もくろみとは違ったが発見はあった
残念ながら、自分がデザインに関わったものが街にあるぞ、という気分にはあんまりならなかった。しかし、分かったことがある。
まず、そもそもぼくはポスターをちゃんと見てないってことだ。河合塾のやつは地元の駅の階段の途中にあるのだが、そこにあることに今回初めて気づいた。一生懸命作ったのにそもそも見てもらえない辛さ、みたいなものを初めて感じた。
そして街中のデザインはよくできているっていうことだ。自分で少しでも案を考えてみて、それがよく分かった。
次はユニクロのポスターだ。
衣料品店のポスターといえば、ちょっと目線を外したモデルが服を着ているという感じだと思っていたので、これを見たときには驚いた。
人じゃないし、着てもいないのだ。この象みたいなキャラクターは、実際にはニューヨークに拠点を置くアーティストである「カウズ(KAWS)」によるものだそうだ。
だがそういう実際の流れとは別に、文脈を捏造してみる。
こう書くと、ああ、ユニクロの担当者もそろそろモデルを人にするのに飽きたのかな、それでデザイナーも頭をひねって象にしたのかな、と感じないだろうか。
そうでもないか。
いずれにしろ、一つ前の工程を捏造することで、文脈も捏造できるかもしれないということはちょっと思った。
ここまでやってきて、このポスターを自分が依頼したんだ、という気分には実はそこまでなっていない。ただもうちょっと別の効果はある気がする。
あえて指示書の形を捏造することで、今まで感じていなかった当事者意識を感じる、ということだ。
駅に貼ってあった河合塾のポスターをもとに、指示書を捏造してみた。内容は大学入学共通テストの模試(トライアル)だ。
「トライアル前、トライアル後。じぶんんがこんなに変わるんだ!」とある。果たしてこのポスターにふさわしいビジュアルとはどんなものだろうか。
もちろんそんなことは一度も考えたことがない。実際のポスターはこうだ。
なるほど、こんなふうにするのか。プロはすごい。という気分になる。
ぬりえを渡されてどんなふうに塗ろうかと思っていたところに、すごく上手い人の塗り方を見せられた感じ。街にある実際のデザインがいかによくできてるかが分かった。
自分が関わったわけでもない案件を「あれ俺がやったんだよ」と言うことを「アレオレ詐欺」というらしい。
今回はそういう気分になれないかと思ってやってみたのだが、今のところあまりそんなことはなかった。むしろプロのすごさが分かった。
最後に、ポスター以外で同じようなことができないか試して見たい。たとえば建物だ。
街の風景に、新しく建てるビルの指示を書き込んでみた。
ちょっと分かりづらいので並べてみよう。
いや、あんまりうまくいってない。
右の建物は実際に同じ場所の完成後のものなのだが、いろいろ変わりすぎていて同じ場所だということが伝わらない。
それに、こんな雑な指示でビルは絶対に建たないな・・という感情が先に立ってしまう。もうちょい工夫が必要か。
残念ながら、自分がデザインに関わったものが街にあるぞ、という気分にはあんまりならなかった。しかし、分かったことがある。
まず、そもそもぼくはポスターをちゃんと見てないってことだ。河合塾のやつは地元の駅の階段の途中にあるのだが、そこにあることに今回初めて気づいた。一生懸命作ったのにそもそも見てもらえない辛さ、みたいなものを初めて感じた。
そして街中のデザインはよくできているっていうことだ。自分で少しでも案を考えてみて、それがよく分かった。
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