最後にお知らせです
見どころの多い東京の埋立地のクリアファイルを作りました。白い紙を挟むと1960年くらいの埋立地が浮かび上がります。
このクリアファイルを11月3・4日に湘南モノレール湘南江の島駅ビルで開催される「路上探検フェス」で発売します!
路上のきらめきを拾う、さまざまな探検者たちがたくさん集まりますので散歩好きは絶対楽しいイベントです。
ぜひお越しください!詳しくはこちら。
働いていると、ふとした瞬間に仕事から離れて遠くへ行きたくなることがある。しかしそう思う時はだいたい忙しいのが世の常だ。実際に旅に出るのはなかなか難しい。
旅に代わってお手軽に日常の閉塞感から抜け出す手立てはないものだろうか。
その手立てがこの度めでたく発見されました。夜の埋立地散歩です。
東京の湾岸エリアはそのほとんどが明治以降に埋め立てられて生まれたため土地の歴史が浅い。だからなのかエリア全体にどことなく近未来的な雰囲気が漂い、都内の他の場所とは違った空気が流れているような気がする。
そんなこともありちょっとした非日常感を手軽に味わうにはうってつけのエリアなのだ。
豊洲から埋立地散歩を始めていきたいのだが、その前にいま有楽町線の豊洲駅が面白いことになっているので見てほしい。
豊洲駅では現在ホームの拡張工事が行われており、ほとんど使われていなかった2番線と3番線にフタをして歩けるようにしているのだ。これは東京2020で予想される混雑に向けた対策で、ゆくゆくは2番線と3番線の間の仕切りも撤去され一つの大きなホームになるらしい。
その頃にはホームドアも撤去されてあまり線路の上を歩いてる感じがしなくなってしまうかもしれないので、この違和感を味わうなら今のうちだ。
さて、豊洲駅を出発してゆりかもめ沿いを歩いていくとすぐに豊洲公園という夜景の綺麗な公園がある。運河を隔てて晴海地区の高層マンションが目の前に迫る。
これだけでも日常の閉塞感からだいぶ解放されたような気分になるので埋立地すごい。
この豊洲公園の隣にアーバンドックららぽーと豊洲というショッピングモールがある。
ここは名前からも分かる通り、旧石川島播磨重工業(現在のIHI)の東京第一工場の跡地である造船所内に建設された施設だ。
このクレーン以外にもこの辺りには船のパーツや素材をモニュメントやベンチとして再利用したものが至る所に点在しており、土地の歴史を物語っている。
造船所だった頃の地図を見ると船を止めるドックが3つあることが分かる。
このうち、真ん中の2番ドックは現在もその一部が残されており、実際に遊覧船乗り場として利用されている。
NO.1とNO.3のドックは埋め立てられてしまい、今やドックとしての機能は失われてしまった。では一体何になっているのか。
ドックがドッグランになっているのだ。これ狙ってるよね…。
ゲーム開発者がこっそりゲーム内にネタを仕込むのと同じ感覚で、この施設の設計者がこっそりダジャレを仕込んだのだろうか。だとしたらそれに気が付けて良かった。気付かれないダジャレほど悲しいことはない。
さらに公にはされていないららぽーと豊洲の秘密を知ってしまったと考えると妙に特別な場所に思えてくる。「俺とららぽーと豊洲だけの秘密」だ。恋人かよ。
アーバンドッグららぽーと豊洲を後にして、引き続きゆりかもめ沿いに歩みを進めていこう。
15分ほど歩くとゆりかもめの市場前駅へと到着する。豊洲市場がオープンするまでは降りる人がほとんどいなかったが、豊洲市場が出来て新たにペデストリアンデッキも設置されるなど活気づいている。
市場前という駅名からも分かるように出来た当初から豊洲市場が出来ることを見越して作られた駅なので、まぁいつかは活気づく運命だったわけだが、本当に活気づくと感慨深い。シナリオ通りの人生を歩んでいる。
ご存知の通り、豊洲市場自体は朝が本番の施設なので日が沈んだこの時間は何もやっていない。寿司屋を始めとした飲食店が立ち並ぶゾーンも全てシャッターが締まっており、酢飯の匂いが立ち込めているだけである。
何も「酢飯の匂いで自前の白飯を食べよう!」という落語のような話をしたいわけではない。見てほしいのは市場前駅を背にして右側にある水産仲卸売場棟の屋上だ。夜はだれもいない豊洲市場だが、この屋上は23時まで入場可能なのだ。
ここを歩いていくと屋上緑化広場にあがれる階段がまず現れるのだが、オススメはその階段は登らずにそのまま直進し、さらに奥にあるスロープを使って屋上緑化広場に行くルートだ。
ここをあがると目の前に東京の夜景が飛び込んでくる。階段を使うと夜景からちょっと距離のある場所に出てしまうので、このスロープを使った方が急に目の前に夜景が現れてより強いインパクトを感じることができるのだ。
湾岸エリア広しといえどこんなにパノラマで湾岸エリアの夜景を一望できるスポットはそうそうないだろう。
それに何が良いって人が全然いないのだ。もちろん平日の夜という日時のおかげもあるだろうが、それでも同じ時間にお台場の海辺に行ったらきっとカップルや大学生がそれなりにいるだろう。
文字通り夜景を一人占めできる超穴場スポットだ。
