球体をつくれ
作り方はZくんのかぶり物を作ったときのと同じでいいだろう。細長いとんがりをくっつけてドームをつくる。基本的には厚紙がいっぱいあったら複雑な作業なしでできる。
単にでかい果物を再現するするだけなら、平面の板を半円状にするだけでいいじゃないかと思われるかもしれない。しかし、そうではないのだ。立体で作ってこそ初めて実現したと言えるのだ。
今思えば、その思いつきこそがすべての誤算の始まりだったのかもしれない。
まず第一の誤算は材料が揃わなかったことだ。池袋の東急ハンズに行ったところ、必要な材料はA1版のでかい厚紙9枚だったのだが、4枚しか在庫がなかった。買った材料を持ってほかの店を回る時間もない。
実際画面に映るのは前半分だから半分だけ作ればいいか、と思って、在庫を買い占めてきた。
まず用意した材料に、直径120cmの球体をつくるためのパーツの切り取り線を書く。24枚だ。
続いてこの線に沿って厚紙を切り抜いていく。頑丈な素材じゃないと完成したときに形を保てないだろうと思って、厚めの紙を買ってきたせいで、カッターの刃が全然通らない。これも誤算だ。
厚みがありすぎて1回刃を通すだけでは切ることができない。なので何度も同じ線をなぞる。何度も何度もなぞる。
この繰り返しはなんだか地獄っぽい。地獄の3丁目はナントカ地獄とか言ったりするが、延々厚紙カットは地獄の3丁目12番地デビル荘203号室くらい狭い地獄だ。厚紙カット地獄。
途中からべつやくさんに手伝って頂いたが、すごく申し訳ない気持ちになった。こんな地獄みたいな作業につき合わせてしまうなんて。
結局複雑ではないが単調な作業をひたすら続け、終わるころには日が暮れた。