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2018年、仕事でミャンマー北部のカチン州に行った。
当時のミャンマーはどこに行っても明るかった。ただ、移動は大変だった。最大都市ヤンゴンからカチンまで、合計17時間の車内はぎゅうぎゅうだった。途中何度かゾウを見た。
帰りも車はつらい。そこで、バモー空港という田舎の空港からローカル便を乗り継いでヤンゴンに戻ることにした。航空券は町の雑貨屋さんで売っていた。朝一の便だけど「3時間前には空港へ」と教えてくれた。
しかし、翌日行ってみると、誰もいない。あたりは真っ暗だ。本当に今日フライトはあるのか、果てにはここが空港なのかさえ、不安に思えてきた。戸惑う。自分を気の毒に思ったタクシードライバーが一緒にいてくれた。
夜が明けた。朝焼けをバックに管制塔が現れた。空港は開き、ちゃんと飛行機に乗れた。乗ったのはミャンマー・ナショナル・エアラインズ。国営航空会社である。
座席ポケットに入っていた安全のしおりが、ずいぶんとかわいかった。命に関わる説明なのに、線がやわらかい。人物の顔つきや動きに、なんともいえない味がある。以下のとおりご紹介する。
ライフジャケットをふくらませる説明のはずである。
ところが、ふくらんでいるのは子どもである。腕も足も顔もワンサイズアップしている。本人は少し不安そうな表情だ。
女性が座席クッションを浮袋にしてそれを抱えて水に浮いている。
相当浮いているように見える。もしくは足がついているのかもしれない。
浮力がすごいのか。浅瀬なのか。
「Move away from the aircraft」。機体から離れましょう、という説明だ。
普通なら、スロープを降りたり、翼を伝ったりするところを想像する。ところがこの人は、機体からかろやかにジャンプしている。しかもポーズをきめている。かっこいい。
子どもはふくらみ、女性は浅瀬に浮き、人は機体からかろやかに出てくる。見ているうちに、真っ暗な空港での心細い気持ちがなんだか落ち着いた。
座席ポケットに戻すことなくこんなにじっくり眺めさせるとは、安全のしおりとしては大正解である。飛行機はちゃんと着いた。非常時は来なかった。よかった。
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編集部より寸評
記事ってほっとくと長くなるんですよ。書いてるうちに書きたいこといっぱい出てくるし、長いほうがちゃんとしてる気がするし、短いとなんか不安。でも読み手としてはこのくらい短くて、ワンテーマの記事はすごくカジュアルに読めるんですよね。
また、「しおりの絵がかわいかった」くらいの小さいことで、記事って1本書けるんだよ、気軽に書いていいんだよっていう見本のような記事でもあります。
いろんな意味で読んでて勇気のでてくる記事たと思いました!(編集部・石川)
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