渡り切ると日常が待っている
吊り橋を渡り切ると、対岸はものすごくふつうの山道だった。いままでのドキドキはなんだったのかと恥ずかしくなるほどの日常である。
お店発見
山道を抜けると集落に出た。やきいもの看板を掛けたお店がある。
冷やし焼き芋、いいではないか。吊り橋で消費した冷や汗の分をここで補給したい。お店は昔ながらの駄菓子屋というか実家というか。田舎のおばあちゃんの家に里帰りした、みたいな感覚になれる装いだった。
お店のおかあさんに冷やし焼き芋をお願いすると家の中まで取りに行ってくれた。奥のテレビから野球中継が聞こえてくる。
「暑いねえ、どっから来た?」
おかあさんは僕に席を勧めてくれ、ちょっと待ってて!と冷たいお茶まで用意してくれた。冷やし焼き芋は焼いた後に一度冷凍して、それを解凍することで甘さが増しているのだとか。
「この夏は35℃とか36℃とか言ってるもんね、ほんとすっごいわー。吊り橋渡ってきた?」
――渡ってきました!
ここ、前にも来たことあったかな?と疑ってしまうくらいの居心地のよさである。このお店、普段ならば日曜日に名物の「大根そば」を提供しているらしいのだが、今日は予約も入っていないからやめたとのこと。それ食べたかった!
おかあさんはこの地域のPR大使みたいな役割りなのだろう。観光案内のパンフレットにも写真入りで掲載されていた。近くでは季節ごとに野菜の収穫体験なんかもできるのだとか。
「小さな集落だからね、あんまり大勢で来てもらっても困るんだけど、たまに思い出して遊びに寄ってほしいなって思ってるんですよ」
それってすごいうれしい場所ではないだろうか。僕はここを田舎のおばあちゃんちだと思ってまた帰って来ようと決めた。そのためには吊り橋の怖さに慣れなきゃいけないけど。
怖いけどうれしい、吊り橋と冷やし焼き芋
大井川にかかる吊り橋はどれも絶景らしいのだが、スリルと興奮だけじゃなく、周辺の集落にもじんわりとした良さがあった。夏休みに行くならこういうところですよみなさん。

