特集 2018年12月6日

みんな~! 都内で最高の居酒屋を見つけたぞ!

写真中央にあるのが「最高の居酒屋」です

「いつも使う通り道で、気になっている居酒屋があるんですよ。でもまだ行けていなくて。今度斎藤さん一緒に行きましょう」そう言いだしたのはライターの榎並さんである。

行ってみたら榎並さんが「気になる」という理由が完全に理解できた。外観が、店ではない。どう見ても一般の家なのだ。

そして入ってみると、中はもっと「家」だった。

本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。


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住宅地の中にある民家

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ふくはら亭は東京都文京区にある。新大塚駅から徒歩7分だ
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家である
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中はよりいっそう家だ。ちなみにこの掘りごたつが僕たちの予約席
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予約席を反対側から見たところ
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いろいろな物に目が行くが、こたつの電源コードを撮ってしまった
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親戚のおじさんのように見えるけどライターの榎並さんです
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こちらも親戚のおじさんのように見えるけどライターの小野洋平さんです

「家だ」
「家というか、実家」
「仏壇がある」
「仏壇ありますね」
「このコタツのコード……」

参加者たちから口々にこんな言葉が漏れ出した。見たまんまである。見たまんまを口に出させる力がこの居酒屋にはあるのだ。

木曜日の19時に来店したのだが、店内はほとんど満席で驚いた。人気店である。

料理が信じられないくらい安くてうまい

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ドリンクメニュー

まず飲み物を注文しなくてはいけないな。ドリンクメニューを見ると、まずまず安い。アサヒ熟撰生中ジョッキが450円。グレープフルーツサワー350円。「まあ、家だからかな?」と思っていたのだが……。

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「あれっ? ビールうまいな?」って顔をしている僕

生ビールがその辺の居酒屋よりうまいのだ。サーバーをきちんと手入れしてあるからだと思う。少なくとも家で飲む味ではない。

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煮込み

今回2000円の料理のコースを予約時に注文している。まず出てきたのは牛すじの煮込み。ちゃんとうまい。

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刺身盛り合わせ

次に出てきたのは刺身の盛り合わせ。家みたいな店だから、家庭料理が出てくるんじゃないかと思っていた。でもそんなことはなかった。お寿司屋さんで出てくるような立派なお刺身である。

特にうまかったのがマグロ。店主の福原さんに聞いたら「生のホンマグロ」だそうだ。それそこそこ高級なお店じゃないと出てこないやつだ。

僕は最近グルメサイトで「都内のうまい寿司屋のカウンターを5軒まわる」という企画をやっていた。会計が1人1万円くらいするお寿司屋さんだ。そこで出てくるものと同じくらいのクオリティを感じる。繰り返すがコースの料金は2000円。どうなっているんだろう?

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家だなあ

食べ物は超おいしいのだが、やっぱりこの環境も気にはなる。「食べ物うまいですね」「それにしても家ですよね」という会話が交互に繰り広げられる。

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世界にたった1つのコロッケ

続いて出てきたのがコロッケ。しかし通常のコロッケではない、福原さんの創作料理だ。中がドロッとした中華餡のようになっている。「カンで作ったからもう2度と作れない」とのことだ。

カンなのに、これがうまい。もう2度と食べられないのが残念だ。

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マーボーナス

マーボーナスである。「自家製の山椒油」を使っているそうだ。山椒油ってなんだろう? と思っていると福原さんが見せてくれた。

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お茶のペットボトルにはいっているのが山椒油

山椒油とは、山椒の実を油に漬け込んだものだった。山椒のさわやかさがマーボーナスによく合う。当然うまい。

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焼白子

白子が出てくるとは思わなかった。いちいち「うまい」と書くのもバカらしくなってくるが、きっちりうまい。

ここで2000円の料理のコースは終了である。正直信じられないくらい安い。このお店はちゃんとやっていけるのだろうか?

