特集 2020年7月17日

昔は主役、今はド脇役。チェーン7店の「ノーマルのハンバーガー」を食べて良さを語る

昔は堂々の主役だった普通のハンバーガーが窓際族扱い

ハンバーガー屋さんの、ノーマルのハンバーガー。かつては「ラーメン屋の(醤油)ラーメン」のような立ち位置の主役メニューだった。

しかし最近ではメニュー表の片隅にあり、明らかな脇役扱いだ。中には裏メニュー的な扱いにまでなったものさえある。

だがノーマルなハンバーガーでしか味わえない、プレーンなおいしさと安さ。それは再評価されるべきではないか。

その魅力を改めて知るために7つのハンバーガーチェーンをめぐったら、「これぞハンバーガーの完成形」とまで思えた。

ライター、番組リサーチャー。過去に秘密のケンミンSHOWを7年担当し、ローカルネタにそこそこくわしい。「幻の○○」など、夢の跡を調べて歩くことがライフワークのひとつ。ほか卓球、カップラーメン、競馬が好き。(動画インタビュー

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> 個人サイト 文化放想ホームランライター

かつてはバーガー店の花形だった、ノーマルのハンバーガー

こちらは80年代前半ごろとされるマクドナルドのメニューだ。見て欲しい、ノーマルのハンバーガーが堂々左上のメインの座についている。

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当時はメニューを下敷きにしたグッズがあった

こちらはロッテリアのメニュー。恐らく80年代半ばのものと思われるが、こちらもハンバーガーは一番左上にあり、メイン中のメインメニューとして君臨している。

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実家にあったロッテリア黄金時代のメニュー下敷き

当時はハンバーガーの代表格であった、ノーマルのハンバーガー。しかし結論から言うが、7店めぐってこの左上にとどまることのできたハンバーガーはなかった。

果たしていまはどんな立ち位置なのか。そしてノーマルハンバーガーを改めて食べると、何が見えるのか。

(ちなみにフレッシュネスバーガーは、ノーマルのハンバーガーにあたるメニューがキッズセットの中にしかなかったので今回はパス)

110円でも具材充実、マクドナルド

まずは僕らのハンバーガーショップの代名詞、マクドナルドへ。

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店頭では豪華版バーガーがドーンと宣伝

「マクドナルドのおいしさの原点」というノーマルのハンバーガー。さっそく注文しよう。

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ハンバーガーがない?

しかしメニューを見ていても、いっこうにハンバーガーの姿が見当たらない。まさか……と思ったら、左下の隅に見つけた。

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あった

いちばん下の単品バーガーの欄に、小さく文字だけで掲載されていた。これが世界最大手マクドナルドの、「ハンバーガー」の現在の立ち位置である。

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提供スピードは7店の中でも一番早かった
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中身があまり見えないのがノーマルハンバーガーらしい

このように、バンズの間から具材があまり見えないのがノーマルのハンバーガー然としたところだ。

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具材が割と入っている

開いて中身を見たことはなかったのだが、110円なのに具材が多い。多めの玉ネギに加えてピクルスもしっかり入っている。

肉はちょっと薄めだが、この値段でここまで具材を入れるのはさすがマクドナルドである。

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さすがに肉は少し薄め

ケチャップの味がかなり強い。さらにたくさんの玉ネギがサクサクの食感とともに味わえて、心地よい臭みさえ感じられるほどだ。

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口を大きく開けなくても食べやすい厚み

それでもほかのバーガーに比べるといたってシンプル。あまり具材が入りすぎていないからこその余白、余韻が楽しめた。

高いけどうまい、モスバーガー

続いては、日本シェア2位のモスバーガーへ。

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メニュー表でノーマルのハンバーガーを探した
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フードメニュー一覧。パッと見では見つからない
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あった

ハンバーガーコーナーの欄外的な掲載位置だった。画像があるだけマクドナルドよりはマシだが、やはり扱いは小さい。

さっそくハンバーガー(204円+税)を注文した。席で完成を待つ形であるが、できたてはアツアツだ。

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モスのハンバーガーは半径小さめ。画面4.7インチのiPhone 6sと比べる

