まぶたの裏に映る模様とは
さて、そもそもまぶたの裏に映る模様が何のことかお分かりになるだろうか。
それは、閉じた目をまぶたの上から圧迫することで見える模様である。 目をつむり、手でまぶたを軽く押さえると、白黒で、または一部カラーで、 幾何学模様のような奇妙な図形が闇の中から浮かび上がってくるのだ。
ピンとこない方は、実際に試してみるのが良いだろう。 目を押す際はまぶたの力を抜き、まぶたの裏を見るように意識するのがコツだ (眼球に負担がかかるため、強く押したり長時間押し続けるのはおやめください)。
ちなみに、なぜ目を閉じているのに模様が見えるのかというと、 目を圧迫することで網膜が刺激され、 光を感じたという情報を脳に送ってしまうかららしい。 要するに、見えてないはずのものを見たと勘違いしてしまうのだ。
う~ん、人体って不思議。
小学生の頃の私は、体育座りで地面に座り込み、膝に目を押し付けて、 自らのまぶたが繰り出す独特な模様を見ながら一人悦に浸っていた。
今思う。この不思議な模様を他の人にも見せることはできないだろうか。 自分自身にしか見えないものを他人に見せるには……そうだ、アレだ。写生だ。
模様を絵に描き写す
絵に描けば、自分以外の人にも自分が見た模様を見せることができる。 よし、それでは早速、その模様を絵に描いてみよう。
まずは体育座りでまぶたの裏を見て、 そこに映る模様を頭の中に焼き付ける。 そしてそれをスケッチブックに描いていく。
……が、これがなかなか難しい。
もともと絵心が無い上、実際にその場にあるものを描くわけではない為か、 なかなか筆が進んでくれない。
これは違う、あれは違うとあれこれ苦悩しながら、 何度も修正しつつ線を引いていく。
おお、なんかちょっとだけ画家っぽいぞ。
何度も繰り返し模様を確認し、その都度見えたものをスケッチブックに写していくのだが、 どんな模様が見えるのかはその時の目の状態や圧迫の具合によって変化する。
結果、できた絵は部分部分を切り出したツギハギのような感じになってしまった。 ……でも、まぁ別にいいか。
着色、そして完成
スケッチの次は着色だ。 鉛筆で描いた線画の上、水彩絵の具で色を塗る。
まぶたの裏に見えた模様はモノクロであったのだが、 そのまま白と黒だけで塗るのは味気ないだろう。 ここはカラフルに行きたいところだ。
どんな色で塗れば良いのかいまいち分かりかねるが、 とりあえず、絵に合いそうなそれっぽい色をペタペタ塗っていく。
ちなみに、私が水彩画を描くのは中学校の美術の授業以来となる。 正直、どう描けば良いのか全く分からなかった。 学校の授業とは、得てしてその後の人生に役立たないものである。
それにしても、この作業は想像以上に骨が折れた。
炎天下の中、絵の具はすぐ乾くし、持ってきた水は切れて熱中症っぽくなるし。 あまりに喉が渇き、思わず筆を洗う水に手が伸びそうになる。危ない危ない。
そうこうした結果、完成した絵がこれである。
わかったこと
まぶたの裏の模様を見るのは、大人になった今でも楽しい。
まぶたを押しただけで、何かを見たと錯覚を起こす人間の目は結構いい加減。 でも、そんないい加減なところがわりと好き。
苦労したところ
何かもう、いろいろ苦労しながら絵を描いた。 暑いし、喉渇くし、絵の描き方は分からないし、 目を圧迫しすぎて視界が霞むし。
すぐ近くで黒人男性が演奏していた太鼓の音が、唯一心の慰めだった。
感想
今回、私はこんな風に模様が見えたのだが、 他の人はまた違うように見えるのかもしれない。 ぜひとも、まぶたの裏の模様写生が流行ってほしいなと思った。 いや、やっぱそんなことは思ってない。
なお、描いた絵を学校などに提出する際、 「内なる自分を表現した」とか言ってしまうと 先生とか親とかに色んな配をかけかねないので、 その際は「宇宙のファンタジー」とか題すると良いだろう。