特集 2026年1月27日

うまみ大爆発!まるで"サケの生ハム”標津でサケの山漬け作り

小野瀬さんからのDM、サケが立つまで

標津から帰り、東京砂漠で日常を送っている間に山漬けを進める小野瀬さんから写真とDMが送られてくる。 

6日目、水分が減り、かなりカピカピしてきたが「まだまだ」とのこと。

月が変わって11月2日。塩漬けして8日目、ついにサケが立った。

「約4kgのサケが約2.6kgぐらいになります。内臓の分差し引いても4割近く目減りします」(小野瀬さん)
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塩を抜く 

塩まみれになっているサケをここから4〜5日ほど、水につけて塩抜きする。

塩抜きはかなり重要で、うまくやらないとせっかくの山漬けの風味を損ねてしまう。

 「山漬けで何が一番失敗しやすいって、ここで塩を抜きすぎてぼんやりした味になっちゃうんですね」

そんななのでただつけておくだけではない。細かいケアが入る。

「3日全身をつけたら4日、5日目は水を減らして、よく塩が回っているハラス(お腹の部分)を重点的に水抜きします。全部一緒にすると身の塩が抜けすぎちゃうから」

ハラスだけ塩抜き継続。

 

小野瀬さんから添えられたメッセージに「いいね」する私と西尾さん。
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 干してさらに燻す!

11月6日、小野瀬さんから画像が送られてきた。

「水をなめてみたらいい具合だったのと、適度な風が吹いて干し頃だったので1日早く干しました」

ウワーもうだいぶうまそう。

7日ほど塩漬け→5日ほど塩抜き→5日ほど風干し、とおおよその段取りは決まっているが、気温・天候やつかり具合などを見ながら柔軟に対応していくのだ。

「最後はもう勘だね」(小野瀬さん)

おうちの庭でぶらさがるサケ。

あとは完成を待つのみかと思いきや、小野瀬さんからDMは続いた。

これは...くんせい!

 

これを東京で見ている私の気持ち(すぐ標津行きたい)

 「家で作る山漬けは嗜好品」とは小野瀬さんの言葉だが、まさに嗜好大爆発である。
保存食としての山漬けは塩蔵までの状態で出荷されていた。さらにうまみを増すために風干しされるようになり、今ではこれが山漬けとして売られていることが多いが、ここからは小野瀬さんの「おれの山漬け」だ。 

しかも、日々スモークチップを変えていぶすというのだ。

 

即座にハートをつける私と西尾さん。

 

そしてその様子が送られてきた。だんだん色づくサケ、たまらん。

 11月9日、漬け始めから約2週間後、小野瀬さんから
「完成しました」とDMが来た。
私は11月15日の飛行機で標津へむかった。

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サケの生ハムじゃん!

約2週間ぶりに訪れた標津はかなり寒くなっていた。

野付半島ではシカがけんかしていた。

 午前中は海に出ていた小野瀬さんを(おつかれさまです)午後にたずねた。庭の干し場にはあのサケがぶらさがっていた。

会いたかったよ!

 すでに完成し、冷凍してあったのだが、小野瀬さんが吊るしの状態を再現してくれたのだ。

「こういうふうに外で風干しするでしょ。だから寒くなってこないとハエがたかっちゃうんですよ」

ハエどころかクマも狙いそうだ。
寒くなって干すということはつまり寒いということなのでお宅におじゃましてじっくり見せてもらった。

上が燻製版、下が風干しのみ版。

燻製からはスモーキーな芳香が、そうでないサケからは魚本来のうまみが強く香ってくる。
ビジュアルもすごい。波立った皮の陰影の質感を、にじみ出た脂の光沢が際立たせている。荘厳で美しい。そりゃ高橋由一も描かずにいられないだろう。

高橋由一は教科書に載っているサケの絵で有名な西洋画家です。

 「干して、どこまでいったら完成かっていう目安になるのが脂なんですよ。表面にじわりと出てきたらもう完成だなっていうね」

飴色の体にほのかに脂のつや感がある。

 「基本は輪切りにして焼いて食べます。ちょっとやってみようか」

ざん!と一刀両断。中も美しい。
「持って帰って食べてみてください」わーい。

「(寄生虫対策で)冷凍もしてあるので、薄切りにすれば生ハムみたいに食べられますよ」

うんま!まさにサケの生ハム!

 あれだけの塩に漬けたので相当塩っからいかと思いきやそんなことはなく、心地よいしょっぱみだ。塩抜きが絶妙なのだろう。しっとりとした肉にはうまみが濃縮し、上質な生ハムのようだ。

「燻製してないほうは切ったのをパックしたのがあるから」といただいたのが冒頭に出た「輪切りの〜わたし〜」である。
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茶漬け最強では!?

宿泊していた野付半島の民泊「ポンノウシテラス」で燻製山漬けを調理してもらった。 

生ハム風薄切りに......
焼き!

いずれも絶品だったが中でも開いた瞳孔が戻らなくなるほど感動したのが茶漬けである。

これはたまらん!

さぐっとほぐして口に含むと山漬けの濃厚な旨みと塩味がだし汁とごはんに影響を与えて絶妙かつ深遠な味わい。山漬けの最適解であると同時に茶漬け界においても最強の部類ではないか。

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セコマの山わさびもいける!

帰る前に山漬け取材に同行してくれた標津サーモン科学館の西尾さんに耳打ちされた。「ちょっとジャンク味が強くなるんですけど、セコマで売ってる『山わさびラーメン』の汁を使ってもうまいのでぜひやってみてください」

山わさびラーメン。北海道産山わさび使用。くせになる刺激が疾走するすごいやつだ。
いいじゃない!

たしかに、山わさびの辛みあるスープとの相性がすばらしい。
先の茶漬けのように澄み切った中に山漬けの雑味が浸透していくというより、お互いが主張して相乗効果で強度を増していた。
伝統的な製法で手間暇かけて作られる山漬けとインスタントラーメンのマリアージュ、ニューウェーブな郷土料理の胎動かもしれない。

 

小野瀬さんからは単に山漬けを教わるだけでなく、番屋で作り、食べ、暮らす人の物語も同時に聞かせてもらった。
「たしかに手間はかかるし、必要でなくなっていくかもしれないけど、ここでとれるサケを本当にうまく食べられるやり方なので次世代以降にも残っていってほしいと思っています」

町内の標津高校では、西尾さんが講師となった山漬け実習なども行われている。いでよ!「輪切りのわたし」クリエイター。

北海道の漁業関係のザクタス率の高さを聞き、長靴を見せていただいたらやはりザクタスだった。しかもサーモンカラー。

 

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
干された鮭がどんどん有名な鮭の絵に近づいていってます。この記事を読んであの絵のうまさに気づきました。あの絵がうまいってたいていの人が知ってることではあるのですが。 伊藤さんが1回の記事で2度標津に訪れた大労作。2回読もう!(林)

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