特集 2023年1月9日

春の七草ラーメン&チャーハンセット

これまでの人生できちんと向き合ってこなかった「七草粥」に対する、あこがれ募る近年。今年こそは! と思いつつ、またしてもうっかりその日を逃してしまいました。

そこでもう、「ちゃんと向き合うのは来年」ということにし、今年は「七草ラーメン」や「七草チャーハン」を作って、それをつまみに飲んじゃおっかな〜。

 

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:縁日フードの定番「りんご飴」と「チョコバナナ」ってどんな味なんだろう?


七草粥への想いは募り

その年の無病息災を願い、また、年末年始のごちそう続きの胃腸を休める意味でも食べられる「七草粥」。

ですが、今までの人生で、きちんと向き合ったことがなかったんです。毎年実家で必ず出ていたということもなければ、大人になってからも、「あ、七草粥食べなきゃ」と思うようなことがなく。

ただ、年齢を重ねるにつれ、「良さそうだな」という気持ちが強くなってきました。お正月、ごちそうあれこれをつまみに、特別に朝から飲んでも怒られないお酒を堪能していると、徐々に胃腸が疲れてくる。その速度が、年々増している。ちょうど正月休みが落ち着いたころになると、ぜひとも、じんわりと体にいいものが食べたくなる。七草粥へのあこがれは募るばかり。

ところでその七草が、せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、であるということは知っています。子供のころに習い、その語呂の良さから、忘れようにも忘れられない。でもさ、それらをどこで調達すればいいの? そもそも、名前を聞いても姿形が想像できない草のほうが多いんですけど。な〜んて思っているうちに1月も中盤へと突入し、すっかり通常モードの生活を過ごしているというのが、ここ数年の自分でした。

ところが今年の年明けのこと。スーパーで、こんな商品を発見したんです。

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ずばり「春の七草」

そりゃそうか。よく考えたら、七草粥を毎年食べる習慣があったって、その材料を自分で採ってくる人のほうが少数派でしょう。こういうセットがあるに決まってるか。

というか、デイリーポータルZでもかつてライターのほりさんが、「韻を踏んだネオ七草がゆで一年をハッピーに過ごそう」という記事を書かれていて、まったく同じセットを買ってますね。

というわけで、今年こそ七草粥を食べてやるぞ! と勢いこんで購入し、冷蔵庫にしまっておいたんです。

自暴自棄の果てに

そして数日が経ち、今まさにこの原稿を書いている前日の、1月8日のこと。

「そういえば、春の七草セットが冷蔵庫にあったよな。あれ、食べなきゃな。そもそも七草粥って、いつ食べればいいんだっけ?」

そう思って調べてみたところ、なんと「七草」だけに、毎年「1月7日」らしい! 過ぎてるんすよ、つまり。

あぁ、自分って本当にてきとうな人間だよな。今年もきちんと七草粥を食べられなかった。と、なんだか急に自暴自棄な気分になる。加えて、せっかく人生で初めてきちんと向き合おうとした七草粥を、1日遅れで食べるというのも、なんだか気持ちが悪い。

というわけで「七草粥の儀」は、来年あらためてとりおこなうことにし、今年はもう、この七草を好き勝手に食べてやろう! そう思うに至りました。

じゃあどうやって食すか。七草パスタ? 七草うどん? はたまた、七草カレー? いや、今日の気分は、なんとなく中華だな。「七草ラーメン」なんてどうだろう? あ、いっそのこと「七草チャーハン」も作って、「春の七草半チャンラーメンセット」なんてどうだろう?

うんうん、いいじゃない。今の自暴自棄な気分に、なんだかぴったりでさ。こんどはなんだか楽しくなってきたぞ。よし、いってみよ〜!

