デジタルリマスター 2023年3月14日

勝手にひとり神輿(デジタルリマスター)

まつりだ! まつりだ!わっしょい! わっしょい!

今日はホワイトデーだ。でも、ホワイトデーって一体なんなんだ?

聖ヴァレンティヌスが殉教したことにちなむ2月14日のヴァレンタインデーに比べて、そのイベントの根拠が薄弱すぎるじゃないか。

そんな根拠もないまま勝手なイベントを作っていいのか? いいのだったら僕もお祭りイベントを作って、勝手に盛り上がってみたいと思う。

2007年3月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

前の記事:大きな柿から割れて出る(デジタルリマスター)

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とりあえずかっこうだけ

お祭りのかっこうといったらやっぱり袢纏(はんてん)だろうと思ったが、その他に一体どんなものを用意すればいいのか見当もつかなかったのでとりあえず浅草まで足を伸ばしてみた。インターネットで調べるよりもお店の人に聞いたほうが確かだ。

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ここに行けばたぶん大丈夫。

駅に着くと、地図に「祭用品の絆纏屋」というとてもわかりやすい名前のお店が書かれていた(はんてんの「はん」が‘絆’という字だけど)。オンデマンドとはまさにこのことだ、さすが浅草。さっそく浅草寺の近くにあるそのお店に向かった。

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祭用品の浅草 絆纏屋

が、店に入ってみたものの、いろいろ棚に並んでいてどれを揃えたらいいのかさっぱりわからない。

「お神輿を担ぐような格好をするために一通り欲しいんですけどどれを買ったらいいんですか?」と、完全にイメージが先行している質問を店長さんにしたみたら、丁寧に教えて頂くことができた。

鯉口シャツ、股引、足袋を買えばいいそうだ。前掛けがあえればよりそれっぽくなる。

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所狭しと祭りグッズが並んでいます。

肝心の袢纏は普通各自治体などで用意されるものらしい。そういえば、みんなお揃いで着てるような。今回はそれっぽく仕立て上げることが目的なので、一番安い袢纏を買うことにした。2500円。

より雰囲気が出るように、と鉢巻をおまけして頂きつつ、とりあえずこれで祭りの準備はほとんど整った。

絆纏屋

東京都台東区浅草1-37-11
営業時間 10:00~18:00 水曜定休日
https://www.hantenya.com

 

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とにかくひとりでやる祭り

というわけで絆纏屋で揃えた衣装がこれだ。

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どんとこい、祭り

なかなかそれっぽい雰囲気がでていると思う。曇った空に鮮やかな水色が映える。

しかし、これだけではいまいち「祭り」という感じがしない。祭りの湧き上がる熱気やほとばしる汗のような、動きが足りないのである。

どうすればいいのか? 答えはお神輿だ。「わっしょい!わっしょい!」と叫びながらお神輿を担ぐことで、一気にお祭り感・イベント感は増すのである。

今回は特別に一人でも担げるお神輿を用意したので、それを使って渋谷の街を練り歩いてみたいと思う。

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わっしょい! わっしょい!
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ホワイト! ホワイト!
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わっしょい! わっしょい!
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わっしょい! わっしょい!
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……ふん! ……ふん!

・・・。当然ながら一人でお神輿を担ぐなんて無理な話で、本当はこんな風に単なる角材を担いでわっしょいわっしょいしているだけ。

いや、でも担いでいるのは角材だが、後ろ側を見切らせれば画像ではまるでお神輿かのよう、なはず。神輿の本体なんていらない。一人で盛り上がるだけなら、持つ部分だけで十分だ。

袢纏を着て角材を担いでいる姿はなんだか大工っぽくもあるが、こんな水色の大工いないはずだ。この浮かれっぷりは、まさしく祭り。

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祭りのテンションでなきゃできません。

続けていれば、やがては本物の祭りの如くなるはずだ。ホワイトデーが根拠も無くイベントとして成立しているんだから、このテンションも続ければ本物のイベントになっていくはずだ。

というわけでこのまま、街中を練り歩いてみたいと思う。

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ハイテンションで街を練り歩く

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わっしょい! わっしょい!
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スタバ! スタバ!
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ガラス! ガラス!

スターバックスの横を通るだけで、こんなに盛り上がるなんてお祭りならではだ。

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BEAMS! BEAMS!
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首なし! マネキン!

ただの角材でも担いでいるうちに気分も高揚してきた。渋谷という街をこの手にしたような心地だ。渋谷の中に祭りがあるのではなく、祭りの中に渋谷がある。

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ねーこ! ねーこ!
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ベンチ! ベンチ!
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わっしょい! わっしょい!
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休憩
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さっきから材木を担いで歩き回っていたせいで、そろそろ疲れてきた。ちょっとカフェで一休みしよう。

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ちょいとお茶でも。
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日常、だな。

一度席について街の様子を眺めると、本当に穏やかなものだ。「今日」という1日は漫然と続く日常の単位でしかない……。

いけない。ついうっかり素に戻りかけてしまった。お祭りイベントのグルーヴ感を維持させ続けるためには、「素」とか「日常」が大敵だ。

休憩はおしまいだ。お祭り感覚が残っているうちにお祭りの続きを楽しもう。

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例のマンボにのせて。
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わっしょい! わっしょい!
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アップル! アップル!

 通りがかりに鏡のような壁があった。

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あ、おれだ。角材なんか担いじゃってる。
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うーん
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帰るか。

鏡で自分を客観視したら、急激に冷めてしまった。持っていたのは明らかに神輿ではなくて、ただの角材だった。


イベントや祭りを成立させるもの

こういうイベント事を成立させるには、もちろん自分の気持ちが高揚することが重要なのは確かだ。けれど、まわりの人たちがそのテンションを維持し続けてくれないとだめだ。周りが騒いでくれないと、自分が冷静になってしまった瞬間が祭りの終わりになる。かくして祭りに必要なのは根拠とか起源ではなくて、みんなのテンションそのものなのであった。

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