特集 2022年10月31日

名古屋のおでんにはピンクの棒と波打つ麩が入っている

おでんとは、味噌味の食べ物である。愛知県出身者の9割はそう教わり育つ。世間でいうところの「名古屋おでん」だ。

実は、名古屋おでんのアイデンティティは具にもある。

「強烈なピンク色の練り物」と「表面にやたら突起がある麩」とが入っているのだ。

ビジュアルがパワフルなだけでなく、味もおいしい。個人的にかなり好きな食材なのでぜひ紹介したい。

愛知県出身、東京都在住のデザイナー。イラストを描き、写真撮影をして日々を過ごす。
最近は演劇の勉強に熱中。大きなエビフライが好き。

前の記事:大人だって逆上がりがしたい!完結編

> 個人サイト 梅ログ

強烈なピンク色の練り物・赤棒

記事冒頭で「強烈なピンク色の練り物」と紹介した食材の名前は「赤棒(あかぼう)」。

調理前の見た目はどう見ても「ピンク棒」だが、味噌で煮ると赤黒くなる。主張が強いボディカラーで、特にこどもに大人気(筆者調べ)のおでんの具だ。

a1.jpg
赤棒ビフォーアフター

デイリーポータルZ編集部のメンバーに食べてもらった。

安藤「僕は愛知出身なんで、これは知ってますよ。おいしいですよね。実家で味噌つけて食べてました」

「赤棒は思ってたより固いですね。弾力があるというか。これはおいしいです」

米田「固いですか?ムチッとした食感ではありますね」

a2.jpg
「一瞬梅の味がしたような」と林さん。梅は入っていない。見た目に味覚が惑わされている
a3.jpg
言葉を選んでいるようすの橋田さん

橋田「魚……、かまぼこみたいな味ですね」

a4.jpg
この赤棒は、すけとうだらが入っているので正解だ

見た目は派手だが、使われている材料は一般的な練り物とほとんど同じ。

筆者が子供のころは、赤棒の原材料など知らず「ちくわと味が同じ気がする」と思っていた。気のせいではなかった。

橋田「関東風のお出汁のおでんに入れたらおいしいと思う」

米田「味噌味でもおいしいですよ!」

安藤「味噌をつけてください、味噌を!」

橋田「私すごい責められてません?」

a005.jpg
愛知県出身者による「味噌ハラスメント」のようす

 

橋田「そういう安藤さんは赤棒の味、どうですか?」

a6.jpg
(もぐ)

 

安藤「うん、赤棒の味がします」

米田「ぜんぜん答えになっていない」

安藤「当たり前の存在すぎて、なんの言葉も出てこない」

赤棒を素直に受け止めすぎでは?でも、筆者も同じ気持ちである。

いったん広告です

表面にやたらと突起がある麩・角麩

表面が洗濯板のようにデコボコとした「角麩(かくふ)」。
見た目はいかついが、食感はフワモッチリ。
おでん以外の煮物にも入れるし、単体で調理してもいける。煮物界の主演役者である。

a7.jpg
開封前の状態。パッケージの表面がうっすら波打っている。角麩は煮る前と後で印象が変わる
a8.jpg
煮る直前。さわると餅のようにべちゃっとする
a9.jpg
煮込むとワイルドな波が浮かび上がる

 

「色がすっごい名古屋っぽい」

橋田「見たことない形。麩なの?」

「形状は麩じゃないですよね?」

安藤「通常想像する”お麩”ではないですよね」

a10.jpg

橋田「……お麩とちくわぶのあいだだ!ちくわぶのほうが固い。おいしいかも」

「ちくわぶは表面が溶けて中は固いままだけど、角麩は全体がやわらかい。人を甘やかす食材だ」

a11.jpg
角麩に甘やかされている林さん

ちくわぶと角麩は材料が違う。どちらも小麦粉が主原料だが、角麩には餅粉が入っている。

調理前の角麩がお餅のように粘着する理由はこれにある。

a12.jpg
ちくわぶは煮る前からエッジが主張している。触り心地もハード

試食会は始終、愛知県民の当たり前と、関東民の当たり前がぶつかりあう時間となった。
関東派のリアクションに驚いたし、自分のなかの名古屋おでんの存在の強さにもまた驚いた。

次は鍋を囲んで名古屋おでんを食べたい。

a13.jpg
「実家の味だ!」と何度も言われたので、私は安藤さんのお母さんです

 

▽デイリーポータルZトップへ
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