ノーマルのハンバーガー、今こそ再評価を!
「ハンバーガーは単価が安いので、ダイナミックな具材を入れた単価の高いメニューよりプッシュされないのではないか。今の地位はおかしい」。そう勘ぐりたくもなるほど、ノーマルのハンバーガーは魅力的だった。
ずっと愛され続けてほしい。
ハンバーガー屋さんの、ノーマルのハンバーガー。かつては「ラーメン屋の(醤油)ラーメン」のような立ち位置の主役メニューだった。
しかし最近ではメニュー表の片隅にあり、明らかな脇役扱いだ。中には裏メニュー的な扱いにまでなったものさえある。
だがノーマルなハンバーガーでしか味わえない、プレーンなおいしさと安さ。それは再評価されるべきではないか。
その魅力を改めて知るために7つのハンバーガーチェーンをめぐったら、「これぞハンバーガーの完成形」とまで思えた。
こちらは80年代前半ごろとされるマクドナルドのメニューだ。見て欲しい、ノーマルのハンバーガーが堂々左上のメインの座についている。
こちらはロッテリアのメニュー。恐らく80年代半ばのものと思われるが、こちらもハンバーガーは一番左上にあり、メイン中のメインメニューとして君臨している。
当時はハンバーガーの代表格であった、ノーマルのハンバーガー。しかし結論から言うが、7店めぐってこの左上にとどまることのできたハンバーガーはなかった。
果たしていまはどんな立ち位置なのか。そしてノーマルハンバーガーを改めて食べると、何が見えるのか。
(ちなみにフレッシュネスバーガーは、ノーマルのハンバーガーにあたるメニューがキッズセットの中にしかなかったので今回はパス)
まずは僕らのハンバーガーショップの代名詞、マクドナルドへ。
「マクドナルドのおいしさの原点」というノーマルのハンバーガー。さっそく注文しよう。
しかしメニューを見ていても、いっこうにハンバーガーの姿が見当たらない。まさか……と思ったら、左下の隅に見つけた。
いちばん下の単品バーガーの欄に、小さく文字だけで掲載されていた。これが世界最大手マクドナルドの、「ハンバーガー」の現在の立ち位置である。
このように、バンズの間から具材があまり見えないのがノーマルのハンバーガー然としたところだ。
開いて中身を見たことはなかったのだが、110円なのに具材が多い。多めの玉ネギに加えてピクルスもしっかり入っている。
肉はちょっと薄めだが、この値段でここまで具材を入れるのはさすがマクドナルドである。
ケチャップの味がかなり強い。さらにたくさんの玉ネギがサクサクの食感とともに味わえて、心地よい臭みさえ感じられるほどだ。
それでもほかのバーガーに比べるといたってシンプル。あまり具材が入りすぎていないからこその余白、余韻が楽しめた。
続いては、日本シェア2位のモスバーガーへ。
ハンバーガーコーナーの欄外的な掲載位置だった。画像があるだけマクドナルドよりはマシだが、やはり扱いは小さい。
さっそくハンバーガー(204円+税)を注文した。席で完成を待つ形であるが、できたてはアツアツだ。
ちなみにモスのハンバーガーは上から見ると小さく見えるが、高さがある。ちょっと球体寄りの形だ。
中を見ると……マクドナルドの2倍の価格だけあって、大きめの玉ネギがゴロゴロと入っている。ケチャップやマスタードもまんべんなくかかっていた。
いただこう。豊潤なふっくらバンズが際立つおいしさだ。バンズがメインで、肉がサブの役割として機能している。
具材が圧倒的な存在感を見せる、豪華版ハンバーガーとは一線を画す。
おいしさのあまり食べ続けるとあっという間に無くなっていき、アツアツのまま完食した。
7つのチェーンの中でも、このモスのノーマルハンバーガーが個人的に最も好きになれた。
ノーマルハンバーガーは、口に入れる際の取り回しもいい。無理に大きく口を開けずとも食べられるストレスの無さが、満足感を後押しする。
「スマートフォンのサイズは、コンパクトだった昔のものがいい」とよく言われるが、ハンバーガーのサイズもどこか似ている。
続いては日本シェア第3位のロッテリアである。前述の35年ほど前のメニューでは堂々の一番左上に位置していたノーマルのハンバーガーだったが、今はどうか。
扱いは小さいし、何やら光まで当たっていないのは何の因果か。ともかくロッテリアハンバーガー(170円+税)を注文しよう。
マクドナルドなどより肉が分厚く見える。
玉ネギが少々、ピクルス。さらにケチャップに加え、マスタードが多めに入っている。
薄く見えるピクルスは情けないようでたくましくもあって、意外にかみごたえもある。マスタードの味が効いていてスパイシーだ。
それにしてもノーマルのハンバーガーは「よし、食べるぞ!」と気合もいらずにスッと食べられるし、スイスイおなかに収まる。
続いてはドムドムバーガーへ。1970年に日本初のハンバーガーショップを開いた元祖店である(当時は米国領だった沖縄のA&Wを除く)。
現在では店舗数を減らしているが、貴重な一店に足を運んだ。
ハンバーガーメニューの末席にちょこんとあったノーマルのハンバーガー(219円+税)をいただこう。
ちなみにドムドム(ともう一店)専用のフードコートはガラガラ。経営は大丈夫かと心配になりながらも、アツアツをいただく。
食べると、ケチャップの甘味の強さが口に広がっていく。
さらにこのバーガーのアクセントが大きめのピクルス。柔らかく食べやすい。
サクサクで固めのパン生地とともに肉を噛みしめ、風味を楽しむうちに完食した。ごちそうさま!
