シリーズ 出奔(しゅっぽん) 2023年11月13日

知らない町のアパートで過ごす~ハンモックがある一室~

面積のわりに小さな草花がひしめく植え込みがあって、 

そこにはもともとクスノキが植えられていたという。

看板には来年の3月にクスノキを補植するという文言。ここに?いまある小さな花はどうなるんだろうかと思った。

者使のりよ月

商店街について、月光仮面の歌を爆音で流しながら走るトラックを見かけた。

車のスピーカーからはデモやってんのかってくらい大きな音が流れているが、トラックには「石焼いも」やら「すいか」やら、政治性の一切ない文言が並んでいる。

夜に人がいるぞ

町にはご飯の美味しそうなお店がいくつもあって、いくつもあるもんだから店を決めかねて、ついにここに入るぞと意気込んで、やっぱりやめようときびすを返す、そんなことを何度も繰り返した。

知らない店に入るのがめっぽうこわい。たぶん、田舎での生活が長すぎて都会への順応力を失っているのだ。

おれはペイペイやってない。電車の乗り方も忘れた。Uber Eatsって事実なのか?

……おれは田舎のネズミだ!!!

逃げ込むようにスーパーに入った

結局、スーパーで食べたいものをいっぱい買って宿に帰った。期せずして普通の暮らしをしている。

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生ものばかり買っていた

アパートに戻って買ったものを広げてみたら生ものばかりだった。

鶏タタキ

 

寿司

 

馬刺し、うへへ

それにしても馬刺しが普通のスーパーで買えるのは頼もしい。割引されていたものなのにクセがまったくなくて美味しかった。 

なまにく、もにゅもにゅしててうまいな~

宮崎は鶏の生食文化が盛んなのでよく買って食べているが、もしここで本当に生活していたとしたら馬肉ばかり食べているに違いない。平行世界の小さな分岐である。 

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ハンモック気に入った

翌朝、早起きして町を散策しようと思ったがベッドの寝心地がよすぎてギリギリまで寝てしまった。かわりにハンモックと戯れよう。 

こうか?
う~~~ん

最後までしっくりこなくて面白かった。 

夢を見ているかのようだった

この旅はいったい何だったのだろうか。

知らない町を歩いてスーパーで買物をして寝た。ただそれだけなのに、ぐったりした。

都会でふつうに生活をしている別世界の自分をロールプレイングするつもりだったのだけど、都会が恐ろしすぎてロープレどころじゃなかったのだ。イメージと感情のちぐはぐさになんだか落ち込んでしまった。

夜でも人が出歩いていること、たくさんのお店、コンクリート、街灯、よっぱらい、おそろしい。いったい、おれの日頃の生活はなんなんだ?ここは同じ日本なのか?

前に聞いた話を思い出した。

「うちの子を福岡に連れていったら『お祭りでもないのに、なんでこんなに明るくて人がたくさんいるの?』って言うのよ!かわいくない?」

いま、その子の気持ちがなんとなく分かる。

かく言う自分も「マンション」ってドラマの中だけじゃなくて普通にあるものだったな、なんてウッカリ思ってしまったのだ。実家はマンションだったのにもかかわらず。

旅の間、なにが本当の自分か分からなくなって夢の中にいるようだった。不思議な体験をした。

…それはさておき、ハンモックは面白かったから生活に取り入れたい。びよんびよん。

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