この屋上緑化広場から水産仲卸売場棟の反対側へ降りることも出来る。水産仲卸売場棟の周りは豊洲ぐるり公園として整備されているのだ。
この反対側へ降りるエレベーターがまたかっこいい。
というわけでこの屋上緑化広場は満足度がめちゃくちゃ高いので夜の埋立地散歩をする時にはぜひ立ち寄ってほしい。
めちゃめちゃ良い夜景スポットを見つけて興奮してしまったが、もう一つ行っておきたい場所がある。
東京湾埋立地の中で最も沖合いにある中央防波堤だ。いわば埋立地の最前線である。
この中央防波堤にお台場から向かうためには短い海底トンネルを通る必要がある。この海底トンネルに歩道はないため歩いて中央防波堤に向かうことはできないのだが、東京テレポート駅前から波01という中央防波堤行きのバスが出ている。1日数本の過疎路線かと思いきや平日は1日に41本出ているのでそこまで乗車のハードルは高くない。
とはいえ夜の便はそこまで多くないので注意が必要だ。中央防波堤で降りて散歩をすることを考えたら終バス一本手前、平日なら東京テレポート駅前を20:25に発車するバスに乗りたい。
バスは東京テレポート駅前から乗ってもいいが、ゆりかもめに乗ったらテレコムセンター駅まで行ってしまっても良い。テレコムセンター駅前にも波01線のバス停がある。
このテレコムセンターには展望台もあり、平日は21:30まで営業しているので立ち寄ってみるのもよい。入場料は大人500円とお手頃だ。
展望台からはコンテナ埠頭や東京ゲートブリッジなどこの立地だからこそ見られるものも多い。
また双眼鏡が無料で使えるのも嬉しい。あべのハルカスや横浜ランドマークタワーなど正統派の展望台だときっちりお金を取られる。
先ほどあべのハルカスなどが正統派の展望台と書いたが、東京ゲートブリッジの展望台だってもちろん正真正銘の展望台である。
ただなぜかめちゃくちゃ「映え」に力を注いでいてちょっとおかしなことになっているのだ。
ご覧の通りあらゆる映えが大集合しているのだ。
原宿やみなとみらいなど色々な映えスポットに出かけなくてもテレコムセンターの展望台に来れば全部出来てしまう。
こんなに映えが集まっているのになぜかすごく頑張っている感じが出てしまうテレコムセンターにインスタ女子はぜひ殺到してほしい。すごい頑張っているから。
思いがけずテレコムセンターのくせが強く長くなってしまったが、いよいよ中央防波堤に乗り込もう。
前述したようにこの路線は中央防波堤に入るために短い海底トンネルを通る。海底トンネルという響きだけでワクワクする。
海底トンネルと聞いてすぐに思いつくのは青函トンネルやアクアラインなど、「旅に出る時に通る場所」だ。短くても海底トンネルを通るとなると否が応にも旅情が高まる。
走行時間としたら1分程度のものなのであっという間だし、言われなければもちろん海底という感じはしない。
しかし会社帰りに都内で海底トンネルを走っているという状況が非日常で面白いのだ。
中央防波堤バス停に降り立つと、言わずもがなではあるが周りには倉庫っぽい建物しかないし、トラックしか走っていない。さっきまで働いていた都内のオフィスからそう離れていないのにすごく遠くまできた感じがする。
来たのはよいが、中央防波堤に何があるかよくわからないので、どこに向かえば良いかもわからない。
とりあえず一緒にバスに乗っていた二人組の後ろをついていこう。
この先に何があるかも分からずに歩いていると、数年前に北海道を一人旅している時のことを思い出した。
その時は苫小牧で夜中初のフェリーに乗ろうと苫小牧駅から港まで一人寂しく歩いていたのだ。私以外に駅から港まで歩くような人はおらず、人気のない港周辺はかなり怖かったのを覚えている。
その時の感じと同じような感覚を都内で味わっているのだ。この不安とワクワク感が入り混じった感情こそ旅の醍醐味である。今回は「旅に代わるお手軽な手法」として夜の埋立地散歩をお届けしているが、まさに本当の旅のような感覚が味わえてしまっている。
ここから先は急に街灯もほとんどなくなり、真っ暗になってしまう。都内の果てといった様相だ。
調べてみるとここには「海の森公園」という公園が出来るらしい。2007年から植樹を開始しており、完成するのは30年後だという。完成した暁には23区内で最も広い公園になるようだ。
それにしても「果て」という言葉が似合いすぎる場所である。ファンタジーなら荒れ地の魔女が住んでいるし、SFなら人類が住めない土地だ。
お手軽な非日常感を求めてここまできたが、最終的にちょっとした旅の非日常感を超えてしまった。夜景から地の果てまで、埋立地のポテンシャルは計り知れない。
見どころの多い東京の埋立地のクリアファイルを作りました。白い紙を挟むと1960年くらいの埋立地が浮かび上がります。
このクリアファイルを11月3・4日に湘南モノレール湘南江の島駅ビルで開催される「路上探検フェス」で発売します!
路上のきらめきを拾う、さまざまな探検者たちがたくさん集まりますので散歩好きは絶対楽しいイベントです。
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