次はファーストキッチンだ。最近はウェンディーズとのコラボ店舗も多いが、ノーマルのハンバーガーならばと単独店にやってきた。
さてハンバーガーだ。実はノーマルのハンバーガーはショッピングセンター店舗限定品になっており、追いやられているのがわかる。
しかし、メニュー表のどこを探してもハンバーガーがない。聞いたら、「メニューにはないが、頼んでくれればある」そうだ。
ファーストキッチンではノーマルハンバーガーは裏メニュー扱いのようである。とうとうここまで追い込まれた。
入っているのはパン、肉、ケチャップ、以上。玉ネギ、ピクルス、マスタードすらない。それなのに250円とそれなりの値段だ。
だが味はいい。ケチャップの味が主張しすぎずに、パンと肉をひたすら楽しめる。特に肉を噛みしめたときの香ばしさはなかなかだ。
ここからは写真を撮るのも忘れて、いつの間にか食べ終えてしまった。これが今回3番目に好きだったバーガーである。
次は店舗数世界2位のバーガーキングだ。
ちなみにこちらもハンバーガーの単独メニューは書かれていなかった。右下の子ども用セットの中に名を連ねるだけだ。
だが頼めば提供してくれる。
ハンバーガー(200円)を食べてみると……一口目から違う。ケチャップはとても味が濃く、マスタードもすごくスパイシーだ。とにかく強い味のケチャップとマスタードが暴れるバーガーである。
その味の濃さに、バンズやパティの影が薄くなるほど。眠気も覚める刺激的な一品だった。
最後は知る人ぞ知る絶滅危惧チェーン、サンテオレである。1973年に明治サンテオレとして誕生し、100店舗を超えるチェーンだったが、近年は衰退。
関東と新潟に5店舗を残すのみとなった。
単品価格は隣の男爵コロッケバーガーの320円よりも高く、今回最高額の340円である。
いきなり異彩を放つ外見だ。そこに黄色いソースがたっぷりとある。
中を開けると、やはり大量のソースがかかっているのに加え、玉ネギもいっぱい。
さっそく食べてみると、口の中はソース味でいっぱいに。マヨネーズソース(?)と、お好みソースとてりやきソースの中間のような黒いソースの量に圧倒されるが、これがおいしい。
今回の中では比較的大口を開けて食べる必要があったが、それだけの食べごたえもあった。
こんな「普通のハンバーガー」があるとは驚く。これが今回2番目においしかったバーガーだった。
ノーマルのハンバーガーは、「気がついたら、小さくなっている」。バツグンの食べやすさで無意識にどんどん食べてしまうのだ。
小さくてすぐ無くなるはかなさと頼りなささえ、妙味である。
さらにこの食べ歩きで、「ハンバーガーはノーマルで完成していたのでは?」とも思えた。
具材に比べてパンの割合が大きくて口当たりがいい。食べるときに大口を開けたり、具材がはみ出たりするストレスもない。安くてカロリーも少ない。
これからも食べ続けて、地盤沈下が続くノーマルのハンバーガーの地位を少しでも守りたい。
「ハンバーガーは単価が安いので、ダイナミックな具材を入れた単価の高いメニューよりプッシュされないのではないか。今の地位はおかしい」。そう勘ぐりたくもなるほど、ノーマルのハンバーガーは魅力的だった。
ずっと愛され続けてほしい。
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