「ポイズンリングは中世でも実際の毒殺には使われていなかった」という説があるという。
中世の時代に、ひとつまみで死ぬような強力な毒は作れなかったからというのが理由らしいが、「普通に使いにくいから」というのも理由にあげていいと思う。
何事もやってみないとわからないことがあるものだ。もしポイズンリングの研究をしてる方がいたら、ぜひ一度試してみて欲しいと思う。
宝石の本を読んでいたら、ポイズンリングというアイテムを見つけた。
蓋がついている指輪で、中に毒などを入れて毒殺に使ったという説があるらしい。
本当の毒殺はやりたくないが、ポイズンリングは使ってみたい。毒の代わりにレモンを入れて、誰かのからあげにこっそりかけてみよう!
中世あたりに使われていたポイズンリングというものがある。
簡単にいえば「ケースつきの指輪」で、毒殺のときに使われていた(かもしれない)らしい。
そんな話を聞いたら試さずにはいられない。ポイズンリングを使うため、まずはリングを自作をすることにした。
瞬殺で完成した。あまりにも早すぎて不安になる。
値段はしめて209円(税込)。現代の毒殺アイテムは格安である。
ところで、この企画の準備の前に「毒殺をしようと思うんですよ」と担当編集の石川さんに相談した。
そして返ってきたメッセージがこれだ。
本物の毒を使えとはさすがに言われなかったものの「やるなら本気でやれ」と言われたので、緻密に計画を立てて毒殺にいどむことにした。
まずは毒殺に協力してくれる友達を集める。
前々からうっすら毒殺の話をしていた友人に白羽の矢を立てたら、秒で快諾してくれた。こんなに喜ばれながら毒殺できるのは、人類史上初めてかもしれない。
また、確実に毒殺を成功させるため、僭越ながら3対1で挑ませてもらうことにした。
困ったのが「毒」だ。当初は唐辛子やワサビでいいかなと安易に考えていた。
が、しかし。生まれてはじめて毒殺しようとしてわかったのだが、毒殺用の毒は
の3つを満たしていないと、すぐに相手にバレてしまうのだ。
「毒」にぴったりのレモン汁。色はないし、においは薄いし、液体なので完璧だ。
レモンをかけるかどうかで揉めるものといえばからあげなので、当日はたくさんのからあげを持ち込んで、ターゲットと揚げ物大会を開くことにした。
念には念を入れて、協力者たちとは事前にLINEで相談。
毒殺のルールはこんな感じでいくことにした。
・ターゲットには「毒殺がテーマの企画」「食べ物に何かを盛る」ということだけ伝える
・「何をどうやって盛るか」は教えない
・食べる前に気づけたらターゲットの勝ち、毒が盛られた食べものを気付かず食べたらターゲットの負け
このルールをもとに事前に協力者たちと作戦を立てる。
事前準備は完璧だ。これでいつでも毒殺できる!
準備してむかえた毒殺当日。
打ち合わせを重ね、バレないように3人ともポイズンリングを指につける。
ターゲットは指輪が毒殺アイテムだとは知らされていない。とはいえ、3人でおそろいの指輪しているのは変すぎる。
あまり指輪を目立たせないようにしながら、みんなでわいわいと揚げ物を食べる。
準備は完璧だったのだが、ここで問題が発生した。
ポイズンリングの仕様上、必ず食べ物まで手を伸ばさないといけないのだが、日常生活でそんなポーズはしないのである。
「毒を盛る瞬間」が明らかに不審になってしまうため、両脇からターゲットの気を引いて毒を盛るタイミングをなんとか伺う。
情報戦でコンビネーションプレイをはかるが、なかなか目を盗むことができない。
「意味もなく左手をあげさげする」というあまりにも不自然な動きだったので、「何してるの?」と言われてしまった。そりゃそうだ。
が、ここで...
企画者の私も気付かないスピードで、毒殺が無事に成功した。
無事に毒殺が成功したことで、わかったことがいくつかある。
・1人だと気が引けないので難しい。複数人のパーティが狙い目。
・でもパーティだと、毒を仕込んだごはんを自分も食べそうで怖い
・「この人は毒を仕込まないだろう」という人に一番チャンスがある。逆に少しでも警戒されていると全然できない
・一瞬気が緩んだので毒殺できた。会話が途切れた瞬間など、シチュエーションが変わるタイミングがねらいやすい
毒殺は、思っていた以上に難しかった。練習しないとできない芸当である。
成功したあと、ターゲットになった友人に「どうやって毒殺したと思う?」と聞いてみた。が、方法はわからなかったらしい
毒を盛る動きがあやしすぎて使いにくいが、「指輪」というアイテム自体は毒殺にもってこいのようである。
ここまでは3対1でターゲットがはっきりしている毒殺だったが、ランダムに誰かが誰かを毒殺する状況だったらどうだろうか。
スピーディな毒殺を実現するため、もともとのルールに加えて「立食パーティ式で雑談する」「時間内にすべてのからあげを食べきる」というルールもつけた。
やってみたことで、「全員が毒殺を気にしながら話すと会話がめちゃくちゃになる」という学びがあった。
映画などに出てくる「暗殺者を気にしながらスピーチするえらい人」は、かなり頑張っているのかもしれない。
移動直後にふり返ると...
自分が毒殺される側になると、常に警戒して疲れるということがよくわかった。
やる前は毒殺ぐらい簡単に成功するだろうと思っていたが、やってみたら意外と大変だった。
毒は、やっぱり仕込まないのが一番である。
「ポイズンリングは中世でも実際の毒殺には使われていなかった」という説があるという。
中世の時代に、ひとつまみで死ぬような強力な毒は作れなかったからというのが理由らしいが、「普通に使いにくいから」というのも理由にあげていいと思う。
何事もやってみないとわからないことがあるものだ。もしポイズンリングの研究をしてる方がいたら、ぜひ一度試してみて欲しいと思う。
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