場所じゃないか。

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二階のカフェ。見晴らしがいい!

景色を見ながら「こういうパーキングって外側から入ってくるとこにしかないんです」とえぬさんが言う。「首都高ドライブMAP」を使って説明してくれた。

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「ここを見てください」
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代々木PA(上り)と書かれた赤い四角が、いまいるパーキングエリアだ。注目してほしいのは、反対の下り側には赤い四角がないことだ。

高速道路だったらふつう、上りと同じ場所に下りにもPAがある。でもここにはない。代々木だけじゃなくて、首都高だと上り方面にしかないPAが多いという。

えぬ「外側から来る人が、首都高に入る前に休憩するっていう場所なんですよ」
磯部「だから下り線にはない」

なるほどねー。

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これはPAの出口なんだけど、合流区間はこれしかない。だから前の車がつまっていて一旦停止してしまうと、時速0キロからたった数十メートルで周りの流れに合流しないといけない。

磯部「だから、わかってる運転手はPAの近くでは本線の左車線を走らなかったりします」

なるほど。いろんな優しさというか、作法があるんだなと思った。


首都高速道路は特別な「道路」だった


いままで遊園地の隣にいるような気分だった。アトラクションがあるのは見えてるんだけど、チケットがないので入れない。

首都高速はアトラクションだった。運転してもらったからまだ余裕があったけど、もし自分で運転したらもっとどきどきするだろう。

一方で、やっぱり道路なんだということにも感動した。下からはすごい構造物に見えるけど、上に乗っちゃうと結局は道路なんだ。その道路を支えるために、これだけのすごい構造がその下にあるんだということが逆に分かった。

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