ずばり、マーダーミステリーとは
ご覧のあたなはマーダーミステリーがどんなものか、すでにご存じだろうか。
めちゃくちゃ知っていてバリバリにプレイしている方から、この記事タイトルを見てはじめて聞いた、という方もいると思う。
それくらい、認識の差が世間でまちまちなのがマーダーミステリーの現状のようだ(ということも、今回の取材で知った)。
まどろっこしくなってしまうので、まず最初に「マーダーミステリー」とは何なのかをざっくりまとめてみてしまおう。
これがマーダーミステリーだ!
- パッケージ、公演型のある、リアルにプレイヤーが集合して行うゲームである
※今回はパッケージ作品について有識者に聞きました
パッケージ作品、たとえばこういう感じ(このあともマーダーミステリー作品『スペースポンポン号の殺人』で例示してまいりますね)
たとえば『スペースポンポン号の殺人』の場合、ストーリーはこうだ。
26世紀。人類が宇宙で生活することが普通になった時代。
舞台は宇宙船『スペースポンポン号』。
地球到着の直前、あなたたちクルーは殺人事件に巻き込まれた。被害者は地球圏屈指の天才科学者マッド博士。彼がなんらかの研究結果を地球に持ち帰ろうとしていたことは、クルーたちにとって暗黙の了解だった。
殺人犯は誰か……そして極秘研究の内容とは!?
原作はSFから純文学まで幅広く手がける作家の高山羽根子さん。小説家が関わるくらい、マーダーミステリーにおいてストーリーは肝なのだ。
- 集まったプレイヤーはゲーム開始時に引き当てた登場人物に扮しふるまう
ジャケットに描かれたこの方々、何かと思ったら、プレイヤーが「なる」対象だったのだ
- 登場人物の各々がそれぞれ知り得る事柄が記載された「キャラクターシート」がある
自分がなる登場人物が何を知っているかは、担当する登場人物の「キャラクターシート」に記載されている
- それぞれのプレイヤーによる「密談」や「議論」、「対話」を通じ、最終的に犯人等を投票で決める
- 投票で決まった人物が誰かによって、エンディングのストーリーが変化(マルチエンディング)する
『スペースポンポン号の殺人』の場合、投票で「追放するべき人間」を決める。これによってエンディングが決まる
す、すごい。まったく知らないタイプのゲームじゃん(これを書いている古賀がテーブルゲームにとてもうとい人生を送ってきたから余計)!!!
教えてくださったのは、まさにこの『スペースポンポン号の殺人』制作メンバーのみなさん。
後列左から、大伴亮介さん(デザイン)、クリハラタカシさん(イラスト)、ツムキキョウさん(プロデュース・RAMCLEAR)、かつとんたろうさん(シナリオ協力)
前列左から、高山羽根子さん(原作)、海猫沢めろんさん(プロデュース・RAMCLEAR)
大伴さんとクリハラさんはデイリーポータルにも描いてくださっていた方々ですです!
