あなたはロケットストーブを知っているだろうか
ロケットストーブは、 ちょっとの燃料でも高温で燃える構造を持つストーブのこと。仕組みはとてもシンプル。煙突とそれを包む断熱材でできている。
仕組みはシンプルながら、煙突を断熱材で覆うことにより炎が集約されて、上昇気流が発生し、強い火力が生み出される。
火葬場の温度が800℃〜1200℃らしいので、がんばったら火葬できるくらいの温度ということだ。身近にある最高温度と比べてみるとその凄さがよくわかる。高温だから、煙も発生しにくく、着火も楽なんだとか。作るのも簡単でストーブとしても優秀なので、防災グッズとしても注目を集めているらしい。これは作りたい。原理は簡単なわけだから、そのへんの材料でもなんとかなるのではないか。
100均の材料で作ってみよう
店に売っている品物を、燃えるか、燃えないかだけで判断して物色するのはなかなかに楽しい。選んだ材料がこちら。
母体となる容器は、角形の貯金箱(筒型よりも穴が開けやすそう)。
煙突部分は、みかんの缶詰である。スタッキングができるので、煙突の長さを調整できる
(すごい念密に材料を選んでる感じがしますが、この後に失敗します)。
うまくいけば吸気とか調整できるに違いない!
灰皿の蓋は網として活用するのだ。1時間くらい100均をさまよって材料は揃った。貯金箱に、みかんの缶詰と胡椒入れの直径と同じくらいの穴をあける。まずは、ドリルで穴をあけ……
かかった制作時間でいえば30分くらい。制作よりも、100均の中で材料を探す時間の方が長かった。
さっそく、点火してみよう
ジジジ……と悲しげに消えた。何度か試してみたが、空気があまり吸い込まれていかない。煙突の直径が小さいからだろうか。そもそも、調味料の容器では、燃料である割り箸がちょっとしか入らない。しかも、割り箸を入れると、穴を塞いでしまうので空気が通りにくい。誰だ、こんな金物選んだの。
ここからが本番です
潔く諦めたのには理由がある。ロケットストーブの先人達が築いた、ホームセンターで揃う基本型のロケットストーブの材料も揃えていたのだ(こちらがその材料である。
断熱材として使うパーライトは発砲スチロールみたいに軽い砂だ。軽いので持ち運びがラク。パーライトをやめて砂利にしたら重くはなるが材料費が2000円くらい浮く。
ステンレス煙突だけは注意する必要がある。私が住んでいる大阪市のホームセンターでは取り扱いがなかった(巨大なプロ仕様のホームセンターの鉄鋼コーナーにも置いていなかった)。
ステンレス煙突に似た商品としてアルミ製のダクトがあるのだが、アルミの融点は660℃のようなので、溶けるかもしれない。少し不安。
近所のホームセンターでは、ステンレス煙突が見つからないので、どうしたものかなと困っていたが、たまたま祖父の家(徳島県)に行くことがあったので、ホームセンターに寄ってみたら普通に売っていた。
近所で売ってない人は、アマゾンでも取り扱いがあるようなので、そちらで買うのもいいかもしれない(お届けに結構時間かかるみたいだが)。脱線してしまったがさっそく作ろう。
ステンレスの煙突は、バコバコとはめるだけで連結できるので、めちゃくちゃ簡単。3つの煙突のパーツをJ字型に組む。100均で作るよりもずっとラクだ。100均のロケットストーブでは、空気が通る穴と薪を焚べる穴を一緒ににしたのがダメだったのかもしれない。丁字型のパーツを焚き口につけて、今回は穴をふたくちとした。
穴を開ける際には、金切ばさみで少し大きめに切っておくことがコツであることもわかってきた。
……と言いつつも、火を入れてわかったことだが、アルミテープはあまりの高温により少し溶けて剥がれてしまった。耐熱パテとかで穴埋めした方がいいかもしれない。
洗濯物の糸くずがめちゃくちゃよく燃えた。(金田一少年で得た知識が役にたった)