ちなみにモスのハンバーガーは上から見ると小さく見えるが、高さがある。ちょっと球体寄りの形だ。

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高さは結構ある

中を見ると……マクドナルドの2倍の価格だけあって、大きめの玉ネギがゴロゴロと入っている。ケチャップやマスタードもまんべんなくかかっていた。

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大きめの玉ネギがゴッロゴロ入っている

いただこう。豊潤なふっくらバンズが際立つおいしさだ。バンズがメインで、肉がサブの役割として機能している。

具材が圧倒的な存在感を見せる、豪華版ハンバーガーとは一線を画す。

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フワフワバンズがうまい

おいしさのあまり食べ続けるとあっという間に無くなっていき、アツアツのまま完食した。

7つのチェーンの中でも、このモスのノーマルハンバーガーが個人的に最も好きになれた。

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1コが小さいから、もう1コ食べたくなる

ノーマルハンバーガーは、口に入れる際の取り回しもいい。無理に大きく口を開けずとも食べられるストレスの無さが、満足感を後押しする。

「スマートフォンのサイズは、コンパクトだった昔のものがいい」とよく言われるが、ハンバーガーのサイズもどこか似ている。

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マスタードが香る、ロッテリア

続いては日本シェア第3位のロッテリアである。前述の35年ほど前のメニューでは堂々の一番左上に位置していたノーマルのハンバーガーだったが、今はどうか。

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ロッテリア渋谷道玄坂店
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ロッテリアのメニュー表。バーガー欄の左上にあるのは絶品チーズバーガーだった
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ハンバーガーはほかの半分のスペースで掲載

扱いは小さいし、何やら光まで当たっていないのは何の因果か。ともかくロッテリアハンバーガー(170円+税)を注文しよう。

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横からのフォルムはきれい

マクドナルドなどより肉が分厚く見える。

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マスタードたっぷり

玉ネギが少々、ピクルス。さらにケチャップに加え、マスタードが多めに入っている。

薄く見えるピクルスは情けないようでたくましくもあって、意外にかみごたえもある。マスタードの味が効いていてスパイシーだ。

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マスタードがビンビン効く
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量が少ないので、あっという間になくなるノーマルハンバーガーの刹那

それにしてもノーマルのハンバーガーは「よし、食べるぞ!」と気合もいらずにスッと食べられるし、スイスイおなかに収まる。

ケチャップが強い、ドムドムバーガー

続いてはドムドムバーガーへ。1970年に日本初のハンバーガーショップを開いた元祖店である(当時は米国領だった沖縄のA&Wを除く)。

現在では店舗数を減らしているが、貴重な一店に足を運んだ。

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ドムドムハンバーガー三ッ境店
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バーガーメニューには、華々しい商品が並ぶが
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ハンバーガーは右端の半分のスペースで紹介

ハンバーガーメニューの末席にちょこんとあったノーマルのハンバーガー(219円+税)をいただこう。

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ソーシャルディスタンス仕様で1人がけのみ

ちなみにドムドム(ともう一店)専用のフードコートはガラガラ。経営は大丈夫かと心配になりながらも、アツアツをいただく。

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240円だけあって、肉は分厚い
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中はピクルスが目立つ

食べると、ケチャップの甘味の強さが口に広がっていく。

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大きいが食べやすいピクルス

さらにこのバーガーのアクセントが大きめのピクルス。柔らかく食べやすい。

サクサクで固めのパン生地とともに肉を噛みしめ、風味を楽しむうちに完食した。ごちそうさま!

