運命線を書きかえてかなりスッキリしたのだが、落ち着いて考えてみると「運命線も、好きで私の手に生まれてきたわけじゃないよなぁ」と思えてきた。
これまでお世話にもなってきたし、ちょっとおとなげなかった気もする。ついカッとなって伸ばしたが、確かに社会人として姿勢は見直した方がいいなと思って反省した。
運命線、ごめんなさい。これからは惰性ではなくもっと前向きに過ごそうと思う。
昔から、生命線が短いのが怖かった。友だちと手相の話になって「生命線見せて〜」と言われるたびに「ハハハ〜」と笑いながら手をがっちりグーにしてごまかしてきた。
が、ふと「短いのが嫌なら伸ばせばいいだけなのでは?」ということに気がついた。
生命線を恐れているだけでは、生命線は延びないのだ。むしろこの恐怖をバネに、人は成長できるのではないか。
生命線の悩みをバネにしよう。そして、生命線を成長させよう!
まずは私の生命線を見て欲しい。
致命的に短いわけではないが、大往生はしないだろうぐらいの長さである。リアリティがある長さで本当に怖い。
あまりにも怖いので、「手相」という存在を知った小学生ぐらいから今まで、できるだけ手相のことは考えないようにして生きてきた。逃げてきたと言ってもいい。
しかし、最近たまたま知ったのだが、プロの占い師によれば、なんと生命線は「短ければペンで伸ばせばいい」らしいのだ。
何十年も手のシワから逃げてきた私としては嬉しい話だが、ペンで本当にいいのだろうか。
パソコンのキーボードも汚れるし、知らないうちに顔や腕にもつきそうだし、だいたい見た目が不自然だ。どうせやるなら、もっときっちり自然な形で生命線を伸ばしたい。
そうとなったらこれしかない。
最近はハロウィンのおかげで、特殊メイクの道具たちが百均でざくざく売られている。
この道具たちを使って、何十年も悩みの原因になってきた自分の生命線に立ち向かいたい。
生命線を伸ばすために、必要な道具がこれだ。
それから忘れてはいけないのがこれである。
本当はコスメ用のスパチュラ(ヘラ)がいいらしいが、そんないいものは家になかった。
しかたないので、一番形が似ている「牡蠣の貝殻をあけるための棒」を洗って代用する。
生命線の土台ができたら、あとはシワを書き込んでいく。
最初は謙虚に「せめて95歳ぐらいで...」と思っていたが、そんな弱腰の姿勢では寿命が伸ばせないと思い、伸ばせるかぎり伸ばしてみた。
4世紀分ぐらいは生き残れる生命線ができてしまった。
ここまで長いと、私が死ぬ頃には南極の氷はすべて溶けているだろうし、人類はひとり残らず火星に移住しているだろうし、私は百年飼ってるリクガメとかを撫でながら「少し...永く生きすぎたわね...」と窓際でつぶやく謎の精霊みたいになってるはずだ。
悩みのタネだった生命線が、300円でぐんぐん伸びて満足した。が、今回はこれで終わりではない。
生命線を伸ばしたからには、寿命が延びたことも証明しないとダメだろう。
「寿命が延びたかどうかを証明する」という一休さんみたいなトンチ問題に立ち向かうべく、この秘密兵器をひっぱり出した。
驚くなかれ、これはただの体重計ではなくて「身体年齢」が測れるタイプの体重計だ。
これを使って、生命線を伸ばす前と伸ばした後で「身体年齢」が変わるかどうかをチェックするという作戦だ。
この体重計に乗り、アプリで身体年齢を確認すると......
生命線をぐんぐんヒジまで伸ばしても、寿命の方は別にぐんぐん延びてなかった。
でも、これからの人生でじわじわ効果があるかもしれない。ぜひ、末永く結果を見守っていただきたい。
生命線はさすがにスケールが大きすぎたので、他のスケールが小さい手相で試してみることにした。
手相には特に縁起がいいとされている線がいくつかあるのだが、私が特に注目したのがこれだ。
ますかけ線は、手のひらを横切る線である。
誰にでもあるわけではなく、ますかけ線を持っている人は「忍耐強く根気を持ってものごとに取り組める」らしい。
まさに、いまの私に求められている線だ。
なぜなら、私は長らく放置していたこれをそろそろやらないといけないからである。
IT革命によって生み出された、現代社会の忍耐強さと根気強さの修練ともいえる作業、「Windowsのアップデート」。
3年ぐらい使っていなかった昔のパソコンが急に必要になったのだが、ここまで長い間使っていないと、おそらく開いた瞬間にアップデートを求められる。
さらに、アップデートが終わったところで、ソフトのログイン・アプリの削除・デバイスの認証・過去の黒歴史など、あらゆるストレステストが波状攻撃で私を襲ってくるだろう。
こんな強敵とまるごしで闘うわけにはいかない。いまの私には、どうしてもますかけ線が必要なのだ。
さすが長く使っていた昔のパソコンだけあって、アップデートどころか「パソコンがなかなか立ち上がらない」という事態が発生。
アップデート以前に起動もない状況に、思わず自分のますかけ線を見つめてしまう。
最終的に起動はギリギリできたものの、はるか昔のパソコンすぎて、パスワードがまるで思い出せなかった(6個ぐらい試して全部ハズレだった)
ますかけ線があろうとなかろうと、パソコンのアップデートはとにかく全部つらいのだ。
これを読んでいる皆さん、この記事を読んだら、後回しにせずいますぐ溜まったアップデートで片付けよう!!!
今回、生命線を伸ばすため手相について調べていたら、生命線よりショックな線を見つけてしまった。
運命線というもので、これが手のひらの真ん中あたりで細くなっている人は、30代で伸び悩むらしい。
「伸び悩む」と言われただけならヘコむだけで終わるのだが、伸び悩みの原因として「惰性で過ごしており社会人としての基本的な姿勢に問題がある」とまで書かれていた。
厳しすぎる気もするが、確かに最近は家で働いているから朝は遅いし、オンラインミーティングのときは下がパジャマのときもある。
正直、運命線が細くなっている心当たりはあるのだが、ここでへこたれてはいけない。
そもそも(生命線についても思っていたが)なぜ私が手相に振り回されないといけないのか?
一度ここで、「手」と「私」の主従関係を整理したい。
そもそも運命線とは手である。手とは使われるもののはずだ。なぜ手が私のことを決めるのか。私が手のことを決めるべきではないのか。
私が運命線を気にしてゆずるのはおかしい!運命線の方が私を気にしてゆずるべきだ!
運命線なんてただのシワだ。つきつめればただの皮だ。
自分に都合がいいように運命線を伸ばしまくったら、気持ちがぐんと軽くなった。
それだけじゃなくて、他の都合が悪い線を見ても「つべこべいうなら伸ばしてやるぞ」という気持ちになり、すごく前向きに自分の手を見ることができた。
運命線を書きかえてかなりスッキリしたのだが、落ち着いて考えてみると「運命線も、好きで私の手に生まれてきたわけじゃないよなぁ」と思えてきた。
これまでお世話にもなってきたし、ちょっとおとなげなかった気もする。ついカッとなって伸ばしたが、確かに社会人として姿勢は見直した方がいいなと思って反省した。
運命線、ごめんなさい。これからは惰性ではなくもっと前向きに過ごそうと思う。
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