特集 2019年6月21日

那覇の公設市場を思い出してしみじみしよう

那覇の観光スポットとしてド定番だった那覇市第一牧志公設市場が2019年6月16日をもって建て替えのために、いったん営業を終了した。

現在はまだ建物は存在しているが、3年後の新市場開設に向けて今後建物が壊される予定だ。

もう入ることができないが、あの独特の味わいを持っていた市場を、最後にしみじみしながら振り返ろうではないか。

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公設市場とはどんなところだったか

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那覇市第一牧志公設市場は、国際通りからドン・キホーテ横の商店街に入って5分ぐらい歩くとある。

建物の中に入ると、南国らしい色鮮やかな魚や、陽気に飾り付けられた豚なんかがあって、ああこれぞ沖縄だなーという市場である。

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手前上の青い魚はイラブチャー(アオブダイ)。真ん中の目が大きいのは皮を剥がれたアバサー(ハリセンボン)
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沖縄では豚の顔も耳も手も食べる。つまり飾りではなくすべて食材として売られている

市場内を歩いているとお店のおばちゃんが「らっきょを食べる?」とか「飛行機の時間は何時?」とか声をかけてくるが、この声がけは明らかに地元の人には行われないので、沖縄県に移住した人にとって公設市場で声をかけられるかどうかが、沖縄に溶け込めているかどうかを知る客観的な判断材料だったりもする。

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沖縄15年目の筆者は写真を撮ってもいいよとは言われるが、お土産にどう?とかはもう言われない

公設市場としては戦後の1951年に開設されているが、最初の市場は火事で焼失してしまったので、現在の建物は1972年に建設されたものだ。

それから47年、「県民の台所」と呼ばれたり、観光スポットとして人気になったりしたが、老朽化による建て替えのために2019年6月16日(日)に現市場は閉店することになった。

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2019年7月1日からは今の公設市場から100Mほど離れたにぎわい広場に設営された仮設市場に店舗は移動。

その間に現在の建物は解体され、2022年4月1日に新たに新牧志公設市場として営業を開始する予定となっている。

どこまで知っている?公設市場トリビア

さて、そんな公設市場、訪れたり商品を買ったこともある人はいるだろうが、どこまで市場のことを知っているだろうか。
あまり知られていない市場のトリビアを紹介したい。

第二公設市場があった

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今回移転する公設市場の本来の名前は「那覇市第一牧志公設市場」。第一ということはその次もあったのだ。
それが那覇市第二牧志公設市場。

那覇市牧志第二公設市場があったのは、これから牧志第一公設市場が移転する仮設市場の場所(地図のにぎわい広場のところ)。

牧志第一公設市場は戦後自発的にできた闇市を集約する形で開設されたのだが、衛生面などから1964年に改築案が那覇市から出されることに。しかし、公設市場の土地を持っている地主が土地の返還を求めるなどして泥沼に。他にも色々あったらしいのだが、市は1969年に移転先として那覇市牧志第二公設市場を開設。しかし、実際は移転は進まずもともとあった旧市場を「第一牧志公設市場」と改名して存続することに。

その後、第一公設市場は色々な苦難を乗り越え土地の取得、建物の建築が可能に。1972年に牧志第一公設市場として再建。
しかし第二公設市場は沖縄の本土復帰後、大型百貨店やスーパーが進出してきたことで、客足減退を食い止められず2001年に閉鎖された。

市場内の業種ブロック分けは戦前からのなごり

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市場内は鮮魚、精肉、食料品と業種によるブロック分けがされていた。
このブロック分けは戦前の那覇にあった公設市場のシシマチ(肉市)、イユマチ(魚市)といった配置をそのままもってきたもの。戦前と同じ配置で運営されているのは全国的にも珍しい。

業種によるブロック分けは、仮設市場、そして3年後にできる新市場でも引き継がれるらしい。

もともと観光スポットではなかった

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首里城が復元されたのは1992年。実はそれ以前は那覇は空港があるだけで観光客が素通りしてしまう街だった。
公設市場も「県民の台所」と呼ばれる地元の人が訪れる市場だったが、近隣にスーパーができて客足が激減。
そんな中、1990年ぐらいに公設市場の雰囲気がアジアチックだということで、観光スポットにしようと意見が出てきて、東南アジアや台湾で行われていた1階で食材を購入して、2階で料理して食べる「持ち上げ」という制度を導入。

持ち上げや独特の雰囲気をガイドブックなどにPRしたことで、観光客が増えたそう。

スクガラスの瓶詰めは箸で詰めている

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市場によく売られているスク(アイゴ)の瓶詰め。スーパーではバラバラになって瓶に詰められた商品が売られているが、市場のものはやたらきれいに並んでいる。
これどうやって詰めているんだろうと聞いたら実演してくれた。

