私の専門は薬学なんですが、忍者も様々な野草を薬にしたりしていて薬学と関わりが深いんですよ。
そんなこともあって色々調べていたところ、かつて弘前藩で忍者が活動していたという情報が出てきたんです。
青森県は東日本大震災で大きな被害は受けなかったものの、観光客は減ってしまっていたので、外国人向けに忍者でインバウンドを狙うというのもいいなと思って。
ただ、忍者って架空の存在みたいに思われているので、これまで学問の対象になってなかったんですね。
具体的にどういう活動をしていたのか? なぜ本州の北のはずれに忍者が必要とされたのか? それを解明しようと。
……と思っていたんですが、それだけじゃ興味を持ってもらえないですよね。青森大学には全国17連覇している名門の新体操部があるので、そこに協力してもらって忍者ショーをやったらウケるんじゃないかと考えたんです。
でも、体育会系の部活って基本的にかけもち禁止でなかなか協力してもらえなくて。だったら新たに忍者の研究と、忍者ショーをするような部活を立ち上げたらいいんじゃないかと。
そうです。
まずはサークルで実績をつんで、それから部活動に昇格という流れなんですけど、どうしても日本で最初に「忍者部」という部活を作ったというのをアピールしたかったんで、各所に拝み倒して(笑)。2年半前に学校公認の部活として「忍者部」がスタートしました。
集まらなかったので、最初は私が受け持っていた薬学部の学生を勧誘したりしていたんですけど、ラッキーなことに1年目の10月に、新体操部を辞めてこちらに入ってきてくれた学生がいたんですよ。
それから、彼を中心として忍者ショーをやれるようになりました。
江戸時代に関していえば、伊賀や甲賀と比べても活発に活動していたみたいですよ。
甲賀がルーツで、そこからスカウトされてきた忍者が弘前藩で部隊を作って、約20人前後の忍者が常に活用していたようです。
実は、石田三成の次男・重成が弘前まで落ちのびてきていて、その子孫が忍者部隊を結成したようなんですよ。
石田三成の子どもが青森まで!
でも、平和な江戸時代だったらスパイ活動をする必要もなさそうですけど、何をやっていたんですか?
蝦夷地(北海道)に対する監視ですね。
幕府からの命令で、アイヌと松前藩の戦いの諜報活動などをしていたみたいです。
ああー、シャクシャインの戦い!(1669年。当時の北海道を支配しようとしていた松前藩に対し、先住民のアイヌたちが蜂起した戦い)
そこに石田三成の子孫や忍者が絡んでたなんて……漫画になりそうないい題材ですね。
本当は、演劇とアクションを融合したようなことをやりたいと思っていたんです。
そんな時に「忍者部」ってヘンテコな部活ができるって聞いて。「こりゃ有名になるな」という予感がありましたね。
それに、忍者部のショーだったら、演劇+アクションの要素も入れられますから。
「忍者やってみないか?」っていい誘い文句ですね~。
菅原くんは入学前から「忍者部」があったわけですけど、存在は知っていたんですか?
知らなかったですね。
ただ、高校時代に弓道をやっていて、剣術などにも興味があったので「忍者部」って何だろうって興味を持ちました。
よくある忍者ショーって伝統的な衣装を着て、パフォーマンスも演舞に近かったりして、若い子からすると、とっつきにくいと思うんですよ。
だから僕たちは衣装にもなるべく気を遣って、パフォーマンスも派手に分かりやすくするよう心がけています。
「本当の忍者はバク転や宙返りなんてしてなかった」なんて言われることもありますけど、世間から求められているのはアクロバティックな忍者ですからね。
確かに……忍者ショーと言いつつ、割と地味な古武術の演舞みたいなことをやってるところもありますからね。
でも、忍者研究に取り組んでいる先生的には「ホントは違うのになぁ~」なんて思ったり……?
このまま技術を高めていけば、 来年か再来年には県外でもショーをやれるくらいのクオリティにはなると思うんで!
僕、個人の目標としては、忍者部での経験を活かしてアクションの仕事に就けたらいいなと思っています。
実は一昨年、弘前市内で 忍者屋敷を発見したんですよ。石田三成の子孫が居住していて、忍者軍団が集まる場所にもなっていたようです。
持ち主はすでに青森市に移り住んでいて空き家になっているんですが、ご高齢なので処分したいらしく、ちゃんとしたところが引き取って、一般公開できないかなと思っているんです。
みんなの大学でも「忍者部」作ってください
「忍者部って何やってるんだぁ~?」という感じで行った取材でしたが、忍者研究も忍者ショーも、思った以上に本気クオリティでした。
演劇がやりたい人、新体操がやりたい人向けの部活はありますけど、言われてみればアクション俳優などを目指している人が入るべき部活ってないんですよね。
そんな人にとって「忍者部」っていい受け皿ですよね。みなさんの大学でも「忍者部」作ってみたらどうでしょうか!?
ちなみに、青森大学忍者部には青森大学以外の人も入部可能だそうなので、興味がある人はfacebookページなどから連絡してみてください!