不気味の谷を超えるまで
ゲームの描写に違和感がなくなりどんどんリアルに近づいたら、きっと今回の画像みたくなるのだろう、という話であった。
そうすると違いがなくなってしまって、現実のリアル感(!)はもう楽しめなくなってしまうのかもしれない。
これは今のうちに味わっておいたほうがいい感覚である。
一人称視点の3Dガンシューティングゲーム(FPS)をし終えたあと、現実世界に目を移すと「微細な表現がリアル!」と思うことがある。ゲーム内の描写と現実の見た目がリンクしてしまうのだ。
逆に現実世界にFPSの要素を持ち込んだら、すごいリアルなゲームのように見えるのではないだろうか。試してみた。
FPSとはその名の通り一人称視点のシューティングゲームである。有名なところを挙げると『Apex Legends』や『Call of Duty』シリーズがある。
こんな画面のゲームである。やったことがなくても、こういうのがあるという認識はあるのではないだろうか。
FPSの特徴として注目したいのは画面右下に銃がある点である。これこそFPSをFPSたらしめている要素と言っても過言ではない。
これを現実世界に置き換えるというのが今回のもくろみである。
では実際に銃を持ち歩いて、自分の視点から写真を撮ればFPSっぽくなる!ということになるかといえば、そうなのかもしれないが完全に危ない人になってしまう。そこでぼくはこういうものを用意しました。
6分の1サイズの銃のプラモデルである。これを実際の銃の代わりとしたい。
銃だけでは不自然な画面になってしまいそうなので、「体」の方も用意する必要がある。
あとはこれを接写して画面右下に銃がくるようにしたら、FPSみたいな写真が撮れるはずである。
ここまで読んで「画像を合成すればいいんじゃない?」と思った方、いるだろうか。いたら手を挙げてほしい。
では続けます。
まず構図だけ決めてふつうに撮ってみよう。するとこうなってしまうはずだ。
遠くにピントが合って、近くにある銃はボケてしまっている。こんなのはFPSではない。
ではどうすればいいかというと、レンズの絞りを絞るのだ。スマホだと無理だが、一眼カメラだと絞りというのがあって、絞ると全体的にピントが合うようになる。
(絞りすぎると逆にボケちゃうという現象があるのだが、今回はやむなし、ということにする。)
こんかいは思い切って絞れるだけ絞って(F22まで)撮ってみよう。するとこうなる。
風景にも銃にもピントが合っていてだいぶFPSっぽくなっていないだろうか。
しかし、同時に少し物足りなさを感じる。改めてFPSの画面を見ると、もう少し広い範囲が映っているようなのである。
今のままだと、普通の写真に銃が写り込んだだけに見えてしまう。どうすればいいか。
超広角のレンズを買おう。
これは焦点距離14mmという、最近のiPhoneの超広角レンズと同じくらいの広い範囲が撮れるレンズである。これを買おう。
これを使って撮影するとだいぶFPSに近づいてくる。
ようするにFPSみたいな写真を撮るポイントは以下である。
・右下に銃のプラモデルを配置する
・絞りを絞る
・超広角レンズを買う
レンズを買うの部分は「借りる」でもいい。
これで照準、地図やステータスといった一切を削ぎ落とした純粋なFPS画面が出来上がった。
FPSっぽい写真(映像)が撮れることがわかったはずである。
ではさっそくこのFPS視点をたずさえて散歩にでかけたい。将来、埼玉県戸田市を舞台にしたFPSが発売されたら、きっとこうなるだろうという思いで歩いてこう。
(お察しかと思いますが、もうこの記事はおまけの段階に入っています。)
ゲームだとこういうところにアイテムが落ちてたりするんだよな。もしくは敵が隠れているか。
しかし、右下に銃があると殺伐としてしまう。強盗でもしているかのような。でもFPSで掲示物を眺めたりすることってあるだろう。
木の描写がリアルだ。現実ではあるが「木がリアルだなあ」と思えるのは右下にアサルトライフルがあるからだろう。
ハトをいじめているみたいな写真になってしまう。そんなつもりはないのに……。アサルトライフルのせいで……。
リアリティがないものが風景にあると逆にゲームっぽくなるから不思議だ。
歯がギザギザになっていたり首にイルミネーションが巻かれていたりリアリティのある造形ではない恐竜だが、存在感はたしかだ。まるで現実のようなFPS、のような現実!
恐竜も危険だが、こちらも武装していて危険である。
うーむ、リアリティとはなにかわからなくなってきた。
以上、ぶらりFPSさんぽでした。楽しみました。
ゲームの描写に違和感がなくなりどんどんリアルに近づいたら、きっと今回の画像みたくなるのだろう、という話であった。
そうすると違いがなくなってしまって、現実のリアル感(!)はもう楽しめなくなってしまうのかもしれない。
これは今のうちに味わっておいたほうがいい感覚である。
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