ウチはちゃんと儲かっているよ

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岩カキ

福原さんから「コースと別料金になっちゃうけど、いいカキがあるよ」と勧められた。値段を聞いてみると1個300円だという。当然注文する。

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カキのでかさにニッコニコになってしまう僕

カキはでかいしうまかった。もう1個、いや2個注文したいくらいだ。しかしこれが300円とは……? コース料金のこともある。たまらずに福原さんに聞いてみた。

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店主の福原さん

「お値段が安いのはうれしいんですが、このお店は原価割れしてませんか? 大丈夫ですか?」

ここでジロリと福原さんの眼光が鋭くなる。

「うちはちゃんと儲かっているよ。安売りしている店がテレビに出て『うちはお客様に喜んでほしいから赤字でやっているんです』なんていっているだろう? あんなバカな話はないよ。赤字の店なんて止めればいいんだ」

思わず「ほおおお……」という声が漏れ出た。福原さん、カッコ良すぎるだろう。実は「安すぎてなんか申し訳ないな……」と思っていたのだ。儲かっているのならそんな罪悪感を抱く必要もない。

榎並さんは「仕入れに相当な自信があるってことですかね……? すごいな……」と首をひねっている。

ここは正月か

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テレビをつけた

一通り料理を食べて、ダラダラとテレビを観る。なんだろう。お正月みたいな時間が流れてゆく。

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榎並「斎藤さんは会社を作ってもっとバリバリやったらいいんですよ」

榎並さんは編集プロダクションの社長である(小野さんはその会社の社員)。酒が入ったところで、僕の仕事のあり方についていろいろアドバイスを受けている。

しかし、そんな人生のアドバイスを受けるということすら、お正月っぽく感じてくる。僕も会社を作ってバリバリやろう。う~ん。めでたい。

お客さんに話を聞いてみた

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他のテーブルのお客さんにまじってみた

店主の福原さんが店全体に響き渡る声で「今日は取材が入っているからな! 写真撮られたくないやつはいないか? 大丈夫だな? ヨシ!」と言ってくれた。なんと大胆な撮影許可の取り方。ありがたい。

そこで、他のテーブルに混じってみた。わりとそういうことが気楽にできる雰囲気である。上の写真の女性の3人組は、このお店の常連だそうだ。

「ああ……とうとう(メディアに)見つかっちゃったか」
「できればこのお店を掲載しないでほしい」
「予約が取れなくなると困るな~」


僕が取材で来ているといったら、みな残念そうにこんなことを言う。すっかりお客さんに恨まれてしまった。

それから「やっぱり顔写真が出るのはNGで」と言われてしまった。撮影許可ぜんぜんとれていないな……。

自宅で店をやるようになった経緯

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ふくはら亭の入口。玄関だ

さて、まるで家みたいなお店だが、実際にここは福原さんの自宅である(みんなそうだろうと思っているだろうけど、念のため)。

福原さんはここで店をやる前、新宿で立ち飲み屋を経営していたそうだ。ものすごくはやっていたという。しかし、一度体調を悪くして、店を閉めざるを得なくなってしまった。

体調が回復して、自宅をお店にしたのは9年前。ただし、当初は知り合いの予約のみだったという。一般開放したのは4年前のこと。

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立派な杉玉が置いてあった

大衆的な雰囲気だが、福原さんは飲み方がきたない人が嫌いで、お客さんを店から追い出すこともよくあったという。

「人の話を全然聞かないで大声で自分の話ばかりするやつが嫌いなんだよ。新宿のころは塩をまいて追い返すこともよくあったな」

それ超わかる。そういう人に塩をまいてもらえるのありがたい。自分ではできないし。傲慢なようだけれども、気遣いだと思う。

さっきの常連さん達が言うには、ここは「女性が一人で来ても安心して飲める店」なんだそうだ。ヘンにからむやつは福原さんが追い出してくれるから。

そういうわけなので、飲み方がきたない人は行かないようにしてください。


食べ物がうまくて値段も安い。雰囲気もいい。お正月。家。ここ最高の居酒屋なんじゃないかなと思うんだけれども、どうだろう。

さっきの「ここを掲載しないで欲しい」って言っていたお客さんに「記事のタイトルを『最高の居酒屋を見つけたぞ』にしたいんですよね~」と言ったら「そこまでほめるなら掲載もいいかな~」って言ってくれました。よかった! 許された。
 

取材協力
ふくはら亭
ふくはら亭ブログ
東京都文京区大塚4-34-10
080-5002-2283

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