特集 2022年6月29日

地域限定のCM女王 ムツゴロウ(デジタルリマスター)

佐賀県の顔っす。

各都道府県には「県木・県花・県鳥」というものが制定されている(一部では県魚もある)。県外の人間から見れば「なんでその木・花・鳥が?」と思えるものだったりするが、その土地に住む人間からすると古くから地元の広告やシンボル・キャラクターなどに使われたりしてなじみ深い存在だったりするもの。

自分の出身地である佐賀県でもっとも馴染み深い動物というと「ムツゴロウ」。見た目のユーモラスさや他の魚と違った特性もあってニュースや広告などに取り上げられることも多い。…と、7年前に上京する際も思っていたのだけど、先日帰省した時にちょっと車で回ったらさらにスゴイことになっていた。ちなみにCM「女王」と書いてますが、登場するイラストのオスメスは不明です。

2006年5月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。

前の記事:この季節だからこそ!公園の売店カレー

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道をゆけばムツゴロウに当たる、勢い

「ムツゴロウ」とは、九州の有明海周辺のみに生息する15cmくらいのハゼ科の魚。エラ呼吸だけでなく皮膚呼吸も出来ることから、潮の満ち引きによって海になったり湿地帯になったりする地帯「干潟」で生活する。また初夏になるとメスへの求愛活動としてジャンプしたりする姿も見られる。

この程度は佐賀県民ならなんとなく子供の頃から植え付けられてる知識だ。えっへん。いや、同じく有明海に面した福岡・熊本・長崎の人も知ってるかもしれないけど。ともかくそのくらい親しまれてる魚、ということです。

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ヒレ閉じてると泥と判別がつかない。

彼らがどのくらい親しまれてるか、まず佐賀県民にとって身近なところからいってみよう。何を思うでもなく国道をツーッと走ってるとこんな地方の一風景にぶつかる。

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その辺の海で見かける

まぁ、何の変哲もない普通の地方の光景だ。しかし、看板をよく見てみると‥。

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ムツゴロウが!
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黄色い旗持って横断してる!

こういった市・県の看板や広告にとってはエース格。これが県の看板魚がマグロやサンマだったりしたら、こうイラストにはならないだろうなぁ。本マグロが黄色い旗持って横断してたら、ちょっとシュール過ぎる。ムツゴロウも本物がやってたらシュールだけど。

さらに車を走らせると、あるわあるわムツゴロウ看板。その地元密着ぶりをご覧ください。

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よく見かける工事看板も‥
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「ごめんなさいの人」でなくムツゴロウ
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バス停も‥
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ムツゴロウ。しかも帽子かぶって自慢顔
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ロードサイドのお菓子屋も‥
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ムツゴロウ、さらに饅頭まで!

ちなみに「あいのりタクシー」というのは大型タクシーによる定期便のこと。それより気になる「ムツゴロウ饅頭」、残念ながらお店が休みだったので見ることはかなわなかったのですが、当然ムツゴロウは入ってないらしい。

さらに同店には「ムツゴロウ焼き」もあったそうだけど、それも本物ではないらしい。いわゆるたい焼きみたいなヤツで、中はカスタードクリーム。もちろん本物のムツゴロウの血液がカスタード味だから、ではない。

地元料理の店に行けば「ムツゴロウの蒲焼」なんてメニューもあるし、一応食べれる魚ではあるけれど、お菓子屋に自然とあるほどポピュラーでも困る。静岡あたりの海沿いにあるミスタードーナツに入ったらぶり大根があるようなもんだ。

さらに車を走らせると、さらにインパクトのあるムツゴロウ看板を発見!

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ウェルカム!というにはちと怖い。

2Dから3Dに進化したよ!これは何の看板だ?

いったん広告です

リアル・ムツゴロウ王国がここにあった

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3匹のムツゴロウが路上でダンス!

