なんとなく見ちゃう理由
「なんとなく見ちゃう」サイトには「なんとなく」を作るための意識があった。見えないところの工夫と気遣いと矜持。
スモークのなかで神々しく立つ写真からそれを感じ取ってもらえれば幸いである。
ガジェット通信を知っている人も多いだろう。
ガジェット、グルメ、ネットの話題などの記事を掲載しているWEBメディアだ。
このサイトの雑多な雰囲気こそインターネットだと思っている。僕が好きなインターネットだ。
このサイトを讃えたい。
讃えよ、と書いているがヘッダに広告とある通り、この記事はスポンサード記事である。だからといっておべっかを書いてるのではない。
数年前、「WEBメディアびっくりセール」というウェブメディアがZINEやグッズを売る即売会を開催していた。ガジェット通信のブースには雑多なものが並んでいて、その雰囲気がまさにインターネットという感じでしびれたのだった。
そして今回、デイリーポータルZの独立を機にスポンサードコンテンツを依頼してくれた。よし、堂々と思いの丈を語ろうじゃないか。
ガジェット通信はネットの話題や食など身近な世界で起きていることを取り上げている。誤解を恐れずに言うなら”雑多”である。それを土日も休まずに1日に10~20記事出し続けて今年で16年目になる。
そのときは気づかないけど、こういうのがあとから思えば文化だったのだと思う、虎舞竜みたいになったが僕はそう思っている。
そんなガジェット通信を讃えるために編集部から3名に来ていただいた。倉庫のような場所だが、倉庫街にある倉庫を改造したと思われる倉庫風のスタジオである。 つまり倉庫だ。
そう、今回はガジェット通信のかっこよさを文章だけではなく、写真でも表現していく企画である。スモークと照明を駆使してかっこよさに遠慮のない写真を撮っていく。讃えるから!
だが格闘ゲームのキャラクター選択画面のようにも見える。誰が強いのか判断が難しい。
金の部分には紙が貼ってある。「段ボールに金色を塗っても色が沈んでしまうから」とのこと。分かる。そういう工夫が痛いほど分かる。インターネットの仕事をしているのになんで公園で工作をしているんだろうと思うことがある。
先ほど、ガジェット通信は”雑多”と書いたが、でも芸能人がインスタグラムを更新したことやテレビ番組を元にした二次情報ニュースは載せていない。このあたりに矜持が見える。
ガジェット通信に載せる記事は「ネットユーザーが好きなものは何でも。」(宮原さん)「基本はみんなが喜ぶか、役に立つか、笑えるか。」(デスク・オサダさん)だそうだ。そして「ライターさんが書きたいものを書くっていうのがメインポリシー。締め切りもなければノルマもない。」とのこと。
締切がない、というところでいまこれを読んでいる全編集者が戦慄したと思う。
「この記事を読んでほしいって書いた記事は伸びないですよね。でも、もし10年後に検索に引っかかって、誰かがいいねって言ってもらえたらいいなという気はある」(オサダさん)
「時間と手間をかけて書いた記事ってPV*が伸びない。」(宮原さん)
* PV=ページビュー、閲覧回数のこと
しかしメディアである以上、PVを無視するわけにはいかない。
「PV低いと広告出なくなっちゃうし。PV伸びる記事と見てもらいたい記事、それぞれ両方ちゃんと出るようにっていうのはいつも話してる」「記者さんがPV稼げそう!みたいなの書きたいって言ったら、はいって言うときもあるし、 やめときましょうってときもある。」(オサダさん)
インターネットで良くない稼ぎ方をしようとするといくらでもできる。だが、10年後のいいねを想像して記事を書くことができるかどうか、だと思う。
ガジェット通信の矜持について聞いていたのだが、つい写真の力が強くて格闘ゲームになってしまう。
これまでの印象に残っている取材を聞いた。
オサダさん「映画の監督さんや俳優さんインタビューでウサギの耳とかつけていくと、ちっちゃいおっさんがうさぎの格好してきたぞ(笑)、みたいな感じになる」
よしださん「海外からプロモーションでやってくると1日中インタビューで似たようなこと聞かれるので疲れてるんですよね。そんな中でちょっと変化球みたいなことを喜んでくれる。映画媒体もいっぱいあるので、映画好きじゃない人たちに見てもらえる記事にするのがたぶん媒体の役割」
宮原さん「ガジェット通信も発表会で取材したりレビューもしますが、読者のほうが詳しかったりするんです。グーグルホームとアマゾンエコーでピカチュウ同士が会話させるとか、見せ方の工夫があると受けたりはしますね」
よしださん「ハワイの丸亀って世界で1番売り上げがいいらしいんですが、そこでうどんを食べずに、天ぷらとごはんで天丼を自作するっていう」
オサダさん「なんかそういう変なひねりをそうそう入れようとしちゃいます」
ひとひねりすることで珍しさが生まれてキャッチーになる。だが、このやりかたは三方良しのようで、やりすぎると楽しさを超えて傷つけたり不快のゾーンにすぐ入る。
宮原さん「メーカーさんとかとは付き合いしたいので。基本的に向こうが傷つくとか嫌になるようなことはやってない」
ガジェット通信には一般人は実名報道しない、というルールもある。工夫と気遣いが同居している。
今後のガジェット通信について聞いた。
よしださん「今日たまたま3人集まってますけど。ライターの方々あってのガジェット通信なので。面白いことできそうって思ってるライターの人に、どんどん集まってきてほしい。他の媒体と兼務しているライターさんも、ガジェット通信だから書ける記事がある、と言ってくれます。
スポーツとか、いまガジェット通信がやってないジャンルでも新しくやってきた人が自分の好きなことを表現する場を守っていけたらってことは考えてます。」
入ったら後ろを振り向いてはいけないと約束させられるタイプのドアになった。
よしださん「あと、実は福岡県糸島市に第二の拠点を構える計画が進んでいます。
その地域では最先端の技術を活用した新しい街をゼロから作る構想が動き出していて、まちづくりの様子を追いかけて情報発信したり、ガジェット通信らしいガジェットやグルメ、エンタメの話題なども、福岡・九州からお届けしていきます。」
いいな~と素の感想が漏れる展開だ。いいな!
と言ったのは僕だが、その珍説はあながち間違いではないと自信を深めた。
「なんとなく見ちゃう」サイトには「なんとなく」を作るための意識があった。見えないところの工夫と気遣いと矜持。
スモークのなかで神々しく立つ写真からそれを感じ取ってもらえれば幸いである。
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