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並べるのは箸で。瓶の内側を箸で綺麗に並べてから真ん中はざっと入れるらしい

ちなみに手をかけてなぜこんな並べ方をしているかと聞いたら「キレイだから」だそう。

トイレの注意書きが変

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女子トイレには手洗い場で貝などの海産物を洗わないでという注意書きがある。男子トイレはヒゲを剃らないでと書いてあったらしい。新市場にも同じ注意書きが現れるだろうか。

公設市場の今後

最後は那覇市第一牧志公設市場組合の組合長である粟国智光さんに今後の市場のことを聞いてきた。

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- これまで移転案なども出ていましたが、現在の場所に公設市場を建て替えることに決まった経緯を教えてください

平成19年ぐらいから建物の建て替えをしないといけないという意見がでてきました。
その後、にぎわい広場に公設市場移転案が大きく出されて、公設市場内だけでなく周辺も含めて大騒動になってしまったんです。
このときに、現市場での建て替え、にぎわい広場への移転、そして第3案として市場組合が出したのがリノベーション案。
レトロ、昭和感というのが全国的に人気があるので、公設市場もこの建物のまま維持して長寿命化の案を出したのです。
しかし今後の50年後、100年後を見据えて、結果的にはこの場所での建て替え案になりました。

今はここで立て替えすることが最良だと思っています。

- 建て替えによって雰囲気はガラリと変わってしまうのでしょうか?

いままでの来街者、地元の人や観光客の人から見れば、建物が良くて公設市場に来るというよりは"マチグヮーらしさ"、相対売りや空間の良さだろうと言うこと。なので「今ある"市場らしさ"を残す」というのがベースの考え方です。

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今の公設市場を踏襲する。
基本的には現在の建物と同じものを作るという考えです。外周もそのまま、1Fも同じようなフラット空間、もしかしたら柱をなくすので、もっとオープンな空間になると思います。そして、いまと同じく、肉屋さん、魚屋さんと専門店によってブロックを分けます。

- 新しくつけ加わるものはありますか?

新市場のコンセプトは沖縄の食です。

3階は現在は業者用の倉庫や加工場ですが、調理室や多目的室になる予定です。1階で肉や魚を買って、3階で料理研究家など講師のもとで沖縄料理を調理体験できる。昔は家に調理方法を知っている人がいましたが、核家族になって調理方法を聞く機会がない。
市場なら肉の部位の使い方、魚の調理法を相対売りなので、肉屋さん魚屋さんなど専門家に聞くことができます。そこに加えて、調理室があれば沖縄の食文化に興味がある人も増えるのではないかと思っています。

単なる建物の建て替えではなく、沖縄の食文化を再構築する意味もあります。
大切なのは「市場は戻ってくる」ということ。
那覇の中心地に市場があるということが大切なんじゃないかと思う。
普通は移転の方がリスクはないです。でも同じ場所で建て替えをするということ。それだけ土地の魅力がある場所なので、 市場の建て替えで、街がアジクーター(=味わい深い)になればいいと思います。

公設市場ができて、今年で47年。
最初に市場に訪れていたのは「県民の台所」とも呼ばれたように地元の人。そのあとに観光客、そしていまは外国からの観光客です。
公設市場の歩みをみれば、戦後の沖縄の歴史をみることができます。ある意味で象徴的な建物です。

いまの沖縄の魅力や市場の魅力、市場で働いている人の魅力、またこれから市場で何かやろうとする若い人の発想力などを鑑みると、沖縄の那覇のマチグヮーが世界に誇れるような一大マーケットになるかもしれません。
そう考えると悲観的な要素はない。面白くなるんじゃないかと思っています。


ありがとうさようなら那覇市第一牧志公設市場 3年後が楽しみです

あの独特の雰囲気の市場がなくなってしまうことに寂しさを感じていたが、粟国さんもおっしゃるように50年後、100年後を見据えたらどこかで新たなスタートを切る必要があるのだろう。そして再出発を成功させるべく、公設市場の関係者の方々はいろいろ計画を練られている。その歴史的な瞬間に立ち会えていることってとっても価値があることなのかもしれない。

ただ新しく建て替えするのではない、リノベーション案も考えた市場の人たちが現市場を踏襲して建て替えする新市場。
どんな顔でこの場所に帰ってくるのか。3年後が楽しみである。

そしてその前に仮設市場もある。
環境が変わっても変わらず働く市場の人たちに会いに行きたいものである。

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