特集 2022年12月20日

先割れスプーンをスプーンに戻す

先割れスプーンをスプーンに戻したやつ

スプーンとしてもフォークとしても使える先割れスプーン。しかしこれが絶妙にちょっとだけ不便な時がある。

そんな時はどうしよう。先割れスプーンを2本用意して、それぞれスプーンとフォークに戻してあげよう。


 

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:まんが・土曜のお便り 〜知らない食べ方しかないフルコース


先割れスプーン、ちょっとだけ不便な場面がある

先割れスプーン。スプーンの先が割れていてフォークとしても使える食器である。スプーンとフォークの掛け合わせなので『スポーク』とも呼ばれているらしい。

こういう形のもの。顔描きたくなる
例えばカツカレーを食べる時
カレーをスプーンの部分ですくいつつ、カツを刺して食べられるので便利だ

しかしこれが万能かというと、ちょっと違うな、と思う場面もある。

例えばそう、パスタが巻きづらかったりする

先にちょいと引っ掛けて小さな口でちゅるちゅる食べることになる。よく噛んで食べるようになるので健康にはいいのかもしれない。 

スプーンの方にも思うところがある

問題なくすくえるのだけど、口に入れた時ほんの少し緊張感があるのだ。とがっているから。

スプーンとして使っているのに、とんがった部分で口の中を傷つけないように気をつけなければいけない。

ポセイドンの持っている鉾みたいな先割れスプーンに出会ってしまうと、もう明らかに食べ物の味が違う。緊張で。 

こういうやつ。武器っぽすぎる。舌が一番鋭利な部分に引っ掛かる想像が始まると嫌なイメージが止まらなくなる

つまり、スプーンもフォークも、使えはするのだけどちょっとだけ不便なのだ。

ならばどうしよう。先割れスプーンを2本用意して、それぞれスプーンとフォークに戻したらいいんじゃないか。 

先割れスプーンをフォークに戻す

進化さえすれば世界が良くなっていくという価値観は必ずしも正しくはないと思う。元に戻す営みから気がつくこともあるだろう。

これはそういう試みである。

リューターという工具で削ってみる
フォーク部分の溝を深くして、パスタを巻けるように。そしてカレーがこぼれ落ちるように

ケンタウロスの人の部分を馬に近づけている気分だ。 

上半身をなるべく馬みたいに…

馬の部分を人にする、でももちろんいい。とにかく複雑なものをシンプルにしていく爽快さがある。

少しずつ彫っていき、2時間後。 

おぉ…

なんだろう、まだケンタウロスっぽい。シルエットがスプーンだからだろうか。 

両サイドを落としてみた

これはフォークだ。ケンタウロスが馬になった。ヒヒーンである。弓も引けない。ただ走るのはものすごく早い。視界も横に広い。

使ってみた感想は最後にまとめて紹介します。 

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先割れスプーンをスプーンに戻す

さあ、次は先割れスプーンの割れた部分を埋めてスプーンに戻そう。

おゆまるというプラスチック粘土を用意した

アクセサリーなどが作れる、お湯で柔らかくなる粘土。成分を調べて、自分が口に含む分には大丈夫と判断して使用しました。

先割れスプーンをスプーンに戻したいという方は、改めて素材の安全性を確かめた上で使用してください。 

おゆまるを柔らかくしたら、先割れスプーンの溝に押し込む
おゆまるが冷えて固まってきたらカッターで要らない部分を削る
できた!

きれいにできて嬉しい。パズルの最後のピースを埋めるような気持ち良さがあった。

スプーンの美しい曲線が戻ってきて、やっぱりこの形だよ、と思った。 

使ってみよう 

左から先割れスプーン、先割れスプーンをスプーンに戻したやつ、先割れスプーンをフォークに戻したやつ
まずフォーク(に戻したやつ)から。しっかり巻けて頼もしい
やはり一口が望み通りの量にできると満足感が高い。つまりおいしい
次にスプーン(に戻したやつ)でカレー食べる。ああ安心だ

とがった部分がない。口に入れた食器、どこをとっても丸みがある。こちらも恐怖心がなくなったことでおいしく感じる。 

余談だが上の写真と更にその上の写真、表情や姿勢が全く同じで食べ物だけ違うの不気味ですね。

量産したくなった

先割れスプーンをスプーンとフォークに戻すことで、満足感と安心感を得た。暮らしの中で得られる『感』の中でかなり大事な二つではないだろうか。

この二つがあればもう何も怖くないわけだが、もう一つ気が付いたことがあった。

012.jpg
先割れスプーンの隙間を埋める作業が楽しい、ということだ
楽しいので量産した

使い勝手を確かめたあと、あの楽しさが忘れられなくて目的もなく夢中で作り続けた。

緩衝材のプチプチをつぶすのと似た気分だ。先割れスプーンの割れた部分を埋めて、きれいな平面に直していく作業がやめられない。

途中、子どもが来て埋めた部分を剥がして先割れスプーンに戻した

うん、剥がしたくなる衝動も分かる。埋めたくなる衝動もあれば、それを見て剥がしたくなる衝動も同じ熱量で生まれる。

衝動の永久機関の誕生である。

しかし大人は深夜に起き出して作業をすることができる。ひたすら埋めて、30個スプーンを作ったところでベッドに戻って寝た。 


翌朝

子どもが朝起きて、スプーン(に戻したもの)の束を見つけて「これ全部作ったの?」「よくできてるねえ」と感心してくれた。もう粘土の部分を剥がそうとはしなかった。

数による説得力ってある。

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