特集 2019年3月4日

街なかのねじを見て不安になる

ふだんはまるでそれが無いかのように生活していても、一度その「無い」という感覚を忘れてしまうと事物は存在を始めだすことがある。

街なかのプラスねじである。

1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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電車の内装はプラスドライバーで外せる、という話

プラスねじとは+の形の穴があいたねじのことであるが、これはどこにでもあるプラスドライバーがあれば簡単につけたり外したりすることができてしまう。

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どこにでもあるプラスドライバーで…

人から聞いた話なのだが、電車の網棚や内装はプラスねじで留められているのでドライバー1本で外せてしまうらしい。ほんとうだろうか。

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電車の座席の上の
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網棚
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あっほんとうだ。

電車の中をよく見ると、網棚だけではなく他の部分もかなりプラスねじで留められていた。

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手すり部分の根本も
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エアコンの網。たのむからプラスねじのように見えるけど全然ちがう機構の金具であってくれ、と思う。

こんなところまでふつうのプラスねじで留めてあるなんて…。椅子までどうかはわからなかったが、やろうとすれば手すりや網棚は外せそうだ。

しかしこれは早めに言っておこう。幼稚園や保育園で習うのでご存知かと思うが、街なかのねじをドライバーではずしたりしてはいけない。

やろうと思えばできる、という想像が怖い

われわれはやろうとすればいろいろなことができる。それが怖い。

オフィスで大声を上げながら全力疾走することだってできるし、橋から川に携帯電話を投げることだってできるし、郵便ポストと殴り合いのケンカもできる。したいかしたくないかではなく、できるということ。

やろうとすればできてしまう、というのはすごいことなのだ。ふだんは気づかないようにして生きているが、そういう安定した日常を揺さぶってくる問いかけである。

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ドアが開いた足元なんてねじだらけだった。ひゃー。

その一つとしていま、電車のプラスねじは外そうと思えば外せることに気づいてしまった。言い方がむずかしいが「物理的には可能」というやつだ。ぜったいに推奨するものではない。

しかし想像するだけでもかなり怖い。あるいは不安になる。

街なかにあるプラスねじを見よう

怖さの原因の一つとして、「公共の場所にあるこんな大事なものがプラスねじで留まっているなんていいのか」という考えがある。だれでも簡単に取れてしまうのでは、と。

そんな怖さをよそに、街なかにはプラスドライバー一本あれば外せてしまう大事なものが実はけっこうあるのではないだろうか。おそるおそるながら、気になってくる。

あまり踏み込まないようにしながら探ってみよう。

まず電車を降りた駅中はどうなっているだろう。

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駅の自販機はどうだろうか
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自動販売機は問題なかったがゴミ箱はプラスねじで留められていた

 

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ここ外したら機械取れちゃうかもしれない
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え、こんな大事なものもそんな取り付け方でいいの? 大丈夫?

ここにも!ここにも!という感じでプラスねじを見つけることができた。路線案内板とかかなり大事なものじゃないだろうか。駅の無防備さを見つけてしまった思いだ。

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考えすぎでしょうか?(考えすぎだと思う人は、そういう考えすぎな人を見る記事だと思って読んでください)

このねじを外していく人はなかなかいないだろうが「もし…」と想像したときの信頼性は4桁の数字のパスワードより劣るんじゃないか。

ぼく以外の人はこのようなものがプラスねじで留められていることに気づいているのだろうか。そして、気づいて平気でいられるのだろうか。

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一旦こういうときはドライバーの写真でも見て落ち着こう。

ドキドキを抑えるためドライバーの写真を持っていくことにした。写真を持っていくことで「ドライバーが無いこと」を持っていくことができる気がしたからだ。

もちろん本物のドライバーは家に置いてきた。

街なかにもいろいろあるぞ

このままだと駅ナカでドキドキしてるだけで終わりそうなので、街に出てみた。

まず見かけたのが道案内の標識だ。

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こういう標識はどうか
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プラスねじだ! 無防備!(?)
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渋谷で見たこのタイプも下から見たらプラスねじで留められていた

こんなんじゃすぐ取られちゃうじゃないか! と不安に思った直後、これ取るやつもいないかと安心する。取ってもどうしようもないじゃないか。ふう。なんだか今日はハートが忙しい。

