上野動物園
懸垂型モノレールは1901年ドイツで誕生した。20世紀になりたての年。前世紀の人の考えた未来の乗り物。
上野動物園のモノレールは世界で2番目、日本で最初の懸垂型モノレールである(その前に豊島園に遊具としては存在した)。ドイツ人が未来の都市交通として考えたものが、2番目にいきなり動物園で運行されたわけで、もうそのあたりですでに浮かれている。
このモノレールは東京都交通局が運営しているので係員が都営地下鉄と同じ制服を着ている。動物園に都営地下鉄の駅員は唐突である。
でも、動物園勤務なので子供に優しく声をかけている
「きっぷはここにいれてねー」
少し不思議だ(別に都営地下鉄の駅員が愛想が悪いわけじゃないけど、あまりにも優しいので)。
季節柄、修学旅行生がたくさん乗っていた。手すりに足をかけてずっとフリスク食べている男子もいた。かっこつけたい年頃。でも、降りてから
「おれ、もう1回乗るわ」
と言っている男子がいた。どんなに気取っててもモノレールの魅力にKOされている。
アリクイが見あげてる
ここのモノレールは下から見られることを意識して、楽しげな動物のイラストがペイントされている。ほかのモノレールのような影とは無縁だ、と思ったが、線路の下にある動物がいることに気づいた。
アリクイだ。
アリクイの柵だけモノレールの下なのだ。場所がなかっただけかもしれないし、アリクイはおもに下を見てるから(アリさがしてる)気づかないだろうという判断かもしれない。
アリクイの頭上をサルやトリがペイントされたモノレールが通る。そこにアリクイのイラストはない。しかも上野動物園のアリクイのエサはアリではなく、ドッグフードベースの人工のエサだという説明板があった。アリ食ってないのだ。アリクイのアイデンティティやいかに。
モノレールが楽しくペイントされればされるほど、その下のアリクイの闇が際立つ。モノレールをみあげる。アリクイもみあげる。