草の名に偽りなし

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パッケージ裏面を見てみると

すずなとすずしろって、それぞれ、かぶと大根のことだったんですね。そんなことすらも知らなかった。

そして、いざパックを開けてみます。すると、かぶとミニ大根以外の、

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名前どおりの“草”感がすごい

ふだんスーパーで見る野菜とはあきらかに異なる存在感です。これをざくざくっと切っていくと、

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料理中というよりは、子供のころに草っぱらで遊んでいた時のにおいが

ふわ〜っと漂ってきます。草の名に偽りなし。あぁ、どんな味がするんだろう。わくわくするな〜。

よく見ると草感強めな料理たち

ではまず、チャーハンから作っていきましょう。

なるべく七草感を味わいたいので、今回は肉系の具材はなし。七草以外の具材は、刻んだかまぼこのみでシンプルに。

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ごはんとかまぼこを炒めて

玉子を加えてさっと混ぜたら、

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刻んだ七草を投入

全体を炒めあわせ、塩で味をつけ、鍋はだから醤油少々と、仕上げに香りづけでごま油ほんの少しを加えれば、

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はい完成

続いて大急ぎでラーメンも作ってしまいましょう。つっても、今回は市販品を使って簡単に。

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中華麺をゆでて

7〜8割火が通ったところで、

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七草投入

あとは予熱に任せ、もう火を止めてしまいましょうか。あまりゆですぎて七草の持ち味が失われてしまってもなんですからね。

そしたらどんぶりに用意しておいた市販のラーメンスープに、湯切りした麺と七草を加え、これまた市販の具材をトッピングしていけば、

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完成! 「春の七草半チャンラーメンセット」
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「七草チャーハン」

ぱっと見はオーソドックスチャーハンですが、ちらりと見える根っこっぽいものが異質ではあります。

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「七草ラーメン」

同じくぱっと見は普通のラーメンなんだけど、野菜ゾーンをよく見ると草感強め。いいですね〜。

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七草中華飲み

ではいよいよ食べてみましょう。

あ、ところでそうそう。実はラーメンを作る直前にもうひとつ思いついたことがありまして。

このラーメンとチャーハンをつまみにですね、甲類焼酎を冷やした炭酸水で割った、僕の大好きな「プレーンチューハイ」を飲んでやろうかなと、

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思っていたわけですが
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少量だけ取り分けておいた七草

これをチューハイに加えて、

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「七草チューハイ」

にしてやれと。

というわけで、あらためて、

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七草中華飲み準備完了!

ではでは、まずはチャーハンから。

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さくりとすくって

もぐもぐもぐ……あれ? なんだか想像以上に、シンプルに美味しいチャーハンだ。火を通しすぎていない、とろしゃきの大根やかぶがうまく、もちろんほんのりと草っぽい味はしますが、それがむしろ“体に良さそう”というアクセントになっています。

続いてそれをつまみに、チューハイぐびり。あ、これまた、まったく違和感のない爽やかで美味しいチューハイ! 赤羽の名酒場「まるます家」の名物に、チューハイにミントの葉を加えた「ジャン酎モヒート」というのがありますが、イメージ的にはあんな感じ。七草でも良かったんだな。

ただ、ここまではなんというか、七草ならではの持ち味、包丁で切った時に感じた草っぽさ、そのあたりが薄めな気がします。わざわざ七草でなくてもいいような。

そういう意味で、もっとも印象に残ったのが、ラーメン。

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「七草ラーメン」

どんぶりからもわっと立ち上る香りに、すでにあの草っぽさがあるんですよね。チャーハンのように炒めてしまったり、逆にチューハイのように冷たかったりするより、持ち味が生きるのかもしれない。そういう意味では今回のなかではいちばん「七草粥」に近いのかもしれない。

麺に絡まるしゃきしゃきとした七草に感じる味わいもいいんですが、より特徴が出ているたがスープ。

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これ

あきらかにいつもの市販の醤油スープじゃないというか、すごくこう、“いろんな草や根っこ由来”という感じの甘みを感じて、滋味深く心身に沁みわたるような味わい。

七草ラーメン、これはいいな!


小見出し

と、今年もまた七草粥を食べられなかった僕ですが、これはこれで楽しかった。そしてやっぱり、あのラーメンのスープを飲む限り、シンプルな塩味の七草粥こそが、もっともその醍醐味を堪能できるメニューであるという確信が増しました。

来年こそは必ず食べねば! そしてそのあかつきには、ここデイリーポータルZに、「1月7日に七草粥を食べてみた」という、ものすご〜く普通の記事を書いてしまうかもしれませんが、何卒大目に見てやってください。

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さて、もうちょっと飲も〜

 

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