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ついにハンバーガーが裏メニュー扱い。ファーストキッチン

次はファーストキッチンだ。最近はウェンディーズとのコラボ店舗も多いが、ノーマルのハンバーガーならばと単独店にやってきた。

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東京近郊では貴重な単独店のファーストキッチン

さてハンバーガーだ。実はノーマルのハンバーガーはショッピングセンター店舗限定品になっており、追いやられているのがわかる。

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ハンバーガー、ない

しかし、メニュー表のどこを探してもハンバーガーがない。聞いたら、「メニューにはないが、頼んでくれればある」そうだ。

ファーストキッチンではノーマルハンバーガーは裏メニュー扱いのようである。とうとうここまで追い込まれた。

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バンズでスポッと中身が隠れる
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中身は肉とケチャップのみ

入っているのはパン、肉、ケチャップ、以上。玉ネギ、ピクルス、マスタードすらない。それなのに250円とそれなりの値段だ。

だが味はいい。ケチャップの味が主張しすぎずに、パンと肉をひたすら楽しめる。特に肉を噛みしめたときの香ばしさはなかなかだ。

ここからは写真を撮るのも忘れて、いつの間にか食べ終えてしまった。これが今回3番目に好きだったバーガーである。

ケチャップとマスタードが刺激的、バーガーキング

次は店舗数世界2位のバーガーキングだ。

ちなみにこちらもハンバーガーの単独メニューは書かれていなかった。右下の子ども用セットの中に名を連ねるだけだ。

だが頼めば提供してくれる。

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ハンバーガーが……ない
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袋を空けるとバンズからケチャップが

ハンバーガー(200円)を食べてみると……一口目から違う。ケチャップはとても味が濃く、マスタードもすごくスパイシーだ。とにかく強い味のケチャップとマスタードが暴れるバーガーである。

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濃い色のケチャップとマスタードは味も濃い
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刺激性の強いノーマルバーガーもあったんだ

その味の濃さに、バンズやパティの影が薄くなるほど。眠気も覚める刺激的な一品だった。

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てりやき風ソースが驚きのうまさ、サンテオレ

最後は知る人ぞ知る絶滅危惧チェーン、サンテオレである。1973年に明治サンテオレとして誕生し、100店舗を超えるチェーンだったが、近年は衰退。

関東と新潟に5店舗を残すのみとなった。

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日本大通り駅店。シックな店構え
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ハンバーガーは中央に。左上ではないが7店の中では一番いい位置

単品価格は隣の男爵コロッケバーガーの320円よりも高く、今回最高額の340円である。

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来た。何やら黄色いソースがたっぷり

いきなり異彩を放つ外見だ。そこに黄色いソースがたっぷりとある。

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中身はソースたっぷり

中を開けると、やはり大量のソースがかかっているのに加え、玉ネギもいっぱい。

さっそく食べてみると、口の中はソース味でいっぱいに。マヨネーズソース(?)と、お好みソースとてりやきソースの中間のような黒いソースの量に圧倒されるが、これがおいしい。

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ソースがはみ出るほど

今回の中では比較的大口を開けて食べる必要があったが、それだけの食べごたえもあった。

こんな「普通のハンバーガー」があるとは驚く。これが今回2番目においしかったバーガーだった。

ノーマルのハンバーガーはこれほどに魅力的なんだ

ノーマルのハンバーガーは、「気がついたら、小さくなっている」。バツグンの食べやすさで無意識にどんどん食べてしまうのだ。

小さくてすぐ無くなるはかなさと頼りなささえ、妙味である。

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控えめなキミが好き

さらにこの食べ歩きで、「ハンバーガーはノーマルで完成していたのでは?」とも思えた。

具材に比べてパンの割合が大きくて口当たりがいい。食べるときに大口を開けたり、具材がはみ出たりするストレスもない。安くてカロリーも少ない。

これからも食べ続けて、地盤沈下が続くノーマルのハンバーガーの地位を少しでも守りたい。


ノーマルのハンバーガー、今こそ再評価を!

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ドムドムバーガーで見つけた、劣勢でも攻めを忘れない姿勢

「ハンバーガーは単価が安いので、ダイナミックな具材を入れた単価の高いメニューよりプッシュされないのではないか。今の地位はおかしい」。そう勘ぐりたくもなるほど、ノーマルのハンバーガーは魅力的だった。

ずっと愛され続けてほしい。

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