再挑戦
というわけで、一度帰って昼寝した後にもう一度行ってみることにした。
ここまで来るともう単なる夏祭りファンである。それでもいい、おれは今日はここに居場所を確保するのだ、と、寝起きだったからだろうか、不思議な義務感に駆られていた。
そもそもさっきはなぜ夏祭りを楽しむことができなかったのだろう。
きっと「部外者」という意識が過剰すぎたのではないだろうか。実際部外者なのだけれど、夏祭りに来たい気持ちは誰よりも強いのである。
次は二度目の挑戦である。さっきの教訓を生かして、あの場所に馴染むべく、なるべくみんなと同じ格好を心がけて家を出た。
短パンにビーサン、手にはうちわという装いである。さっきだいたいみんなこんな感じだった。
入り口の係の人はさっきとは変わっていたが、さっきと同じように、軽く会釈をしてくれるだけで僕を通してくれた。
「あいつまた来やがったな怪しい!」ではなく「お!着替えてきたんだね!ってことは家が近所なんだね!ようこそ夏祭りへ!」とその会釈をいいように解釈する。
会場の様子はすでによく知っている。ただ、夕方になって人が倍くらいに増えていた。
さっき光GENJIを流していた夏祭り会場は、いまはWinkを大音量でループ再生していた。運営が僕らと同世代なんだろうか。友達になりたい。友だちになって来年また一緒に夏祭りに来たい。
昼間にくらべて陽の光が穏やかなおかげか、会場の雰囲気もずいぶんと落ち着いて感じられた。考えすぎなのかもしれないが、居場所を求めてさまよい歩いた、昼間みたいな焦燥感がない。
ただ、やっぱり(いてもいいんだろうか)という緊張感は否めない。
その時、奇跡が起きる。
祭り生誕の軌跡
この夏祭り、なんと51回目なのだという。
51年前の夏、はからずもそれは僕が生まれた夏と同じ年である。誰がなんと言おうとこれは運命だ、僕は導かれてここにいる。
そうとわかれば疎外感とか小さなこと言ってる場合ではない。この夏祭りはいわば僕のためにあるようなものだから。
興奮したら喉が渇いたので近くのテントに入ったら、よく冷えたビールとお茶が売られていた。
ビールが飲みたかったが善良さを前面に出すためにお茶を選ぶ。
誰かツレを待っている様子を振り撒きながら、実際は誰も待っていないベンチに座ってよく冷えたお茶を飲んだ。
あいかわらずWinkが冷たい熱帯魚を歌っていたが、学校の裏手にある林から聞こえてくるセミの鳴き声と会場の子どもたちの歓声とが、すべてを包み込むようなうねりとなって盛り上がっていく。
いいな夏祭り。来てよかったなとようやく思えた。
メインイベントが始まる
会場アナウンスによれば、これからグラウンド中央でメインイベントが始まるということだった。子どもたちが移動を始め、さっきまで行列ができていたテントにも空きができる。
いまだ!とかき氷のテントに並んだ。
かき氷を買うときに少しテントの人と話をすることができた。
この夏祭りは学校を使わせてもらっているが、地域の祭りなので、このあたりに住んでいる人なら誰でも来ていいし、なんなら遠くから楽しみにして来てくれる親戚の子なんかもたくさんいるのだという。
かき氷は急いで食べたらすぐに額が痛くなったけど、これぞ夏、というやる気に満ちた甘さがした。
これから我が地域の夏祭りのメインイベントまるばつクイズが始まるようだ。
「参加するお子さんはお集まりください」というアナウンスだったので、大人である僕は遠慮したのだが、自分ちの子どもを見守る体で輪の外から眺めた。
まるばつクイズは主に会場となっている学校に関する問題だった。
「校長室で飼っているカメの名前はカメックスである、まるかばつか!」
カメックスはいい名前すぎるので完全にまるだと推理したのだけれど、子どもたちはほとんど全員がばつを選んでいた。
正解は「ルビーちゃん」ということで、答えはばつ。
子どもたちはほぼ全員が正解だった。長くなるぞ、と思った。
地域の夏祭りには行った方がいい
僕がこの場所に引っ越してきて1年半が経つ。
そのあいだほとんど家と職場との往復しかしておらず、地域に住んでいる感ゼロだったのだけれど、こういう行事に参加すると急に地域ラブな気持ちが湧き出てくるから不思議である。こんど家の裏にある畑で作業している人がいたら声をかけてみようと思う。
夏祭り、来年も楽しみにしています。


