サンコーチョとの出会い
「サンコーチョ」は、中南米のカリブ海沿岸の国で多く食べられている伝統的なスープである。
どんな味がするのかというと、意外にもスパイシーさや脂っこさとは無縁の、出汁のうまみが爆発しているスープなのである。日本人が大好きなやつだ。
コロンビアでは、トウモロコシの粉でできた薄いパン「アレパ」やお米と一緒にサンコーチョを食べる。出汁のうまみと主食の組み合わせって、日本人にとっては「お味噌汁とご飯」みたいで、かなり馴染みがある味わいだ。
コロンビアと日本はお互い「地球の反対側にある国」というイメージなので、みんな日本人に興味津々だった。いろんな人から、公用語のスペイン語で「コロンビアの何が好き?」と聞かれた。
その度に「メ グスタ サンコーチョ(サンコーチョが好きです)」と答えると爆笑された。滞在中は完全に持ちネタにしていて、初対面の人にほぼ毎回言っていた。
例えるなら、日本を訪れているブラジル人が「お味噌汁大好き!」って言ってるようなもんだからそりゃウケるだろう。
すっかりサンコーチョLOVE人間として認識され、一緒にレストランに行くと「ほら!サンコーチョあるよ!」とみんなが教えてくれた。グラシアス!
サンコーチョの魅力は味もさることながら、名前の語感も良い。サンコーチョ。
スープのサンコーチョが好きすぎて、埼玉県の川越市にある「三光町(さんこうちょう)」にまで想いを馳せるようになってしまった。
三光町でサンコーチョを食べたら、完璧なサンコーチョLOVE人間になれるだろう。
というわけで、三光町でサンコーチョを食べることにします。
三光町にコロンビア料理店があったら良かったのですが、ありませんでした。当たり前だ。
なので、作って持っていきます。
日本でサンコーチョを作る
コロンビアまでは飛行機で片道27時間くらいかかりますが、サンコーチョは日本のスーパーに売っている具材で作れます。
【日本で作るサンコーチョのざっくり分量】
・とうもろこし… 1本 4等分くらいの輪切り
・骨付き鶏モモ肉… 1枚 出汁が出るように骨の端っこを切る
・玉ねぎ… 1個 みじん切り
・ジャガイモ… 中2個 四つ切り
・パクチー… 2〜3本
・ライム… あればあるだけ良い
・おろしニンニク… チューブのものを2センチくらい
・クミン粉末… ひとつまみ
・コリアンダー粉末… ひとつまみ
・コンソメキューブ… 1個
コロンビアでは、サンコーチョに入れるお芋は「Yuca(ジュカ)」が定番。
ジュカは日本だとタピオカの原料になるキャッサバのこと。ホクホクしつつも繊維っぽさがあり、レンコンとサツマイモの中間みたいな食感でとても美味しい。
現地ではフライにしてステーキの付け合わせにしたり、ふかして食べたりと大活躍。そしてジュカはサンコーチョに入っている時が最高に輝く具材なのだが、日本ではなかなか手に入らないので、今回はジャガイモで代用。里芋でもOKです。
あと、日本で買うのが困難な青いバナナ「Platano(プラタノ)」もサンコーチョに欠かせない具材で、バナナなのにポテトっぽい淡白さとほんのりとした甘味が……ああ!サンコーチョの具材の話だけで止まらなくなる。こんなことではまた「日本人はマジで食い物の話が大好きなんだな(スペイン語)」と言われてしまう。そうです。
気を取り直して作っていきましょう。
玉ねぎが透き通って香りが立ってきたら、お水1リットルと鶏肉、トウモロコシ、ジャガイモを入れて煮ます。シンプル。
グツグツしてきたらコリアンダーとクミンの粉末をパッパッと入れましょう。
この状態で30分くらい煮込むと……
こんな感じになればスープの完成です。
輪切りにしたトウモロコシの芯から出汁が出て、それが鶏ベースのうまみと絶妙にマッチするのがサンコーチョの味わい。
ですが、容赦無くコンソメキューブ1個を入れちゃいます。
塩を足したいなーと思ったら塩を足しても良いでしょう。南米の料理はそのおおらかさが最大の魅力です。
あとは器に盛り付けてライムを大量にかけてパクチーの葉っぱを散らせば、サンコーチョの完成!
しかし、私が三光町に行くのは明日なので、この日は粗熱をとって鍋ごと冷蔵庫に入れて寝かせます。早く食べたい。
いざ、三光町へ
翌日、サンコーチョを温め直し、三光町に行く準備をします。
ここで重要なのは、ちゃんとサンコーチョになっているか。そうでなければ「三光町で食べるサンコーチョ」が成立しない。しょうもないダジャレだが私は本気だ。
ということでコロンビア出身の方に味見してもらいました。
無事サンコーチョになっていることが確認できました。
ちなみに日本でサンコーチョを食べるのはかなり違和感というか、不思議な気持ちになったそうです。
彼には三光町にも同行してもらいます。サンコーチョで買収成功。
温め直したサンコーチョはスープジャーに詰めて、いざ出発!
電車を乗り継いで川越市駅まで行きます。
私が着ているのはコロンビアの友達からもらったTシャツ。サッカーコロンビア代表100周年を記念して、約80年前のレトロなユニフォームを復刻したものらしい。
3色ボーダーはコロンビアの国旗カラーです。かわいい!
ちなみにかぶっているのは、「Sombrero vueltiao(ソンブレロ・ボルティアオ)」というコロンビアの伝統的な帽子。
この日初めてかぶって出かけたのだが、大きなつばが日除けになってめちゃくちゃ涼しく、撮影用の衣装というより実用品としてかなり役に立った。猛暑の日本では今後必需品となるかもしれない。

