翌朝。冷たいお茶を楽しみに起きてきたら、氷出し茶の方はまだ溶け切っていなかった。
そんなに手間と時間がかかるのかね君は。お茶界のお嬢様なのか。
仕方がないので、水出し茶は茶葉を抜いてから冷蔵庫に戻し、氷出し茶は氷が溶け切るまで待つことにした。
気長に待つことさらに数時間。お茶を仕込み始めてから15時間以上が経ち、ようやく氷が溶け切ってくれた。
茶葉を入れっぱなしにしておくと雑味が出そうそうだったので、茶漉しを使って別の容器に移す。
「これで大しておいしくなかったら、もう二度と作らんぞ」というレベルの手間だ。お茶500mlのための洗い物が無尽蔵に増えていく。
さあ、ついに完成だ。お待ちかねのお茶の時間にしよう。
水出し(左)に比べると、氷出し(右)の方がやや色が濃い。抽出時間じたいは氷出しの方が圧倒的に長いのだから、当然といえば当然かもしれない。
香りも驚くほどちがう。水出しの方は、ペットボトルのお茶に感じるような、ハイトーンな華やかな香りがある。一方氷出しの緑茶の香りはじっとりとしていて、深みや奥行きを感じる。
印象の違いでいうと、水出しは「軽やか」、氷出しは「旨そうな」香りといった感じ。
「頼む!!! 手間をかけたわりに、そこまで変わらないな……って味であってくれ!!! 日常に手間のかかる選択肢を増やさないでくれ!!!」と強く念じていたのだが、氷出し茶の方が圧倒的にうまい。
高級なお店で、小さい上品な茶器で出される1杯という感じがする。旨味が強く、飲んだ後の口の中がずっと甘い。
水出しの方はとにかくクリアで、軽やかな味なので、水筒などに入れてゴクゴク飲むなら水出し茶の方がいいだろう。
氷出し茶のメリットは「味がおいしい」 デメリットは「それ以外のすべて」
ここからの考察は、さらなる検証が必要だが、体感としては温度というより、抽出時間の方の問題なのではという気がする。要は、冷蔵庫の中で、長い時間をかけてゆっくり淹れるとおいしくなる。
水出しだと人間の方が待ちきれず、一晩かそこらで飲み始めてしまうが、氷出しは強制的に「待て」をしてくれるシステムなのかもしれない。だって、15時間以上もかけてお茶を淹れた経験が、あなたにはあるだろうか?
実際の用途としては「来客があるときは前日から氷出し」「ふだん飲むお茶は水出し」くらいが落とし所だろう。
緑茶でこんなに変わるのだから、紅茶やコーヒーで試してみても面白いはず。
大量の洗い物と、長い待ち時間が平気な方は、いちどは氷出し茶を試してみていただきたい。
記事中でJUNERAYさんが使っているカラフェ(水出しのほう)を教えてもらいました
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