カラオケ館の室内の壁もやかましい
何か見つかるかなと室内の方へ行ったら、こちらの壁もやかましかった。
カラオケ館の外壁には、楽しそうな外国人たちがいる。
彼らのただただ楽しそうな雰囲気に当てられて、自分もカラオケ館の壁の人たちのようになった。
一つのマイクに寄り添って歌っている。店名より大きな面積を使ってバーンと貼ってある。楽しそうだ。
これが異質に見えるのは、たくさんの人の目に止まる場所に、店名でもなくプランでも料金でもなく『なんだか楽しそうなイメージ』だけが貼ってあるからだろう。カラオケ館のことなんていいから、この楽しそうなやつらを見てくれよと言うのだ。カラオケ館が。そう、確かに楽しそうだ。
ビルのタイルを頼りに大きさを計算したら横15メートル、縦11メートルあった。ナイアガラの滝の幅も15メートルほどらしい。つまりすごく大きいのだ。
スタイルが良さそうなので8頭身として身長を計算すると32メートルになる。初代ウルトラマンが40メートルなので、それより少し小さいぐらいだ。つまりものすごくでかいということだ。
初代ウルトラマンほどの大きな外国人たちが寄り添って楽しそうにしている。そんなことをビルの壁面を使って伝えられたことがなんだかおもしろく感じてきて、他の店舗もGoogleストリートビューで調べてみた。
カラオケ館の全店舗をストリートビューで見て、25店舗で楽しそうな外国人たちが確認できた。カラオケ館のホームページを確認するといるのにストリートビューが撮影された時点ではいなかったり、その逆もあり得るので、正確な情報ではないことをご了承ください。
とにかくどんどん見ていこう。無闇にポジティブででかいので、きっと楽しい気分になってくるはずだ。
東京、三鷹北口駅前店。ストリートビューでこんなに寄って見られるのは珍しかった。
東京の瑞江駅前店。二人組だ。
京成千葉中央店。ヒューヒュー!
福岡春日店!
東京、千葉、福岡で同じ大きな写真が見られるのだ。全国ツアーという感じがする。
東京、西八王子店。ヒューヒュー!
片方だけというパターンもある。東京の練馬店。一人でも楽しそうだ。
福岡の小倉本店。画角にぎゅうぎゅうになっている楽しそうな人たち。
千葉の津田沼店にもこの人たちがいた。
福岡、博多駅前店。
東京、武蔵村山店。めちゃくちゃ目が合う。
これも楽しそうだ。茨城の水戸元吉田店。
25店舗の中でも特にバーンと貼り出されている例を選んだ。どうだろうか。店先の貴重なスペースを使って『なんか楽しそうなイメージ』だけを大きく伝えてくる、この豪快さと朗らかさである。とても良い。
そこまで大きくはないけど、隙間を縫って入れてくるパターンもある。熊本の下通り本店。
東京、西武新宿駅前店。
余計な情報を剥ぎ取った『楽しそうな雰囲気』だけの存在。しかもでかい。僕もそれになりたいと思った。だって、ただただ楽しい雰囲気だけがそこにはあるのだ。
頭の中で「楽しい」と唱えてみてほしい。その時にどんなイメージが浮かんだだろうか。雲の上で昼寝をするあなただろうか。ターザンロープにまたがるあなただろうか。そのイメージの候補の中に『カラオケ館の壁の人たち』はいるのだ。だからそれになりたいと思うのは自然なことだ。
楽しそうだ。本当に、ただただ無闇に楽しそうなでかい自分がいる。良い壁ができたので、これで半日過ごしてみた。
後ろが気になって集中できない。やかましいのだ。もちろん音は出ていない。音は出ていないがすごくうるさい。揚げずに唐揚げを作るレシピがあるように、空気を震わさないやかましさもあるのだ。それが分かった。
デイリーポータルZでマンガのコーナーをやらせてもらっているので、そのアイデア出しをする。
なかなか集中できない。この壁の部屋はパーティーしかできないのかもしれない。この人たちより盛り上がってるぞという確信を持てて初めて、壁からのプレッシャーが消えるのだ。
別の場所で作業したり部屋をうろうろするうちに昼になったので、昼ごはんを食べた。
結局夕方まで気になり続けて、そっと片付けていつもの部屋に戻した。
やはり気になるのだ。ただただ理由なく楽しそう、という人たちのことがどうも気になって見てしまうのだ。羨ましいのだろうか。そうかもしれない。
何か見つかるかなと室内の方へ行ったら、こちらの壁もやかましかった。
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