特集 2021年3月19日

沖縄のトンカツは薄い気がする

沖縄に住んで20年余り。ずっとぼんやりと気になっていたのだが、沖縄のトンカツは薄すぎじゃないだろうか。

誤解がないように言っておくが、もちろん沖縄にもトンカツ専門店のようなものはあって分厚いロースカツも食べる事ができる。しかし、昔ながらの大衆食堂やお弁当などに入っているトンカツの中にはびっくりするほど薄くて、中身が豚肉なのか判別に困るくらいのものが結構あるような気がする。

この漠然とした思いを確かめるために、トンカツの厚さに注目しつつ食堂をまわってみた。

新潟出身。沖縄に来てそろそろ15年くらい経つのに泳げないため全然沖縄を満喫できていない気がする。最近の悩みは高血圧。

前の記事:取り壊し前のアーケードの上からは何が見えるのか


まず一般的なトンカツの厚さを考える

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県内のローカルスーパー「ユニオン」のトンカツ

さて、沖縄のトンカツの薄さを論ずる上でまず問題となってくるのは「一般的なトンカツの厚さはどれくらいなのか」ということだ。

とりあえず基準となる数値を考えるべく、スーパーのお惣菜コーナーでトンカツを買ってきた。

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トンカツにもロースだったりヒレだったり部位による厚さの差異はあるだろうが、スーパーのトンカツの厚さは18.4mm。トンカツ屋で出てくるロースカツはもうちょっと厚みがあったように思うので20mm~くらいが一般的なトンカツの厚さとなるのではないだろうか(たぶん)。

それを踏まえつつ、色々な食堂のカツの厚さを調べてみよう。

いちぎん食堂

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まずは那覇市の国際通りの近くにある「いちぎん食堂」。

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24時間営業で、ロブスターから山羊汁までものすごい数のメニューを誇る大衆食堂である。注文は食券を事前に買う形なのだが、食券を買っている時に従業員のおばさんに「何にする?」と聞かれる事が多いので食券の意味についていつも考えてしまう。

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トンカツは700円。トンカツ定食というものもメニューに存在するのだが、トンカツだけでご飯とスープが付いてくる。

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気になるトンカツの厚さは17.5mm。冒頭の基準値よりは薄いが、これをもって「沖縄のトンカツは薄い」とは言い切れない微妙な厚さである。食べてみると(当たり前だけど)普通にトンカツできちんと肉を食べている感じがあった。

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軽食の店 ルビー

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続いても那覇市にある「軽食の店ルビー」。洋食メインだが、和食もある沖縄の昔ながらのレストラン。「軽食」という名前の割にかなりのボリュームで、かつて林さんが「まだあるAランチ」という記事でそのボリュームをネタにしている。

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トンカツは860円。写真だと分かりにくいが、カツは2枚ついてくる。

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カツはナイフとフォークで切り分けていくのだが、断面がこちら。いかがだろうか。これは薄さに期待が持てそうだ。

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気になる厚さは14.8mm。先に出たいちぎん食堂のカツと3mmしか厚さは変わらないのだが、明らかに「薄い」と感じるのは肉の厚みがほとんどないからかもしれない。

これだけ薄いと、衣だけをカリカリ食べるようなイメージがあるが、ルビーのトンカツは想像よりも柔らかくサクサク食べる事ができる。ただ、肉を食べているというよりは衣を食べているような感じだった。それはそれで美味しいのだけど、カツ2枚は割とお腹に来るものがあった。

やんばる食堂

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続いてはやんばる食堂。「やんばる」は沖縄の北部地域の呼称なのだが、なぜか那覇市にある。先に出てきたルビーもそうだが、お冷やの代わりに甘いアイスティーを飲むことができ、やんばる食堂のアイスティーはパック飲料として県内スーパー、コンビニで購入できたりもする。

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トンカツ定食は780円。こちらも写真では分かりにくいがカツは2枚ついている。

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カツの断面はこちら。薄いながらも脂身が入っているのがわかる。

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カツの厚さは最も薄い部分で10mm、厚みがある部分で14mm。カツに使われている肉が結構筋っぽい肉なのだが、それが逆にこの薄さだときちんと肉を主張していてきちんとトンカツを食べている感じがした。しかし、ルビーも含めてカツが2枚ついてくるのは何かの流行だったのだろうか。

仲丸

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最後は沖縄市にある「仲丸」。沖縄で「薄いカツ」といえばこの店!というカツが薄いことで有名なお店。

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トンカツ定食にはAとBがあるのだが、トンカツ定食B(通称「カツB」)が有名である。

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こちらがトンカツ定食B。700円。

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恐らく沖縄で最も薄いトンカツはここ、仲丸なのではないかと思う。

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その薄さは7.8mm。1cm未満!

味は説明が難しいのだが、トンカツでは無い何か別の料理を食べているような感じになる。衣も薄いので、衣を食べているわけでもなく、かといって肉を食べている感じもなく表現が難しいところだ。

全然油っこさもないので、無限に食べられそうな感じだしお腹にも全然たまらない。駄菓子にビッグカツというお菓子があるが、お金持ちが食べるビッグカツはこんな感じかもしれない。

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沖縄の薄いトンカツとはなんだ

さて、コロナウィルスの影響で沖縄も独自の緊急事態宣言が発令されており、そこまで店舗をまわれなかったのでサンプルが少なくて恐縮なのだがまとめてみると

・普通のトンカツか薄いカツかの境目はだいたい15mmくらい
・大衆食堂でも薄いカツを出す店とそうじゃない店がありそう
・ただ、総じて大衆食堂のトンカツは薄い傾向にありそう

という感じになるかと思う。薄いトンカツは肉が薄いだけでなく、極限まで叩いて広げられており「薄く、広い」というのも特長になるんじゃないだろうか。

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以前に「沖縄のかつ丼の具材が多い」という記事でも紹介したが、沖縄のカツ丼も微妙に日本本土と違っており、同じようにトンカツにも「沖縄風トンカツ」みたいなジャンルがあるんじゃないかと思っている。残念ながらまだサンプルが少ないので、もう少し事例を集めて見たいと思う


色んな人からコメントを頂いた

沖縄の薄いトンカツについての記事を公開したあと、色々コメントを頂いた。

ひとつは、沖縄のトンカツはカツレツに近いものなのではないか、という意見である。調べてみると大正時代にはすでに那覇にカツレツを出す洋食屋というものが存在したようだが、カツレツが今もなお沖縄の大衆食堂で残っているというのもなかなか興味深い。そういえば沖縄では豚肉料理が豊富にあるが、豚肉を揚げるトンカツみたいなものは郷土料理には無いように思う。沖縄のトンカツの薄さにはなにか壮大な歴史があるのかもしれない。

また、頂いたコメントによれば韓国のトンカツもおしなべて薄いらしい。そうなると何か地域性みたいなものもあるのかもしれない。

はたまた東京でも薄いトンカツ「紙カツ」というものがあり、昔はよく食べられていたというので、単に日本に昔からあった料理がそのまま残っているだけなのかもしれない。

現時点では何が正解か分からないのだけど、とりあえずめちゃめちゃトンカツを食べたのでしばらくはさっぱりしたものが食べたい。年齢を感じる今日この頃である。

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