火口からわかりやすく炎は出てこないが、手を少し近づけてみると、その熱さに驚く。炎が見えにくいのは、薪から出た可燃性ガスが再燃焼しているからだそう(薪そのものが燃えているわけではないらしい)。確かに燃えカスみたいなのはほとんど出ない。これが燃焼効率がいいということなのだろう。火口のあたりの空気がドロドロと歪んでみえる。
燃料は、海で拾った流木を使っている(あとで調べたら塩気を含んだ流木は、ストーブを痛める可能性があるのでよくないそうです。知らないことばっかりだ)
……があまりおいしくなかった。火口に接するところだけが超高温になってしまったことが失敗の原因のようだ。高温すぎてアルミホイルが少し溶けて剥がれて、さつまいもが煙くさくなってしまった(アルミ製のダクトで作らなくてよかった)。
今度焼く時は、何か熱がまんべんなくこもる容器に入れて挑戦してみよう。
さつまいもは失敗したが、先人の知恵のいかにすばらしいことか!ホームセンターの材料で作るロケットストーブは大成功であった。最初からこうしていればよかった。自信をつけたので、最後に少しイレギュラーなタイプのロケットストーブも作るぞ。
おそらく世界初のロケットストーブを作ります
なぜ、こんな熱に弱そうなコーナーに来たか説明させていただきたい。実は、丸太だけで作るタイプのロケットストーブもあるそうなのだ。
丸太の中央部に穴をあけ空洞をつくることで、丸太がロケットストーブの構造材、さらには燃料を兼ねるわけだ。なんとかっこいいのだろう。
そう、民芸品コーナーに来た理由は、ここなら木材でできたものがたくさんあるからである。木彫りの熊と悩んだ結果、こちらにしました!
木彫りのクマよりも、こけしの方が細長くて煙突効果が期待できる。穴をあけてロケットストーブにするぞ。さっそく取り掛かる。
頭頂部と底にそれぞれ穴を開ける。このままではドリルの刃が届かないので、真ん中で両断してから、貫通させた
穴を貫通させた後は、接着剤で胴体は再度固定した。股間にあたるところに薪をくべる穴をあければ……おそらく世界初、こけしのロケットストーブがここに完成した。
しかし、あけた穴が小さ過ぎるのだろうか。全然燃えない。どうしよう。ドリルで空洞つくるのにも限界がある。こけしの目も心なしか恨めしそうに見える。
気づけば、こけしを熱心に燃やそうとしている姿を姪っ子がじっと見つめていた。「なに、してるの?」と姪。こちらが教えてほしい。あまりにも火がつかないので、全てが嫌になり、調子よく燃えている一斗缶ロケットストーブの焚き口にこけしを入れた。
「こけしの頭から煙」。東北地方にありそうなことわざみたいな状況である。冷静に考えると、ロケットストーブに焚べないと成立しないロケットストーブなんて全然だめだ。意味がわからない。気づいたら姪っ子もいなくなっている。もうこんなことは辞めよう。先人の知恵をありがたく享受しよう。
今回の記事では、ロケットストーブの新しい境地を切り開こうと意気込んだわけだが、結果は踏まなくてもいい轍を踏み続けることになってしまった。でも、いくつか作ってみたことで、なんとなくの構造は理解できたし、普通に使えるロケットストーブもひとつできた。
煙突選びがけっこう重要なポイントな気がする。ガワは一斗缶でもペール缶でもそんなに差は生まれないのではないだろうか。
熱に耐える材質で、薪を入れやすく、空気を通しやすい直径……そんな都合のいい管、なかなか代用品ない。変な独自性は持たせず、とりあえずステンレス煙突で挑戦するのが最初はいいのではないだろうか。
ロケットストーブに使ったこけしは、かわいそうだが一斗缶ロケットストーブに焚べて燃料として燃やした。炎が勢いよく吹き上がり、30分くらいで跡形もなく消えた。うしおととらの九印のような最期であった。