ムツゴロウの保護・アピールに力を入れている佐賀県芦刈町。そこにある公園「佐賀ムツゴロウ王国・海遊ふれあいパーク」の看板だったのでした。もちろん東京にある王国とは直接関係ないけれど、相互交流は行っているのだとか。

この公園内には自由に見ることができるムツゴロウの見学地や養殖ハウス・干潟体験場・シチメンソウ生育地などがあり、佐賀県観光に来た人にはもってこいの場所。ちなみに前ページのムツゴロウの写真もこの見学地での撮影です。

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看板全体はこんな感じ
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オートキャンプなんかも出来る

町による一大ムツゴロウアピールの拠点だけに、ここのムツゴロウ祭りぶりはこれまでの路上をさらに越えるものがありました。右も左も見る物全てがムツゴロウだ!

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タイルもムツゴロウ
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公園の街灯もムツゴロウ

その他、防波堤の壁面や看板、お店で販売してるものももちろんムツゴロウ、ムツゴロウ、さらにムツゴロウ。そして極めつけがこちら!

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完成度高すぎて分かりにくいですが、公衆トイレです

地方に行くと、たまにロードサイドにミカンやナシ型といった妙に気合いの入った公衆トイレを見ることがあるが、これはすごい。街中には決して置けないであろう巨大なサイズに、トイレということを全く感じさせないデザイン。

もはや「ユーモラス」とひとことではくくれない存在感。もはや『牛久の大仏』とかの巨大仏に近いものがあるような気がする。ムツゴロウのご本尊だ。

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トイレは蛇口もムツゴロウでした

佐賀ムツゴロウ王国・海遊ふれあいパーク

 

いったん広告です

幻覚と錯覚するよなムツゴロウ尽くし

ちなみにここまで数時間を車でムツゴロウ探しに費やしてたのだけど、すっかり目がムツゴロウスカウター状態。何かキャラ絵が書かれているととりあえずチェック!それでも結構な率であるから、その人気ぶりがしのばれる。

しかし中にはこんなことも。途中でムツゴロウらしき絵が書かれてるのを発見、あわてて車をバックして見てみると‥。

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右上のアレも、もしかして!
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よく見たらカエルでした

まさにフェイント。もう目がデカい絵だったら何でもムツゴロウに見えてきちゃう。

しかし最後にムツゴロウの探しすぎの結果、つい幻覚を見てしまったようなスポットを発見する!

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空港に至る郊外の風景です

一見、フツーの郊外の整備された道路の光景。ここまでの流れと何が関係があるか分かりますか?橋のフェンスをよく見てみると‥。

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は、跳ねてる!ラインダンス状態!
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シンプルかつ的確なデザイン

橋の端から端まで連なるムツゴロウのダンス。スーッと通るとまず気づかない光景に、騙し絵のように入り込むムツゴロウ。我々の知らないところにこうやって刷り込まれてるのでは?サブリミナル?そう妄想されるほど自然に溶け込んでいる。

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ちなみに街灯は県鳥・カササギ(カチガラス)がモチーフだとか

さて今回の取材、この橋を撮影したところでネタも集まったし、もう暗くなってきたので帰ることにした。

しかしあまり地理に不案内だった場所なのもあって、ちょっと迷い気味に。その時、再び路上にてキャッチーに使われたムツゴロウを発見した。しかも、最後の最後にイラストではない方向で。その名も‥

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ブレてますが「ムツゴロウ動物の病院」です

でもこの場合のムツゴロウは魚なんだろうか、それともあの人のことなんだろうか‥?たぶん、両方なんだろうな。


がんばれ、出演料ゼロのCM女王

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佐賀ムツゴロウ王国はシオマネキ(カニ)もいます

佐賀県内ならエビちゃんにも伊東美咲にも勝てそうなCM女王(メスかどうかは不明)のムツゴロウ。実際住んでると当たり前過ぎて気づかないけど、外の世界から戻ってきて、見た瞬間に「帰ってきた~」って実感出来るのがあるのってのは、いいよね。実に30歳過ぎらしい感想だけどね。

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