電車の内装はプラスドライバーで外せる、という話
プラスねじとは+の形の穴があいたねじのことであるが、これはどこにでもあるプラスドライバーがあれば簡単につけたり外したりすることができてしまう。
人から聞いた話なのだが、電車の網棚や内装はプラスねじで留められているのでドライバー1本で外せてしまうらしい。ほんとうだろうか。
電車の中をよく見ると、網棚だけではなく他の部分もかなりプラスねじで留められていた。
こんなところまでふつうのプラスねじで留めてあるなんて…。椅子までどうかはわからなかったが、やろうとすれば手すりや網棚は外せそうだ。
しかしこれは早めに言っておこう。幼稚園や保育園で習うのでご存知かと思うが、街なかのねじをドライバーではずしたりしてはいけない。
やろうと思えばできる、という想像が怖い
われわれはやろうとすればいろいろなことができる。それが怖い。
オフィスで大声を上げながら全力疾走することだってできるし、橋から川に携帯電話を投げることだってできるし、郵便ポストと殴り合いのケンカもできる。したいかしたくないかではなく、できるということ。
やろうとすればできてしまう、というのはすごいことなのだ。ふだんは気づかないようにして生きているが、そういう安定した日常を揺さぶってくる問いかけである。
その一つとしていま、電車のプラスねじは外そうと思えば外せることに気づいてしまった。言い方がむずかしいが「物理的には可能」というやつだ。ぜったいに推奨するものではない。
しかし想像するだけでもかなり怖い。あるいは不安になる。
街なかにあるプラスねじを見よう
怖さの原因の一つとして、「公共の場所にあるこんな大事なものがプラスねじで留まっているなんていいのか」という考えがある。だれでも簡単に取れてしまうのでは、と。
そんな怖さをよそに、街なかにはプラスドライバー一本あれば外せてしまう大事なものが実はけっこうあるのではないだろうか。おそるおそるながら、気になってくる。
あまり踏み込まないようにしながら探ってみよう。
まず電車を降りた駅中はどうなっているだろう。
ここにも!ここにも!という感じでプラスねじを見つけることができた。路線案内板とかかなり大事なものじゃないだろうか。駅の無防備さを見つけてしまった思いだ。
このねじを外していく人はなかなかいないだろうが「もし…」と想像したときの信頼性は4桁の数字のパスワードより劣るんじゃないか。
ぼく以外の人はこのようなものがプラスねじで留められていることに気づいているのだろうか。そして、気づいて平気でいられるのだろうか。
ドキドキを抑えるためドライバーの写真を持っていくことにした。写真を持っていくことで「ドライバーが無いこと」を持っていくことができる気がしたからだ。
もちろん本物のドライバーは家に置いてきた。
街なかにもいろいろあるぞ
このままだと駅ナカでドキドキしてるだけで終わりそうなので、街に出てみた。
まず見かけたのが道案内の標識だ。
こんなんじゃすぐ取られちゃうじゃないか! と不安に思った直後、これ取るやつもいないかと安心する。取ってもどうしようもないじゃないか。ふう。なんだか今日はハートが忙しい。
扉もプラスねじ
道を歩いているとある扉に気がついた。
まさかこのねじを外して鉄板をどけたら向こう側につながってる…ということはなさそうだが。頑丈なのか脆弱なのかわからなくなってくる例だ。
またこの扉も気になった。
ご覧のように正面にカギがつけられているのだが、横を見ると。
これ、ねじを外したら正面の扉ごと取れてしまうのでは? そんなことないのだろうか。やってみないとわからないしやるつもりもないが、ただ心配になってくる。
なんにせよカギのついた扉にプラスねじをつけるのはよしてほしいものである。
どうしてドキドキするのか
なぜプラスねじを見るだけでこんなにどきどきするのだろう。
それはプラスねじの存在が解体の手順を示しているからではないかと思う。手元にあるスマートフォンなんかはつるつるしていて一体どこから分解していいのかわからないが、プラスねじがあればここからやるんだろうなという気になる。
その一歩踏み出せそうな感覚が、怖いのである。
なんだかよくわからないけどバラバラにできそう
一方なんだかわからないけどたくさんのプラスねじで留められていて「バラバラにできそう感」を煽るものもある。
たとえばこちらの柱はなんでこんなことになってるのかわからないが、たくさんねじがついている。
順番を間違えると始めからやり直しになりそうな、そんなパズル的要素を感じさせるねじ具合いだ。
また同様にしてこちらの公園のベンチなのだが…。
たくさんの板がプラスねじでで留められていて、苦労はするだろうが全部はずしきったときの達成感はものすごいだろう。もちろん頭の中にとどめておく。
これは危ないんじゃないか
ただ不安なだけじゃなくて危険を感じさせるものもあった。
歩行者用のデッキをつなぐ金属のプレートがプラスねじで留められていた。これ外したらスポーンとハマってしまう人いるんじゃないか? 危険だ。
そう思って下に回って覗いてみたが、ちゃんとコンクリートでつながっていた。ちょっとした溝を埋めているだけのようだ。
そもそもねじを外さなければ安心である。
こちらの箱は高圧危険というくらいなら頑丈なボルトでがっしり締めてほしいと思う。
高圧の何が入っていて危険なのか、ねじを外して確かめたくなる気持ちはすこしだけ湧いてきてしまう。
でもねじを外さないことが安全への第一歩であろう。
プラスねじじゃないと安心する
あれもこれもプラスねじで留まっているわけではなく、そうでないものももちろんある。
以上、一旦思ってしまったら不安になってしまう系のぼくらでした。