制作陣みなさんも、マーダーミステリーは初見の方への説明に難儀することが多いそう。
「人狼ゲームと演劇が合体したもの」
「2時間ドラマをみんなでやる」
「殺人事件の現場を舞台にするタイプの脱出ゲームを小規模でやる」
……といった感じで紹介しているということだった。
と、さんざん話を聞いたあとでパッケージにめちゃくちゃわかりやすい「マーダーミステリーとは」が書いてあって恐縮しまくった
ネタバレは厳禁、じっくり遊ぶ
概要を知ってすでにピンときた方もいらっしゃるかもしれないが、マーダーミステリーは
という、性質上の特徴がある。
登場人物の見たもの聞いたことをお互いに対話でさぐりあうわけだから、相手の見たもの聞いたことを知ってしまっていてはゲームとして成立しないのだ。
作品にも、ここから先はネタバレだからプレイ時にしか見ないようにと知らせる紙が入っている
さらに、
のも意外だった。
4人専用、120分(「GM不要」というのは、ゲームマスターが必要ない、プレイヤーだけで遊びるの意、GMが必要な作品も多い)
密談や議論は制限時間内で進行する。
そのためプレイ時間が決められているタイトルが多く、『スペースポンポン号の殺人』も120分かけて遊ぶ。
じつは取材日、サクっと試遊すべくライターまいしろさん(左)と編集部の橋田さん(右)も呼んでいたのだけど、3人じゃ足りないし時間もないしでマーダーミステリーについて骨の髄から知らないことを段取りで証明した
短時間で遊べるタイトルもあるけれど、複数人が集まってそれなりの時間をかけて楽しむのが本質なんじゃないかと、今回お話をうかがって感じた。
Amazonをちらっと見ただけで180分の作品もたくさん見つかった
実際、発祥といわれるイギリスでは事前にキャラクターシート的なものが配られ、練習して衣装まで用意し、1日かけて遊ぶ趣味人たちもいるそうだ。
ここで私が最初にマーダーミステリーについて認識した「積みマーダーミステリーがたまっちゃっていて、本を読むのが後回しになっている」が完全回収されたのだった。
1回しかできない、それなりの時間をかける。本に似ているし、なるほど、これは積むものだ。
「この間、金田一少年のやつが出ましたよ」って、わ、ほんとだ
「版元さんから出たりもしてますね」おお、幻冬舎からも。なるほど、これはどんどん入手して積む予感しかないですね……。
マーダーミステリー、その「ひとことで言えなさ」
さてさて、バーンと様相を知ってきたが、上記は理解を進めるためにかなり乱暴にまとめたものとも言える。
というのも、マーダーミステリーというジャンルは一概に「こういうものだ」とくくれない状況にあるそうなのだ。
たとえば、「マーダーミステリーって、基本やっぱり人が死ぬんですか?」と聞いてもこれくらい意見が割れる。マーダーなのに!?
イギリスで誕生して中国で流行したというのが現在のブレイクの通説で、中国では毎月200タイトル以上の新作が発表されている……というが、これがなんと2018年くらいから。
日本に上陸したのも2019年というから、ゲーム文化としてかなりまだ新しい。
国内での発表タイトルがまだ1000まで達していないのではないかと、発表されたタイトルをほとんど全部やった人もおそらく存在するだろうということだった。
今まさに進化しあらたなる側面が発見され多様化していくさなかのゲームジャンルなのだ。
しかも、こんなに新しいのにすでに門外漢の私のところまでその存在が迫ってきている、勢いがすごい。
これからさらに盛り上がって、今後ますます定義しきれないことになっていくのかもしれない。現状をいま知れたのはラッキーでした……!
誰がどの役をやるかからしてもう最高潮くらい盛り上がっていた
令和の仮面舞踏会これだ
話を聴いていて、むちゃ楽しいカルチャーだな……と思ったのと同時に、これプレイヤー同士仲良くなるんじゃない? という予感がした。
濃密にディスカッションするけれど、内容としては架空で、でもそれをプレイヤー同士で強固に共有するのだ。ネタバレは厳禁だから、プレイ後の感想戦が参加者同士に限定されるのも一体感があってときめく。
一緒にプレイした相手だけじゃなく、同じタイトルをプレイした別の人とも仲良くなれそう。実際、同じ役をやったユーザー同士のオフ会が開かれることもあるんだそうだ。
役割が与えられるから、普段の自分が隠せるのもおもしろい。自分じゃない誰かを演じるからこそ、むしろ個性が生きるということは絶対あると思う。
これ、仮面舞踏会の世界観じゃないか。
マーダーミステリーを知って、ポップでキャッチーだけど、密やかで妖しいなとも思った。そのせいかもしれない。
後日真剣なまなざしにて編集部で遊んでみましたがね! 役割を演じるなんて我々にできるのか…と思うも同僚みんな案外ひょうひょうとやってのけるから笑ってしまった。
全員(編集部 橋田、石川、藤原、古賀)ポンコツだったけど完全に盛り上がりました。
取材のご対応ありがとうございました!
RAMCLEAR