ぶらり途中下車のエンディング風にお読みください
「まったくの無計画での街歩き。
そこに同時にナレーションを入れると気分を共有できたり、普段は聞けない話がきけて仲良くなれました。
そのうえ、行く先々で、ぬくもり溢れる出会いの花が咲いていた素敵な一日となりました。
え?ぬくもりなんて溢れてなかった?
というか花も咲いてなかったっけ?
まあ、とにかく、木々の葉も徐々に染まり始める神無月、風に吹かれながらあなたもどこかへおでかけしてみませんか?」
ぶらり途中下車の旅などの旅番組は、ナレーターと旅人との会話形式で進行していく。
ああいう散歩動画を作ってみたいが簡単に真似できるようなものではない。
だったらいっそ計算一切なしで散歩と同時にナレーションを入れたらどうなるのだろう?
今回は旅人として、プープーテレビでおなじみの宮城マリオさんに登場してもらった。
何の撮影か知らない宮城さんに
と説明し、行先などぜんぜん決めずにまったくの無計画で撮影開始。
果たしてどうなったのか?
結果はこちらのVTRをごらんください!
今回わかったことは、散歩と同時にナレーションを入れると、おのずと主導権はナレーターが握ることになるということである。
たとえば私が「あれ?橋がありますよー」と言ったのに対し、旅人役の宮城さんは旅番組のフォーマット通り橋に近寄り
と答えナレーションの誘導に従って動くことになった。
鉄人28号をコントロールしているようで楽しい。
次にわかったことは、とにかく目についた文字は読むということである。
無計画な旅番組は、ナレーターも旅人も話が膨らみそうなものを探して歩くことになる。
そのため看板の文字はとにかく読む。
気になる数字もとにかく読む。
プランターの札の文字もとにかく読む。
英語であってもとにかく読む。
これ以外にも動画でカットした部分も含め、看板の文字をかなり読んでいた。
何か面白いことが書いてあってほしいとの思いから、目につく文字はとにかく読むのである。
人は不安になると文字を読む。
人はか弱い、か弱いものですね、と思わず愛燦燦の歌詞を思い出したのであった。
文字にすがるくらいなので、変わったものがあれば当然食いつくことになる。
と言って映えるベンチがあればもちろん座る。
そして自らのスマホで撮影を同行の林さんに依頼したりもする。
またナンバリングされた柱があれば
と食いつく。
旅人みずからも何かとっかかりをみつけようと
と川沿いの入ると怒られそうなところにあるベンチを発見し、とにかくちょっとでも変わったものを見つけて食いつく。
無計画な旅番組は、人を貪欲にさせる。
我々はいつのまにか、参加した素人のちょっとした表情も見逃さず「今、お前まゆげ動かしたな?」などと貪欲に食いついていく仮装大賞における欽ちゃんと化していたのである。
無計画な旅番組は、かかわっている者全員が不安になる。
ことさら旅人は撮影されている分、その不安も大きい。
そのためふとした瞬間に、思わず
とそれまでの撮れ高に対する確認を口にするということもわかった。
口にした直後、林さんは「わかんないです」と即答していたが。
旅番組のナレーションでは旅人の人となりがわかるような質問もする。
そこで宮城さんに「神社では何をお願いするんですか?」と聞いてみたところ
と急に重めの話をされ、願いごとを聞いたはずが
と、お賽銭の出どころが返ってきたので驚いた。
また遺品ではなく、他の五円玉をお賽銭にしてはどうかと提案したが
おばあちゃん思いなのかドライなのか。遺品と五円玉との価値観のギャップがひきがねとなり、人それぞれの考え方の違いを知ることになったりした。
また、青山大学近辺にさしかかり「宮城さん青学の思い出はありますかー?」と聞いてみると
若いころ、青学に通ういとこを何回かご飯にさそったが、一度も実現しなかったという、生でナレーションを入れながら散歩でもしないと一生聞くことのなかったどうでもいい思い出話をきけたのである。
聞かなくてもよかった気もするけど。
散歩と同時のナレーションは、深く考えずに話すことになるためどんどん幼稚化していくこともわかった。
たとえば神社に長い階段があったが、それを見て
「なんと宮城さんはこの階段をスキップでのぼろうとしています」
といたずら的なナレーションを入れることになった。
すると宮城さんも童心にかえったのか「自分では運動神経はいいつもりなので、結構いけると思ってるんですよねえ」と言い放ち、追い打ちをかけるように
「むしろ、カメラがついて来れるかな?」
宮城さんの独特なスキップもこういう機会がないと見れなかったものであり、この企画をやってよかったと思ったのである。
ここまで動画を見ずに読み進めてきた方へむけて、動画を再度埋め込んでおくので、ぜひごらんください。
「まったくの無計画での街歩き。
そこに同時にナレーションを入れると気分を共有できたり、普段は聞けない話がきけて仲良くなれました。
そのうえ、行く先々で、ぬくもり溢れる出会いの花が咲いていた素敵な一日となりました。
え?ぬくもりなんて溢れてなかった?
というか花も咲いてなかったっけ?
まあ、とにかく、木々の葉も徐々に染まり始める神無月、風に吹かれながらあなたもどこかへおでかけしてみませんか?」
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