でも、楽しかった
なんだかリスを全否定する終わり方だったけれど、楽しかったのは間違いない。次から次へとリスがやって来て僕を取り囲んでくれるのだから、そりゃ楽しい。一気に人気者だ。人生でこんなにも囲まれることはムービースターにでもならない限りないと思う。
リスのかわいさを見るのが井の頭や鎌倉で、現実を見るのが町田リス園なのだろう。いい意味でお化け屋敷みたいな感じで楽しかった。
町田リス園 |
鎌倉から帰ってきて調べてみたら、東京の町田に「町田リス園」というものがあった。ここは井の頭の「リスの小径」と一緒でリスが放し飼いされているが、エサをあげてもよくて、触るのもいいという、僕のリスと戯れたいという希望に沿ったものだった。
フェンスに囲まれた放し飼い広場には約100匹のリスがいる。広場に入ると、まず昔の雪国の子供みたいな手袋を渡される。次に100円でひまわりの種を買う。すると、自然に向こうから僕によってくる。もう恐怖を覚えるくらいに。
いままでのリスと違いグイグイ来る。お酒を飲むと妙に絡んでくる人がいるけれどあんな感じだ。もう僕が袋のネズミ状態だ。どちらかといえば、リスがネズミなのに。
「オレが、オレが」と言う感じでリスがやってくる。
今までのリスには、どこか奥ゆかしい恥じらいみたいなものを感じたのだけれど、ここのリスにはそんなことを微塵も感じさせない。僕がリスをかわいいと思ったのは、その奥ゆかしさだったのだと実感した。今までのリスとのギャップがありすぎるのかちょっと怖い。
この日はカップルも来ていたが、今までのリスを見ていたカップルの悲鳴とは違い、本気の「ギャー」という悲鳴をあげていた。井の頭や鎌倉のリスのイメージでここに来ると確かに悲鳴をあげてしまう。僕も普段より高い声で悲鳴を出してしまった。
ダチョウ倶楽部のネタに「オレがやるよ」「いや、オレがやるよ」「じゃ、オレがやるよ」と言うと、前の二人が「どうぞ、どうぞ」と最後の人にゆずるというのがあるけれど、ここのリスは、「オレがやるよ」「いや、オレがやるよ」「じゃ、オレがやるよ」「だから、オレがやるって」「いや、オレ…」と誰もゆずらないで無限にループする感じで、どんどんとよって来る。誰もゆずらないでみんなで熱いお風呂に入る感じだ。
こんなにもリスと自由に戯れることができるとは思わなかった。戯れすぎた感もある。ずっと好きだった人といざ付き合ってみると「あれ? 何で好きだったんだろう」と思うことがあると聞くが、たぶん僕とリスの関係はそれだったんだと思う。
なんだかリスを全否定する終わり方だったけれど、楽しかったのは間違いない。次から次へとリスがやって来て僕を取り囲んでくれるのだから、そりゃ楽しい。一気に人気者だ。人生でこんなにも囲まれることはムービースターにでもならない限りないと思う。
リスのかわいさを見るのが井の頭や鎌倉で、現実を見るのが町田リス園なのだろう。いい意味でお化け屋敷みたいな感じで楽しかった。
町田リス園 |
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