おひつ納めの話の前にちょっとだけ、ウィキペディアの話をさせてください。ウィキペディアにある写真のほとんどは、ボランティアが撮影した画像です。そして何を隠そう、私はウィキペディアに画像などを提供しているウィキペディアン(ウィキペディアに貢献している人)です。
そして、今回は桜が池の「おひつ納め」の画像がありませんでしたので、撮影しに、御前崎市へ行ってきました。(旅行も兼ねて!)2025年のお正月以来二回目です。
2025年の年末年始に私は浜岡砂丘と池新田という町をまわりました。池新田の隣町が佐倉です。佐倉の高いところに「おひつ納め」が行われる桜ヶ池があります。
国道150号線沿いには、「桜ヶ池」と書かれた巨大な鳥居があります。
お彼岸の中日、桜ヶ池におひつを納めるのです。おひつを。なんなら中にはお赤飯が詰まっています。さあ、どうやるんでしょう。
おひつ納めの流れ
桜ヶ池のほとりには池宮神社があります。
「おひつ納め」では、まず池宮神社からお神輿が出発し、池の東側まで行きます。続いて、船が出発し、池の西側でゆっくり進みながら待機します。
では肝心のおひつはというと、一般客ではどうにも見られません。池の対岸へ、既に持って行ってあるのです。池の対岸は「原生林」とモノの本に書いてあります。
ここで、ふんどし一丁の遊泳部らが登場します。主役ですよ。今年、遊泳部は9人いるとのこと。水に入るときに何か軽く水切りのようなことをして、一人ずつ、この桜ヶ池に入っていきます。5メートル~10メートルくらいの間隔で、池の対岸へと遊泳していくのです。なお、遊泳部の部は部活の部ではないです。あつまり。
遊泳部は18~30才までの男子とか言ってた気がします(うろおぼえ)。9人全員が対岸へ渡ると、今度は一人一つ、おひつを押しながら、こちらへ泳いできます。立ち泳ぎだそうです。このおひつの下半分には赤飯がギュウギュウに圧してあります。おひつの上半分には御幣ぐらいしかないのです。なので浮きます。
池の中央まで泳いで来たら、おひつをクルクルと回した……かと思うと、即、全体重をかけて沈めます。沈めることを納めると言っているのですね。
一つおひつを納める度に、鐘がゴ~ンと鳴らされ、見物客は皆で拍手します。
今年、納めるおひつはなんと36櫃もあります。かつては200櫃を超えたこともあるそうで、当時は二日に分けて納めていたそうです。もしおひつの数が素数だったらどうするんだろう。
また(今年は一人あたり)四つのおひつを納めきった遊泳部が岸に上がるたびに、また見物客が拍手を送るのです。
沈めたおひつは、やがて浮かび上がってきます。今さら初めていうのですが、それぞれのおひつには、奉納した人の名前とお願いが書いてあります。浮かんだときに、中のお赤飯がカラだったら、神慮が叶った、とみなされます。これを「納まった」と呼びます。逆に、中にお赤飯が残っていたら、神慮叶わず、というわけです。
途中で、おひつを奉納した個人や企業の名前が一つ一つ読み上げられていました。中部電力を筆頭とする御前崎市の企業さんも多かったですが、全国各地の地名も読み上げられていました。
さて、なぜおひつを沈める(納める)のでしょうか。
おひつ納めの由来
皇円というお坊さんがいまして、衆生を救うために「弥勒菩薩が出現するまで待つ!」ということで龍と化して桜ヶ池に入定(永遠の瞑想に入ること)した、と伝えられています。そのため、桜ヶ池の前の売店には、ちょっとしたナゴヤドームかってぐらいドラゴンの置物やグッズがうられています。
さて、皇円のお弟子さんの中には、中学の歴史教科書にも載っている有名なお坊さんがいました。法然です。法然は桜ヶ池を訪れ、お米入りのおひつを池宮神社に一つ、池に一つ、納めたそうです。これがおひつ納めの由来です。
それにしても私、おひつ納めに関してやたら詳しいですよね。なぜだかわかりますか?
おひつ納めの記事
なぜなら、15時ごろに納め終り、その足で図書館に行き、資料を調べ回っていたからですね。見に行く前に予習もしましたが、何事も、本物を見た後に復習として資料を読むと、非常にわかりやすいものです。
しかしバスの時間の関係で、資料のコピーをする時間はありませんでした……浜岡町史や御前崎市史など、入手しやすい本でウィキペディアに記事が書けそうなので、時間を作って書こうと思います。そう、おひつ納めの画像はアップロードできたのですが、独立記事は、まだウィキペディアにないのです。正直なところ、独立記事にできるかどうかすらわかりません。皇円や桜ヶ池の記事に加筆する形になるかもしれませんね。
ウィキペディアの画像撮影は、画像提供依頼に答えるのももちろん大事です。それよりほかにも、まだ独立記事すら存在しない(特筆性のある)事物を、時機を逃さず撮っておく。これも大事だと思います。
だって年に一度しかない、天下の奇祭なんですから。
この記事は読者投稿でお送りいただいた記事です。
編集部より寸評
内容が珍しい、そしてビジュアル的なインパクトもあり、そして歴史もあるというまさに理想的な奇祭の紹介でした。まだまだ知らない奇祭が日本にはたくさんありますね…。
そして単に珍しいイベントの紹介ではなく、Wikipediaへの寄稿という自分の活動としっかり関連づいたレポートなのが良いと思いました。100%対象の紹介の記事ではなく、自分側の世界も書くことで「書き手の顔」が見えますよね。VTuberの方に言うのもなんですが。
くわえて、みなさんおなじみのWikipediaの裏側がちょっと見える記事になっているものいいと思います。見どころたくさんのレポートでした!(編集部・石川)
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