ペンを選ぶ
手の甲にメモする内容って「◯◯時までに◯◯する」ぐらいの簡単なものがほとんどだろう。十数文字が最大だと思う。
だがそれは手の甲の本領ではない。もっともっとやれるのに楽な役回りに甘んじている。「機会があったら本気を出そう」とか考えていたら一生一言メモのままだ。いつかじゃない。やると決めて、やるのだ。今を生きろよ、メモ帳なんだろ。
右手に試し書きをしながらペンを選んだ。筆ペンや水性ペンは手にインクが乗りにくい。油性ペンにしよう。
たくさん文字を書きたいので細いペンがいい。0.1mmの油性ペンを用意した。
縦書きがいい
準備ができたところで公園に来た。天気が良かったので。
ここで手の甲にメモ帳デビューしてもらおう。
有名な小説をどこまで書き写せるかやってみよう。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』にした。
読める範囲でできるだけ小さく書いていく。0.1mmのペンはチクチクして痛かった。乾燥する冬にやるもんじゃないなと思ったが、夏は汗で書きにくいのかもしれない。コンディションを整えるのが難しいメモ帳である。
カンダタが出てきたぞ
お釈迦様の行動に全部「御」が付いていて体力が削られる。「御歩き」とか「御佇み」とか。
でも手の節の部分を過ぎたらだいぶ書きやすくなった。
ペンを変えたら太くなってしまった。でも待ち望んでいたので太字でいいだろう。
464文字だった
書けた文字数は464文字。400字詰めの原稿用紙1枚とちょっと。
料理のレシピなら書き切れるだろう。あと居酒屋のトイレにある『親父の小言』は425文字だった。ちょうど収まる。
両利きの人は右手の甲にも同じように書けるので928文字になる。これだけあれば短いコラムも、歌の歌詞もだいたい収まる。安室奈美恵の『CAN YOU CELEBRATE?』が608文字だった。
そしてこの段落も含めた本文(見出しとキャプションは除く)もちょうど928文字。手の甲にメモした記録が全部手の甲に入るのだ。