扉もプラスねじ

道を歩いているとある扉に気がついた。

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このドアなのだが
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頑丈そうに見えて鉄板がプラスねじで留められていた。

まさかこのねじを外して鉄板をどけたら向こう側につながってる…ということはなさそうだが。頑丈なのか脆弱なのかわからなくなってくる例だ。

またこの扉も気になった。

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なにかしらの電気関係の装置が入れられているだろう収容箱

ご覧のように正面にカギがつけられているのだが、横を見ると。

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蝶番が外からプラスねじで留められていた

これ、ねじを外したら正面の扉ごと取れてしまうのでは? そんなことないのだろうか。やってみないとわからないしやるつもりもないが、ただ心配になってくる。

なんにせよカギのついた扉にプラスねじをつけるのはよしてほしいものである。

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一旦これをみて落ち着こう

どうしてドキドキするのか

なぜプラスねじを見るだけでこんなにどきどきするのだろう。

それはプラスねじの存在が解体の手順を示しているからではないかと思う。手元にあるスマートフォンなんかはつるつるしていて一体どこから分解していいのかわからないが、プラスねじがあればここからやるんだろうなという気になる。

その一歩踏み出せそうな感覚が、怖いのである。

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自動車はつるつるしている。バラバラにするための初手が思いつかなくて頼もしい

なんだかよくわからないけどバラバラにできそう

一方なんだかわからないけどたくさんのプラスねじで留められていて「バラバラにできそう感」を煽るものもある。

たとえばこちらの柱はなんでこんなことになってるのかわからないが、たくさんねじがついている。

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ほかの電柱より一回り太い柱
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二段構えのプラスねじ

順番を間違えると始めからやり直しになりそうな、そんなパズル的要素を感じさせるねじ具合いだ。

また同様にしてこちらの公園のベンチなのだが…。

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憩いの場として活躍する池袋の公園のベンチ
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しかしその足元は全てプラスねじで支えられていた

たくさんの板がプラスねじでで留められていて、苦労はするだろうが全部はずしきったときの達成感はものすごいだろう。もちろん頭の中にとどめておく。

これは危ないんじゃないか

ただ不安なだけじゃなくて危険を感じさせるものもあった。

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歩行者用デッキの接続プレート

歩行者用のデッキをつなぐ金属のプレートがプラスねじで留められていた。これ外したらスポーンとハマってしまう人いるんじゃないか? 危険だ。

そう思って下に回って覗いてみたが、ちゃんとコンクリートでつながっていた。ちょっとした溝を埋めているだけのようだ。

そもそもねじを外さなければ安心である。

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さがれ、こいつは危険だ

こちらの箱は高圧危険というくらいなら頑丈なボルトでがっしり締めてほしいと思う。

高圧の何が入っていて危険なのか、ねじを外して確かめたくなる気持ちはすこしだけ湧いてきてしまう。

でもねじを外さないことが安全への第一歩であろう。

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おちつけ

プラスねじじゃないと安心する

あれもこれもプラスねじで留まっているわけではなく、そうでないものももちろんある。

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一瞬プラスねじに見えたがボルト的なものだった。安心だ。
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こういう立派な広告も
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ボルトで安心(今回は初級編なのでボルトは安心なものとして見ています)
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この椅子もドライバーで!? と思ったが六角レンチがないと無理そうだ。いや六角レンチでも油断はできないけど、今日はもういい。
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このチェーンに至ってははまったく意味がなく絡まってるだけなのだが安心感がある。

以上、一旦思ってしまったら不安になってしまう系のぼくらでした。


ねじを考えて眠る

今回見た限りだとねじはすべて締まっていて、はずれてしまったものは見当たらなかった。心配しながらいろいろ見たが案外安心なのかもしれない。
 
世の中にはいっぱいねじがいっぱいあるし、一本くらい抜けてしまっても何も問題ないかもしれないというのにみんながんばっているようだ。
 
それでももう少し不安になってみたい気持ちがある。世界のどこかのだれも知らない闇の中で、うっかり外れてしまったねじの一本のことを想像しながら今日は眠るのだ。
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くれぐれも他所のねじを抜かないようにしてください
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