特集 2021年9月14日

大人の塗り絵は一色でやってもいい

なんとなく塗っても良い感じになるぞ

『大人の塗り絵』という塗り絵のジャンルがある。細かい緻密な絵柄の塗り絵で、それを無心で塗るうちに不安や雑念がなくなりストレスが解消され、集中によって呼吸が規則的になり自律神経が整うのだそうだ。

この、行いに対するリターンの大きさはなんだ。マンガ雑誌の最後のページの広告みたいだ。これをもっと気軽にできるように、色鉛筆一本だけでやってみた。

作品らしきものが出来上がったし、塗っている間はそれはそれは充足感のある時間を過ごせた。塗り絵は一色でもいい。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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一色しか使わない塗り絵

好きな塗り絵と好きな色を一つ決めたら準備完了である。やっていて楽しいかどうか、そしてきれいにできあがるかどうかがポイントとなる。

今回確かめたいこと

  • 一色の塗り絵は楽しいのか
  • できあがりはきれいなのか
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阪神電気鉄道が公開している、沿線の風景の塗り絵が好きでこれをやってみることにした。

これは『ぬりえ旅 阪神』という阪神電車の企画で、もふもふ堂という方がイラストを担当している。10作品が公開されているが上の写真はその中の一つ、元町駅の塗り絵である。

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この細かいながらも力の抜けたタッチが良い。
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プロセスレッドという色を選んだ。

色鉛筆って久しぶりに開けると、欲しい色が足りてなかったりすごく短くなっていたりする。自律神経を整えようという時にそんなことでまごまごしたくない。だったらいっそのこと一色でいいのだ。気持ちよく使える色鉛筆の中から好きな色を一つ選べばいい。

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恐る恐る塗っていく。一色なんだけど濃淡をつけて色々表現してみることにした。

絵のうまい方がパフォーマンスとしてやっていそうだなと思った。実際、三本の色鉛筆だけでこんなに鮮やかな表現が、という動画はYouTubeにたくさんあった。僕は違うんだ。ただ楽して癒されたいだけなんだ。

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植え込みの濃淡はこんな感じだろうか。

やる前はうまくできるかどうかが気になってしょうがなかったのだが、塗り始めるとだんだん何も気にならなくなってきた。上手いも下手もない。僕はただ線で囲まれた場所を塗っているだけなのだ(本当は上手い下手はある)。

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こういう場所も無心で塗る。

配色のセンスが出そうな部分も何も考えず塗れる。今は、自分の配色のセンスとかも見たくないの。ただ好きな色の濃淡だけを見ていたいの。

口調がおかしくなるほどにリラックスをして2時間ほど、気持ちのいい疲労感と共に塗り終わった。

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悪くないのではないか…!

特に策も無く塗ったわりには奥行きがあってきれいな感じにできあがった。幻想的な夕日みたいになったらいいなと思ってこの色を選んだが、そんな風に見えないこともない。

一枚目ではっきり分かった。塗り絵は一色でもすごく楽しい。体が透明になったかのような没入感がちゃんとあるし、きれいにできあがるので満足感もすごい。そもそも元のイラストが素敵だよなとあらためて思う。好きな絵に好きな色を塗らせてもらえて、なんて贅沢な遊びをしているんだろう。

分かったこと

一色の塗り絵は…

  • 家にある色鉛筆をすぐ使える(足りない色を揃える必要がない)
  • 塗る間も配色とか混色のことを考えなくていい
  • なんとなくの濃淡でなんかきれいな感じになる

ただし、

  • 色を選んで塗る楽しみは無いので、そこは割り切ってやろう
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やはり良い

良い塗り絵ができた。自律神経が整ってぐっすり眠れるかと思ったら一色で塗り絵をする夢を見た。気持ちよく起きたので「もっとやりたまえよ」という誰かからのお告げなんだと思う。

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甲子園球場をパロットグリーンという色で塗ってみる。
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前の絵ほど塗り分ける部分がなくて一時間で塗り終わった。

一時間でこの満足度のアクティビティって他にあるんだろうか。塗り終わって顔を上げると世界が変わって見えた。リラックスし、自律神経を整えた自分として生まれ変わったからだ。

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外野席のお客さんを点々で描くのが楽しかった。
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そしてまた別の日にこちら。新淀川橋梁。
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ライトアクアという水色で塗った。

とにかくずっと心地良かった。どういう感情の動きなのか分からないが、学生の時好きだった音楽を久しぶりに流してみたりした。

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配色を捨て、そして濃淡も捨てる

こうなったらもう一段階いってみよう。一色しか使わず、そして濃淡も無く全てを同じ濃さで塗ってみる。

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尼崎城。スパニッシュオレンジという色で塗る。

考えることがさらに一つ減り、もう機械のようにグリグリ塗る。隣り合った部分を塗るのを避けたくなるが、考えることがそれしかなくてとりあえず、という感じである。最後には全部塗るのに。

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石垣をちまちま塗るのが楽しかった。

全部同じ濃さで塗るわけだが、線をまたいでガサーガサーと塗ることはしない。これは塗り絵だからだ。

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ここまではすごく楽しかった。

塗る場所が隣合わないように気をつけると、画面に黄色と白のリズムが生まれる。イラストに元々あった立体感が強調されてくるのがおもしろいのだ。

しかしそう、ここからその躍動は失われる。全部塗るから。

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城が塗られ、
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石垣が塗られて、
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もう全部塗られて、
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空と大地の違いさえなくなってしまう。
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完成だ。こんな悲しい完成があるのか。

全てを濃淡なく塗りつぶすと、塗り手の感情のコントラストが際立った。

何かが生まれ、それがリズムとなって躍動し、そして徐々に失われて最後には無くなってしまった。生まれたものを最後まで見届ける。その態度を持ってこそ、本当の大人の塗り絵と言えるのかもしれない。

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ありがとう。

一色でやる大人の塗り絵、楽しいのでお勧めしたいのだが、最後のこの塗り方だけは大きな悲しみを伴うのでその覚悟のある方だけやっていただければと思います。

塗る様子をタイムラプスで撮ったのがこちら。ちまちま塗って最後は真っ黄色になる。
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とにかく

最後に大きく話が脱線したが、ちまちま色を塗る喜びは確かにあるので、好きな塗り絵があったら家の隅に転がってる色鉛筆一本でやったって楽しめるということだ。それをお伝えしたかった。多分濃淡はあったほうがいい。

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こういうのがすごく楽しい。

途中でやめてもいい

濃淡なく塗り、悲しくなる前にやめる、という塗り方もやってみた。

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悪くないと思う。
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